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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第十章:学園の特別講師編
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第二百七十五話:冒険者としての問題

 そして次の日。いつものように教室に向かうと、昨日と違って、何人かの生徒が待っていた。

 ペナルティを科せられるというのが効いたんだろうか? あるいは、無視したらエルに威圧されると思ったのか。

 まあ、人数を考えると、いない人の方が多いんだけど、誰もいなかった昨日と比べたらかなり前進した方だろう。


「それじゃあ、今日も連れ戻してくるから、エルは見張りお願いね」


「承知しました」


 昨日と同じ要領で、生徒達を連れ戻す。

 中には抵抗しようとしていた子もいたけど、そんな反撃許すはずもなく、問答無用で連行である。

 未だに、エルが本体で、私はただの貴族令嬢か何かだと思っている人が多いらしい。

 まあ、エルも私のことをお嬢様と呼んでいるしね。勘違いしてもおかしくはないか。

 実際は、令嬢どころか当主なわけだけど。剣爵だけどね。


「はい、みんな集まりましたね。それでは、今日も授業を始めていきましょう」


「くそ、なんなんだよあいつ……」


「まずは点呼しますね」


 私に対して悪態をついている人もいるけど、そんなの無視して点呼を取る。

 相変わらず、一回で返事しない生徒ばかりだけど、返事しなかったらまたペナルティでもつけてやろうかな。

 いや、あんまりペナルティペナルティってやりすぎると、授業自体が嫌いになってしまいそうだから、やりすぎはよくないか。

 不良を更生させるという以上は、多少の罰は必要だけど、その塩梅が重要だね。


「今日は冒険者のマナーを学んでいきたいと思います。ということで、冒険者の方をお呼びしました。ミーシャさん、どうぞ」


「はい」


 点呼が終わったところで、教室の外に待機させていた冒険者を呼びよせる。

 冒険者自体は、ギルドの方で決めたらしいのだけど、そうしたら、その中にミーシャさんの名前があってびっくりしたものだ。

 以前はBランクだったミーシャさんも、現在ではAランクになっているらしく、王都の冒険者の中では相当上位に位置するらしい。

 特別講師として呼ぶにはちょっと豪華すぎる気もするけど、それだけギルドも事態を重く見てるってことなのかな。


「私はミーシャ。巷では、魔爪のミーシャって呼ばれてる、Aランク冒険者よ。今日は、ギルドで問題行動ばっかり起こしているあんた達に、冒険者の何たるかを教えに来たわ」


「なんだ、女じゃん」


「冒険者の女って、大抵どっかのパーティの拗ね齧ってランク上げてるよな」


「たいしたことなさそうだな」


「……ほんとに口悪いわね」


「あはは、すいません……」


 ミーシャさんは、私が王都に来た頃からBランクという実力の持ち主であり、冒険者の中では結構有名な部類だった。

 しかも、BランクからAランクに上がるのはかなり難しく、まだ30代前半くらいでAランクになれるのは、かなりの快挙であり、ギルドどころか、王都やその周辺の国でも、優秀な冒険者として知られているはずである。

 それなのに、まるで何も知らない様子の生徒達。

 確かに、冒険者は関わろうと思わなければそんなに興味を惹かれる対象ではないかもしれないけど、自身も一応は冒険者として活動しているのに、ミーシャさんの名前を知らないのは勉強不足過ぎる。

 あまりに失礼な態度に、思わず苦笑いしてしまった。


「まあいいわ。今日は冒険者としての最低限のマナーを教えてあげる。ちなみに、これは冒険者になる際にギルドから説明されることだし、調べようと思えばいくらでも調べられる初歩的な内容。それすら理解していないあんた達は、冒険者として足元にも及ばないってことを自覚しなさいね」


「ただの寄生冒険者の癖に偉そうに」


「扉が開けばこんな授業すっぽかしてやるのに」


 そうして、ミーシャさんの授業が始まる。

 冒険者は、よく無法者だってイメージを持つ人も多いけれど、実際にはそんなことはない。

 さっき誰かが言っていた、寄生によって自分は何もしていないのにランクを上げたり、報酬を貰ったりする行為は、ギルド的にも懲罰の対象だ。

 もちろん、その人のランクが低く、また、寄生された側が納得しているなら、ちょっと注意されるだけで済む場合もあるけど、大抵は降格や罰金、最悪の場合、除名処分になる場合もある。

 まあ、地方のギルドとかだと、自分のランクが高いことをいいことに、周りにちょっかいかける輩もいるみたいだけどね。

 地方では、あまりいついてくれる冒険者がいないし、いてもそんなに強くないってことも多いから、問題行動を起こしても見逃される場合もあるらしい。

 もしかしたら、生徒達は、そういう地方の感覚が身についているのかもしれないね。


「こんなところね。まあ、大抵は言わなくてもそんなことわかってるって内容でしょうけど、あんた達だとそれも怪しいからね」


「馬鹿にすんな。それくらい知ってる」


「知ってても守れてなかったら何の意味もないわ。私が、あんた達がやってきた問題行動を把握していないとでも?」


 そう言って睨みを聞かせるミーシャさん。

 生徒達がギルドで起こした問題行動は、さっき言っていた寄生も含まれる。

 寄生って言うのは、簡単に言うと、強いパーティに参加して、碌な戦果も挙げていないのに、報酬を貰う行為である。

 低ランクの冒険者が、成長するために強い人に教えを乞うのと違い、寄生は本当に何もしない。せいぜい、ポーズのために軽く荷物持ちをするとかくらいだろうか。

 冒険者のランクは、その人がどれだけ依頼をこなしたか、あるいは依頼でなくても、どれだけギルドに貢献したかによって決まる。

 強いパーティに一緒について行き、依頼を達成すると、一応、そのパーティに参加していたということで、評価されてしまう。

 だから、全く何もしなくても、ランクを上げていくことは可能なのだ。

 まあ、Bランク以上は特別な依頼をクリアする必要があるから、上がってもCランクが限界だけど、それでもCランクは中堅以上である。

 ランクだけを見て依頼してくる人も少なくないし、そういう奴が分不相応な依頼を受けて失敗すれば、ギルドの評価も下がるし、もしそれで冒険者が死んだとなれば、なお悪い。

 だから、寄生によってランクを上げる行為は、恥ずべき行為なのである。

 それを、故意なのか無意識なのかは知らないけど、平気でやっている生徒達は、冒険者の風上にも置けないってことだね。


「寄生以外でも、依頼の横取り、獲物の横取り、冒険者に対して攻撃を仕掛ける、依頼主への不適切な発言、挙げればきりがないわ」


「そんなにやってたんですね……」


「そうなんですよ。これが普通の冒険者だったら、即刻除名しているところです」


 一応、学園に所属する冒険者は、特別待遇を受けている。

 というのも、学園に通っているという時点で大なり小なり魔法が使えるということであり、受けられる依頼の幅が広がる。

 中には、魔法を使えなければ達成できない依頼もあるため、学園所属の冒険者は滅多なことでは除名されない。

 仮にするとしたら、それは学園の評価にも繋がるので、学園側も止めるだろうしね。

 だから、わざわざ冒険者を派遣してまで指導するって言うのは、相当やらかしている証拠である。

 ある程度は聞いていたけど、そこまで酷いとは……本当に、なんでそんなことをしているのか疑問で仕方がない。

 ミーシャさんの授業にも全然身が入っていないみたいだし、いったいこの子達は何がしたいのやら。

 私は、ミーシャさんの授業を横で聞きながら、首を傾げていた。

 感想ありがとうございます。

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[一言] クズしかいない……(゜ω゜)
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