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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第九章:雪山の恐怖編
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幕間:クイーンの情報

 天使のルーシーの視点です。

 クイーンに関することは、これまでも色々と調べてきた。

 いつこの世界に侵入したのか、目的は何なのか、仲間の数は、神界の監視も使って、念入りに調べてきた。

 しかし、いくら調べても、詳しい情報を掴むことはできなかった。

 一応、いつ侵入したかは把握できたが、それだって絶対じゃない。

 そもそも、神が無断で世界に侵入したなら、創造神様が見逃すはずがない。

 それが善神であれ、邪神であれ、何かしらのアクションをするのが普通である。

 しかし、最近になるまで、創造神様も、そして私達も、その侵入に気づくことができなかった。

 明らかに、隠蔽された結果である。そして、その技術は、神界の監視を上回っている。

 これは由々しき事態だ。一刻も早く、侵入した神々を探し出し、この世界から放逐しなければならない。

 しかし、情報が足りない。いくら調べても、それらしい情報が見当たらないのである。

 わかっていることは、別世界の神であるということ。複数いるということ、くらいなものである。

 明らかに悪意のある者が入り込んできているのに、それをどうしようもできないもどかしさ。私達天使の間では、かなり悩みの種になっていた。


「でも、ようやく進展しましたね」


 今回、ハク様が神の一柱と接触した。

 雪山に潜む人攫いの元凶を探しに行った際に、結界の中に取り込まれ、その中で接触を果たしたらしい。

 最初は、かなり慌てたものだ。

 普通の結界であれば、私達でも気づくことができる。その時も、結界があること自体は気づいていたが、その強固さまでは、気づくことができなかった。

 私達天使ですら、容易には通り抜けられない結界。それを認識した瞬間、これが神による結界だと気が付いた。

 いくらハク様が神の座に至ったとはいっても、まだまだ新米の神である。クイーンのような、強大な神に出会ってしまったら、今度こそ狩られてしまうかもしれない。

 だから、私達は必死に結界を通ろうとした。

 結界の薄い場所はないかと探し回ったり、ひたすら攻撃して穴を空けようとしたり、創造神様に助けを求めようとも考えていた。

 何とか通り抜けることができた時には、かなりの時間を要してしまったが、それでも、ハク様が無事だったのは、相当運がよかっただろう。

 ハク様の姿を見た時の安堵感は忘れられない。

 その後、神をどうするかとなり、ハク様に討伐を依頼することにした。

 本来ならば、ハク様にこんなことを頼むのは間違っている。

 相手の強さが未知数な上、ハク様の神としての力はまだ子供並。本物の神と相対したら、勝てない可能性も十分にあった。

 けれど、せっかく掴んだこのチャンス、逃す手はない。

 創造神様も、そこまで乗り気ではなかったものの、ハク様が動くことに賛成してくれたし、私達のバックアップと、創造神様の加護があれば、何とか互角に持ち込むことくらいはできるだろうと考えた。

 結局、私達はハク様に邪魔だと判断され、攫われた人々の救出という任務を与えられることになってしまったけど、結果的には、ハク様は神と和解し、一時的な協力関係を築くことになった。


「いつ思い返しても、ハク様の社交能力はおかしいですよね」


 まだハク様を見守り始めてから、そこまで日は経っていないが、それでもハク様の説得はかなりの効果があると思っている。

 あの悪魔ですら、ハク様の前では戦うことを選ばず、話し合いに応じたくらいだ。

 神界に乗り込んできた時も、いくら自分の神獣の娘とはいえ、パドル様が手を貸したのは驚きだし、ネクター様も興味本位とはいえ手を貸したのも凄いことである。

 ハク様には、相手の心を読み取る力でもあるのかもしれない。あるいは、その人柄ゆえなのか。

 いずれにしても、ハク様のおかげで、神の一柱を無力化できたことは大きかった。


「相手のことも、少しわかってきましたし」


 神の一柱を一時的に協力させたことで、相手の情報も少し判明することになった。

 どうやら、不法侵入した神々には、二つの派閥が存在するらしい。

 一つが、クイーンの派閥、もう一つが、クイーンに敵対する派閥のようだ。

 元居た世界では、クイーンは外の世界から来た侵略者であり、クイーンに敵対する派閥はそれを迎え撃つ形で争っていたらしい。

 今回は、クイーンの悪ふざけなのか、無差別に召喚の儀式が執り行われ、この世界に無理矢理連れてこられる形でやってきたらしい。

 反応が唐突に現れたのは、そういう理由もありそうだ。

 クイーンの目的自体は、未だに分からない。そもそも、なぜ敵を召喚するような真似をしたのか、この世界である必要は何なのか、まったく判明していない状態だ。

 ただ、クイーンに敵対する派閥は、等しくクイーンに対して憎悪を抱いているようで、クイーンを倒すために力をつけようと考えているのは確かなようだ。

 逆に言えば、クイーンを倒すという目的だけで言えば、協力できるということでもある。

 ハク様が説得したからというのはあるだろうが、これ以上この世界を乱すようなことはしないと言ってくれたようだし、クイーンさえ倒せば、大人しく元の世界に帰ってくれることだろう。

 つまり、真に敵にすべきはクイーンの一派であり、それに敵対する神々はできる限り仲間にした方がいいということでもある。

 もちろん、それぞれの思惑で動いている部分はあるので、絶対にそうとは限らないし、そうだとしても仲間にならない可能性もある。

 むしろ、自由気ままな神が、一応神とはいえ、ハク様の言葉をすべて聞くとも思えない。

 だから、運が悪ければ、そのまま敵対することもあるだろう。

 いかにして敵を減らすかが重要になってくるかもしれない。


「後は、居場所がわかればいいのですが……」


 神々の居場所は未だによくわかっていない。

 一度は姿を見せたクイーンですら、あれから全くと言っていいほど音沙汰がない。

 クイーンは数多くの姿を持っていると言っていたが、それですり抜けられているのかもしれませんね。

 一応、人目につかない場所は洗っているけど、そもそもこの世界の多くの場所は、竜によって監視されている。

 特に、竜脈が通っている場所は竜の管轄範囲だし、その近くにいれば、何かしらの報告が上がるはず。

 今回のように、竜が従属させられるという場合であっても、竜の谷のネットワークがあれば、異変に気付く可能性は高い。

 うまく隠れているのか、それとも、竜ですら気づけない何かがあるのか。

 確かに、雪山を覆っていた結界は強力だった。私達ですら、突破するのに時間がかかったのだし、竜であれば、そもそも存在を認知できない可能性もある。

 もしそうだとしたら、かなり厄介だ。

 結界がある場所を重点的に探すという手もあるが、この世界で結界がある場所は割とある。

 パッと見て、どのような結界かわからなければ、それらの中から探すのは無理があるだろう。

 場所さえわかれば、偵察や先制攻撃もできるのだが、そううまくはいかないようだ。


「まだまだ先は長そうです」


 恐らくだけど、不法侵入してきた神はまだまだいる。

 それらすべてを排除する日まで、気を抜くことはできなさそうだ。

 特に、ハク様が死ぬようなことだけは、絶対に避けなければならない。

 私は、より一層、警戒を強めようと気を引き締めた。

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― 新着の感想 ―
[一言] ハクさんが死んだりしたら大荒れになる人たちがたくさん居るだろうからなぁ
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