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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第九章:雪山の恐怖編
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幕間:興味深い精霊

 雪山の神様の視点です。

 人とは、信仰する者である。

 果てしない欲望の果て、富を求め、権力を求め、支配を求める、愚かな種族。

 しかし、その欲望があるからこそ、我らは存在し続けることができる。

 信仰失くして神は存在できない。それが、世界の理である。

 だが、どうやらこの世界では、その信仰の得かたが違うようだ。

 基本的に、我々は恐怖で人を支配する。

 根源的な恐怖を持っているからこそ、人々は未知の存在を信仰しうる。

 人が狂気に陥れば、他に何も目に入らない、熱心な信徒を生み出すこともできるし、何より、思考を強制することができる。

 最初から意図してこうなったわけではないが、それが最も効率が良く、信仰を集める方法だった。

 しかし、この世界はどうやら、信仰を人々の意思に任せているようである。

 人々と交流し、友好を深め、その見返りとして信仰してもらう。

 友好を深めるのに時間がかかる上、人によっては別の神を信仰することもあるだろうに、わざわざそんな非効率的なやり方をするのは、あまり理解できないが、世界が変われば常識も変わる。そういう世界があっても不思議はないだろう。

 だからこそ、我がこの世界で力をつけるのも、たやすいと考えていた。

 なにせ、ライバルがいないのだから。

 この世界であれば、再び世界を支配することも可能かもしれない。

 そう思っていたのだが。


『まさか、精霊に止められるとは』


 我がこの世界に来たのは、クイーンの差し金だった。他にもクイーンに敵意を持つ者はいるだろうし、それぞれが信仰を集め、仕返ししようと考えるのは何も間違っていない。

 しかし、それを止める者がいた。それが、竜の精霊である。

 彼女は、我の領域に侵入し、信徒を奪おうと画策していた。

 信徒を奪おうなど、本来なら許されることではない。しかし、言い分を聞いてみれば、確かにこちらが悪かったと言わざるを得なかった。

 我々は、クイーンのような外なる神と敵対している。奴らは、宇宙の果てからやってきた邪神であり、我らの領域を脅かすものだった。

 当然ながら、領域を侵されれば、いい気持ちはしない。しかし、それは相手が外なる神だからであって、我々は対象外だと思っていた。

 しかし、彼女からすれば、我々もまた、外なる神と同じような存在だということがわかった。

 自分がされて嫌なことを、自分がやってはいけない。少なくとも、その気持ちがわかったから、我はそれ以上信仰を集めるのをやめた。

 幸い、すでにそれなりの信仰は集まっていた。これだけあれば、この地を維持し続けることくらいはたやすいだろう。

 我が眷属も、この土地なら暮らしやすく、外に出られないのも特に問題にはならない。

 まあ、彼女がクイーンを倒せるとは思わないが、余興くらいにはなるだろう。


『現状、協力しそうなのは、誰か』


 クイーンに連れてこられたのは、我だけではない。他にも、多くの神が巻き込まれている。

 詳しい居場所や正確に誰が連れてこられているかは知らないが、考えは皆同じことだろう。

 特にクイーンと敵対しそうなのは……炎の姫か。

 あいつは元からクイーンのことを目の敵にしていて、いつも競い合っていた。

 クイーンからの呼び出しに答えるかは知らないが、召喚はほぼ強制的なもの。相手が嫌いな奴でも、呼び出されれば行くしかない。

 まあ、クイーンと敵対しているからと言って、彼女に協力してくれるかどうかは知らないが。

 まだ可能性がありそうなのは、海底都市の主か。

 奴は寝坊助だが、配下の社会性が高い。もし、そのうちの誰かを助けるようなことがあれば、褒美として力を貸すこともあるだろう。

 他に思いつくのは、納骨堂や狂気の鏡、それに思考結晶辺りか。

 いずれも一筋縄ではいかないだろうが、うまくすれば力を貸すかもしれない。

 どういう判断を下すのか、今から見ものだ。


『逆に敵は誰か』


 クイーンが敵なのは間違いないが、クイーンの勢力も同じく連れてこられているはず。

 恐らく、豊穣の神は連れてこられているだろう。

 あいつは割とどこにでも現れるからな。どうせ、その乳を使って眷属を増やしていることだろう。

 まあ、もしかしたらあいつもクイーンの姿のうちの一つかもしれないから、全員クイーンという可能性もなくはないが。

 その方が逆に楽か? 考えることは少ない方がいい。敵が一つなら、やるべきことは減る。


『こんなところか。今のところは、クイーン優勢と言ったところか』


 仮に、我々が力を貸したとしても、クイーンをすべて駆逐するのは難しい。

 千変と言われるだけあって、潰したと思っても、どこからともなくやってくるからな。

 それに、今の彼女の実力では、到底勝ち目はない。

 あの時の、本気の姿に、あのアーティファクトはそれなりに力を持っていたが、それでも人の道を多少外れた程度。人の中ではとびっきりの魔術師だとしても、それだけでは神には及ばない。

 勝つためには、何か一つ、きっかけが必要となるだろう。

 そのきっかけが訪れるのが、クイーンと戦う前なのか、後なのか、それはわからないが、そのタイミングによって、今後の勝敗は左右されるはずである。

 彼女は、どのようなドラマを見せてくれるか?


『もし、彼女がクイーンに勝つようなことがあれば、その時は我らの仲間として迎えてもいいかもしれないな』


 我らの目的は、外なる神を駆逐し、世界の支配を取り戻すこと。

 人の信仰失くして神は存在できないと言ったが、それを超越し、世界に君臨することこそ、我らの悲願である。

 そのために、クイーンは最大の障壁だ。もし、クイーンがいなくなってくれるなら、これほど嬉しいことはない。

 まあ、彼女は我らと違って優しすぎるようだから、少々馬は合わないかもしれないが、やりようはいくらでもある。

 特に、彼女は我の狂気の一部を持ち帰った。

 今は何の効力もない、ただの置物だが、いずれ心境の変化が訪れれば、それは武器となりうる。

 狂気に飲まれるか否か、彼女はどちらかな?


『まあ、楽しみは取っておこう。今は、この地を安定させることだ』


 結界で覆いはしたが、信仰を集めるのを優先していたおかげもあって、あまり整備は進んでいない。

 別に、今のままでも死にはしないが、眷属達にはよりよい環境で過ごしてほしいと思っている。

 さて、何から始めるべきか。

 そんなことを考えながら、雪山を見下ろしていた。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
これでも元ネタというか、モチーフとなったあれらよりは随分マイルド調整なんだよね…… なんで元ネタ作品群の地球人類は存続できてるんだ……?
[一言] ハクさんヤバそう
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