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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第九章:雪山の恐怖編
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第二百七十話:町に戻って

 その後、ルーシーさん達と合流し、雪山を後にした。

 あの神様、名前をタクワというらしいのだけど、ひとまずはこれ以上は動かないということになった。

 今までは、クイーンを倒すために、信仰を集める目的で人を攫って行ったようだけど、この世界で別の世界の神様の信仰が広まりすぎるのはよくないということを理解してくれたらしく、クイーンに関しては、私に一任してくれた。

 まあ、もし私が死ぬようなことがあれば、その時は好き勝手に動きそうだけど、逆に言えば、私が死なない限りはそうならないということでもある。

 竜神モードの私でさえ、歯が立たなかった相手が、敵わないと言っている相手に勝てるかどうかは疑問ではあるけど、どうにかするしかないね。


「久しぶりに青空を見た気がする」


 雪山の結界を抜けると、ようやく明るい空を見ることができた。

 雪山では、常に夜で、赤い月が登っていたけれど、外では朝日が昇っていた。

 あれから、どれくらいの時間が経ったんだろう。朝日が昇ってるってことは、一日くらい経ったのかな?

 ひとまず、神代さんに連絡しないと。


「もしもし、聞こえますか?」


『そ、その声はハクちゃん!? 無事だったのか!』


 通信魔道具を取り出し、連絡してみると、凄く慌てた様子の声が聞こえてきた。

 話を聞いてみると、どうやら私達がここに来てから、すでに一週間くらいが経過しているらしい。

 その間、連絡をしても返事が返ってこず、これは先に行った仲間と同じように、行方不明になってしまったのではないかと心配していたようだ。

 特に、今回の作戦には、竜の力を持つ私が同行していたというのもあって、これはただ事ではないと考えたらしい。

 あともう少し連絡がなければ、神代さん自ら探しに行こうと考えていたようで、連絡が来てほっとしていた。

 それにしても、一週間も経ってるのか。

 雪山で過ごしていた時間は、長くてもせいぜい一日くらいだと思っていたんだけど、そんなことはなかったらしい。

 まあ、常に夜だったし、時間感覚がずれていたのかもしれないね。

 かなり危ない場面はあったが、一応無事に帰ってこられたので、それで許してくれると嬉しい。


『いったい何があったんだい?』


「はい、実は……」


 私は、雪山で起こったことについて報告する。

 まさか、元凶が神様だとは思わなかったが、何とか和解できたのは本当によかった。

 そうでなければ、私はあの場でやられていただろう。

 こちらの攻撃は通らず、あちらの攻撃は深いダメージを与えてくるのだから、勝ち目があるわけない。

 神代さんも、まさか神様が元凶だとは思わなかったのか、息を飲んでいた。


『……なんというか、ハクちゃんは本当に凄いよね』


「たまたまですよ」


『ま、まあ、和解できたならよかった』


 若干呆れられている気がするが、私だって神様と戦うつもりなんて最初はなかった。

 元凶をどうにかしないといけないと思っていたのは確かだけど、絶対に倒さなければと思ったのは、ルーシーさんの言葉があったからである。

 私は何でもかんでも首を突っ込むバトルジャンキーってわけじゃないからね。


『ポクランの町はどうなった?』


「それに関しては、今から何とかするつもりです」


 ポクランの町は、今もなお氷漬けになってしまっている。

 やったのが氷竜であることは明白だけど、その時の氷竜は服従状態にあったわけだし、自分の意思というわけではなさそうだ。

 しかし、あの神様も、わざわざ町を凍らせろなんて命令は出していないようだし、なぜ凍っているのかは謎のままである。

 まあ、過程はともかく、氷漬けになっている町に関しては、元に戻すことは可能だ。

 かなり溶けにくい氷ではあるけど、火魔法でじっくりと炙っていけばいずれは溶けるだろうし、氷竜は自分の氷をある程度操ることができる。

 完全になくすことはできなくても、ちょっと溶けやすくする程度ならできるようなので、後は町全体を暖めてやれば、そのうち元通りになるだろう。

 まあ、町全体を暖めるとなると、結構な魔力が必要になるけど、それくらいなら問題はない。

 町全体を結界で覆い、中に熱源を用意してやれば、勝手に暖まるだろうからね。


『わかった。行方不明者も無事に救出できたようだし、本当に助かったよ』


 後処理が終わったら、改めてお礼を言いたいというので、了承しておいた。

 別に、今回の作戦は、私が勝手に志願したものだし、お礼は別にいいのだけど、神様を相手にして、ちょっと疲れたのは確かだ。

 全員が感謝しろとは言わないけど、今後はこういった不測の事態にも対応できるようにして欲しいね。


〈ハク様、この度は本当にご迷惑をおかけしました……〉


 通信が終わると、氷竜が改まって頭を下げてきた。

 まあ、結果的には、氷竜は町を大変なことにして、転生者達を攫って行った張本人なわけだから、迷惑をかけたのは確かだろうけど、あれは仕方のないことだと思う。

 眷属化や服従状態がどれほどかはわからないけど、抗えなかったのは見ればわかるし、相手が悪すぎた。

 それに、氷竜がいなければ、私がここに来ることもなかっただろうし、ある意味では異変に気付かせてくれた救世主と言えなくもない。

 それですべてチャラにできるかはわからないけど、私としては、特に気にしなくていいんじゃないかなと思う。


「気にしないでください。それより、住処を渡しちゃってごめんなさい」


〈い、いえいえ! 元々、ここに住んでいたのは趣味みたいなものですから、これを機に竜の谷に戻ろうと思います〉


「何か困ったことがあったら言ってくださいね。なるべく力になりますから」


〈も、もったいないお言葉です……〉


 この雪山は、今後はあの神様の支配下となった。

 元から住んでいた氷竜には申し訳ないけど、他に適切な土地があるわけでもないし、別の場所に移動するとなって、へそを曲げられたらそれこそ困る。

 だから、今回の采配は仕方のない部分があるだろう。

 せめて、これによって不便が起きないように、氷竜のことは気にかけてあげないといけないね。


「あとは、町が戻れば、私達の仕事も終わりかな」


 すでに、町を結界で包む作業は終わっている。

 後は、町の中心あたりに火魔法か何かで熱源を用意してやればいいだけだ。

 しばらくは、結界を維持する必要があるから、それはちょっと大変だけど、暑さを気にしなければそこまででもない。


「ハクちゃん!」


「シンシアさん、大丈夫ですか?」


 準備をしていると、シンシアさんが駆け寄ってきた。

 シンシアさんも、今回の事件で唯一の生き残りということもあって、かなり役に立ってくれた。

 最後は、雪崩のせいもあって離れ離れになってしまったけど、あの後無事に救出されたようで、本当によかった。


「本当にありがとうなのです! ハクちゃんは、みんなの命の恩人なのです!」


「みんな無事で何よりです」


 よく見れば、後ろにはセシルさんを始めとした転生者が揃っている。

 私に向かってみんなで頭を下げてきたから、ちょっと恥ずかしくなってきた。

 でも、逃げようにもシンシアさんが手を握っているせいで逃げれない。

 私は、しばらくの間、身に余る視線に冷や汗をかいていた。

 感想ありがとうございます。


 今回で、第二部第九章は終了です。数話の幕間を挟んだ後、第十章に続きます。

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[一言] ハクさんちょっと謙虚過ぎるよねぇ
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