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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第九章:雪山の恐怖編
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第二百五十一話:氷竜の存在

「それで、何か情報はあるんですか?」


「あるにはあるのです。ただ、ちょっと不可解な感じで……」


 シンシアさんは、少し困ったような顔をしながら、話しだした。

 シンシアさん達は、調査隊として、その雪原地帯の町へと向かったらしい。

 雪原地帯というだけあって、この季節でもそのほとんどは雪に覆われており、進むだけでも大変だったそうなのだけど、何よりも異常だったのは、町の状況だったという。

 というのも、町全体が凍っていたのだ。

 家も、道も、人ですら、すべてが凍っていて、とてもじゃないけど生活できるような空間ではなかったらしい。

 寒さも異常で、きちんと防寒着を着ていても、それを貫通するように凍えるような寒さだったらしく、これはただ事ではないとすぐにわかったようだ。

 ひとまず、原因を究明しなければと町を回ってみたが、特にそれらしい情報は見つけられず、困っていたところ、とある人物が現れた。

 人物と言っても、人ではなく、竜だったらしい。

 聖教勇者連盟と竜は、協力関係にある。と言っても、すべての竜が聖教勇者連盟に協力しているわけではないが、お互いに顔見知りと言っても差し支えないだろう。

 だから、竜に対して、自分達は聖教勇者連盟の者だと伝えたらしいのだが、あろうことか、竜は問答無用で攻撃してきたのだという。

 何が何だかわからなかったが、このままではやられると思い、応戦。しかし、竜の力はかなり強く、また、周囲にはいつのまにか吹雪が吹き始め、視界の確保もままならない状況に。

 最後に、竜が咆哮したと思うと、シンシアさんは何かに吹き飛ばされ、町の外まで戻されてしまったのだという。

 気が付けば、他の三人の姿は見当たらず、探しに行こうにも、吹雪が強すぎて捜索できる状況ではなかった。

 今までの、調査隊の行方不明の話も聞いていたので、ここは一度情報を持ち帰るべきだと判断し、こうして戻ってきたというわけだった。


「竜が、攻撃してきた?」


「はいなのです。でも、激昂して理性的でなかった、というわけでもなかったのです」


「どういうこと……?」


 聖教勇者連盟のことは、竜の中で周知されているはずである。

 確かに、聖教勇者連盟に関わっている竜は少数ではあるが、だからと言って、全く知らない竜はいないだろう。

 一応、以前の聖教勇者連盟の評価は最悪だったから、その時の評価を引きずって、敵対的になっていた、という可能性はなくはないけど、戦う意思はないって伝えているのに、それでも攻撃してくるのは流石におかしい。

 基本的に、竜は人族に攻撃したりしない。結果的にそうなってしまう時はあるが、ほとんどは攻撃の意志はないはずだ。

 若い竜なら、ワンチャンあるかもしれないけど、そんな竜なら、セシルさん達なら倒せてもおかしくない。

 いくら吹雪で視界が悪かったとは言っても、後れを取るだろうか?


「その竜の特徴とか覚えてないですか?」


「吹雪でほとんど見えなかったですが、恐らく氷竜だと思うのです。吹雪になったのは、あいつの仕業だと思うのです」


「なるほど。氷竜ですか……」


 ちらりとエルの方を見る。

 氷竜と言われて、真っ先に思いつくのは、エルだ。

 もちろん、エルがやったとは思わないけど、同じ氷竜なら、何か知ってないだろうか?


「この大陸の北の雪原地帯は、夏でも雪が降る場所ですから、一部の氷竜は、確かにそこに住み着いている者もいます。竜の谷にもほとんど帰ってこないので、聖教勇者連盟のことを知らなかったのでは?」


「確かに、それはあるかも」


 竜に周知はしているつもりだが、それはあくまで竜の谷経由でだ。

 そもそも竜の谷に来ず、また他の竜とも交流がないのなら、聖教勇者連盟のことを知らなくても無理はない。

 だから、攻撃してきた理由は、その可能性が高いだろう。

 ただ、それでも竜が人族を意図的に攻撃してくるとは考えにくい。あちらか攻撃してきたのだとしたら、何かしら理由があるはず。


「何かわかるかい?」


「竜が意図的に攻撃するとは思えないので、何か攻撃しなければならない理由があったんだと思います」


「攻撃しなければならない理由って何よ」


「うーん……何かを守っているとか?」


 単純に、雪山という、人が入るには厳しすぎる環境に立ち入らせないために、あえて悪役になっているとかね。

 しかし、それだけでは説明がつかないこともある。

 例えば、町全体が凍っていたという話。

 町があるということは、以前はそこは普通に稼働していたんだろう。それが、いきなり町全体を凍らせるなんて、明らかにおかしな話である。

 凍らせたのが竜なのか、別の何かなのかはわからないが、もし仮に、後者なんだとしたら、それから守るために、あえて攻撃した、とも考えられる。

 町の依頼も、雪山の方から狂暴な叫び声が聞こえるって話だったしね。


「守っているとして、それなら行方不明になった転生者達はどこに?」


「それがわからないんですよね……」


 仮に、何かから守るためだったと言っても、じゃあ行方不明者はどこへ行ったんだという話になる。

 あるとしたら、その何かが行方不明にさせている原因かもしれないってところか。

 竜が守っていたが、守り切れなかったって可能性もあるかもしれない。


「なんにしても、その雪山には何かがありそうです」


 竜が警告するような何かが、雪山にはある。そして、それらが行方不明者を生み出している。

 つまり、彼らを助け出すためには、雪山に向かい、その原因を取り除かなければならないということだ。


「相手が竜だというなら、私が交渉して見ましょうか?」


「それはありがたいけど、いいのかい?」


「はい。私も、転生者達がこのまま行方不明のままは嫌ですし」


 別に、ここの転生者達にはそこまで思い入れはないが、それでも同郷の仲間である。

 それに、竜が関わっているとあっては、放置しておくわけにもいかない。

 いったい何があるのかはわからないけど、ここは行くべきだろう。


「ハクちゃん、行くなら私も行くのです。みんなをこのままにしておくわけにはいかないのです」


「シンシアさんが一緒なら心強いですね」


 シンシアさんも、転生者の一人である。

 拳銃の腕前もそうだけど、材料さえあれば、どんなものでも作り出すことができる能力があるのは相当破格だ。

 雪山で何が必要になるかはわからないけど、いれば役に立つことは間違いないだろう。

 案内役も必要だろうしね。


「それじゃあ、決まりね。シンシア、それにハクと、エルさんで、この事件を解決してくれる?」


「了解です。任せてください」


「こっちの問題なのに、巻き込んでごめんね?」


「いえ、竜が絡んでいるなら、私の問題でもありますから」


 申し訳なさそうな顔をする神代さんに、軽く手を振って返す。

 さて、そうと決まれば、準備をしなければならないね。

 何が必要なのかを思い浮かべながら、ひとまず場所の詳細を聞くのだった。

 感想ありがとうございます。

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[一言] とりあえず調査だ!
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