表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第八章:再びの里帰り編
1115/1587

幕間:問題の考察

 ヒノモト帝国の皇帝、ローリスの視点です。

 転生者達を元の世界に帰すことは、一つの目標だった。

 元々は、異世界に来た以上、元の世界に帰れるなんて夢のまた夢だと思っていたが、思いがけず世界を超えることができる魔法陣を見つけたことにより、それが可能になった。

 お父さんを始め、あちらの世界には残してきた者も多いし、私自身も、帰りたい気持ちはある。

 まあ、今は一国の王になってしまったから、この国の人を全員移住させるでもしない限り、あちらの世界で永住するって言うのは無理だけど、それでも、元の世界に帰りたいと願っている転生者はたくさんいる。

 だから、彼らをどうにかして帰してあげたいと思っていた。

 魔法陣を起動するための神力も取得でき、お父さんの力も借りて、何とかあちらの世界に生活の基盤を整えたし、順調に事は進んでいると思っていたんだけど……。


「まさか、ここに来て魔石が必要とはね」


 魔石は、魔物にとってはパワーアップアイテムのようなものである。

 強さを求める魔物は、魔石を食らうことでその力を吸収し、自分の力を高めることができる。

 それ故に、本能的に魔石を求めることは知っていた。

 しかし、それは純粋な魔物であって、魔物に転生した転生者には当てはまらないと思っていた。

 確かに、魔物であることには違いないから、時には求めることもあるかもしれないけど、転生者は、そのほとんどが強力な魔物である。

 つまり、魔石なんか取り込まなくても十分強いし、そもそも転生者自身が強くなりたいと望むこともあまりない。

 もちろん、私達が保護する前だったら、生き残るために強さを欲していたかもしれないけど、ヒノモト帝国にいる限り、そこまで強さは重要ではない。

 だから、今までにも魔石を要求されたことはなかったし、魔石を摂取している姿を見たこともなかった。

 それが、ここに来て必要になってくるとは夢にも思わなかった。


「確かに、お父さんと魔石の取引はしているし、現状なら持ち込むことはそんなに難しくはないけど」


 魔法陣の解析はすでに済んでいるし、今ならダンジョンに行かなくても、魔法陣をどこかに設置して起動することはできる。

 起動に必要な、神力さえどうにかできれば、あちらの世界に行くのはそれほど難しいことではない。

 しかし、問題は、未来の話だ。

 今なら、私の采配で、魔石を送り込むことは簡単だけど、これが100年とか200年とか先になってくるとわからなくなる。

 私は元々ただの猫だけど、今は魔物として成長しているし、それくらいだったら生きられる可能性はあるけど、それも絶対じゃない。

 私の後を継いで、他の転生者達が魔石を届けてくれるというならいいけれど、あちらの世界で生産できないものが必須になる状況というのがそもそもよろしくない。

 自給自足じゃないけど、少なくとも、生きるのに必要なものがその世界で入手できる手段がないのに、その世界に移住すべきではない。

 ただでさえ、見た目の問題や、戸籍の問題なんかもあるのに、さらに問題を増やすのは得策ではないだろう。


「どうしたものかしらね」


 例えば、魔石が必要というのが、そこまで程度が高くないのなら、まだいい。

 ないと不便だけど、なくても生活できるという水準ならば、最悪供給が途絶えても何とかなるだろう。

 ハクの話によると、現状は、ちょっと体調が悪くなっている程度で、そこまで深刻な様子はなかったという。

 であるなら、そんな未来の話を考える必要はなくなる。

 あるいは、一度に使用する魔石の量が微量であれば、大量に持ち込んでおいて、少しずつ消費していき、寿命を迎える、というのでもいいかもしれない。

 魔石が嵩張るかもしれないが、その気になれば、全員に【アイテムボックス】のようなスキルを付与することだってできる。だから、場所はそこまで重要じゃない。


「現状できる対策は、それくらいしかないかしら」


 いまいち、どれくらいの要求度なのかがはっきりしないから何とも言えないけど、もしこの仮説が合っているなら、何とかはなる気がする。

 まあ、最悪の場合も想定していた方がいいかもしれないけどね。

 対策があるとしたら、今のうちに後任を育てておくとか? 子供を産めれば一番いいけど、私の趣味に合う子はみんなロリショタだから、ちょっと難しそう。

 後は、あんまり頼り過ぎたくはないけど、ハクに頼むのもいいかもしれない。

 ハクは、精霊であり、竜でもあるので、寿命というものが存在しない。

 強さだって申し分ないし、不意の事故で死ぬなんてこともないだろう。

 それに、ハクは魔法陣を使わずとも、単独で転移魔法を使ってあちらの世界に行くこともできるらしい。

 未来のことを考えるなら、これほど都合がいい存在はいないだろう。

 まあ、これは私が始めた物語だし、あんまり頼り過ぎるのはよくないって思うけどね。


「まあ、今は試験期間だし、細かいことを考えても仕方ないか」


 現状、魔石の供給はこちらの世界からするしかないが、もしかしたら、いずれはあちらの世界でも魔石が生産できるようになるかもしれないし。

 お父さんも、魔石のエネルギーをどうにかして抽出できないかと、研究を続けているようだしね。

 必要なのが魔石ではなく、魔石に含まれているエネルギーなんだとしたら、類似のものが見つかる可能性だってある。

 今は、問題を洗い出して、それを考察する時間だ。

 一つの問題ばかりに気を取られて、やっぱり移住は諦めますとなるのはしたくない。


「陛下、魔石の準備ができました」


「ありがとう。それじゃあ、行きましょうか」


 とりあえず、現状困っているなら魔石は届けなくてはならない。

 私は、ウィーネと共にダンジョンへと向かう。

 魔法陣は、基本的に神力でしか起動できない。

 大量の魔石があれば代用もできるが、流石にこれを毎回やっていたらコスパが悪すぎるので、神力を取得させたうちの一人を呼び戻し、起動役に使っている。

 本当は、この子も移住を望んでいるから、あちらの世界に住まわせてあげたいんだけど、こればっかりは仕方ない。

 まあ、ハクに頼めば関係ないんだけどね。

 今回は、ハクは行ったばかりだというから、頼まなかったけど、暇なら、基本的にハクに頼んだ方がいいかもしれない。

 個人的にも会いたいしね。強い力を持っているのに、それを奪われて何もできなくなってる姿はとても可愛い。

 あんまりやりすぎると本気で嫌われてしまうから、少しは自重しているけど、そろそろ餌食になってくれてもいいんだけどにゃあ?

 そんなことを考えながら、部屋を後にするのだった。

 感想ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ハクさんはバックにいっぱい居すぎるからなぁ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ