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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第八章:再びの里帰り編
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幕間:魔法の脅威

 ローリスの実家の朝倉の視点です。

 ここ最近、親父は新たなビジネスを始めようとしている。

 その一つが、異世界の品の商売だ。

 親父の娘である、茜嬢は、一度この世界で死んだ。私の妻である明海と一緒に。

 しかし、あろうことか、二人は死んだ後に転生し、異世界で一国を収めるという大成をしていた。

 流石はお嬢というべきか、運がよかったのもあるだろうが、そのおかげで、親父は再び娘と出会うことができた。

 そして、結果的に異世界と繋がった影響もあって、親父は異世界の品に興味を示した。

 特に、魔石というものが興味をそそられたらしく、最近はその研究ばかりしている。

 お嬢曰く、魔力に反応して、火やら水やらを生み出すことができる代物らしい。ただし、この世界には魔力がなく、単なるガラクタであるとも言っていた。

 しかし、そうやって何かに反応してエネルギーが生み出されるということは、もしそれを抽出することができれば、エネルギー産業に新たな足跡を刻むことができるかもしれない。

 もちろん、異世界の品だし、すぐには実用化はできないだろうが、現状これを手にしているのは私達だけ。であるなら、独占販売も夢じゃない。

 そういうわけで、この事業は、何としても成功させたいものだった。


「と言っても、魔力なんてどうすればいいのかね」


 魔力、つまりは魔法の力である。

 今まで、物語の中でしか語られてこなかったものが、急に現実に現れたのだから、それですら信じられていないのに、さらにそれを利用する方法を見つけるなんて、どう考えても無謀過ぎる。

 もちろん、これは親父の優しさでもある。お嬢が十分な対価を用意できるかわからないから、大げさにこいつは凄いと言って、タダ同然で引き受けたってこともあるだろう。

 しかし、いくら親子とは言っても、何の利益もない事業をするとも思えない。

 他にも、ミスリルと言った、未知の鉱石とかも貰っているし、本命はそっちって可能性もあるか。

 いずれにしても、親父はお嬢には甘いと思う。気持ちは痛いほどわかるが。


「ん? 親父から?」


 と、そんなことを考えていると、親父から連絡があった。

 どうやら、お嬢の友達である、ハクが警察にパクられそうになっているらしい。

 いや、正確には、ハクではなく、その兄や姉らしいのだが、パスポートを持っていなかったがために、問い詰められている様子だった。

 確かに、あの人らはパスポートなんて持てるわけはないか。

 そもそも、この世界に存在するどこの国にも属していないんだから。

 それを解放する手助けとして、偽造パスポートを作って欲しいってことだった。

 まあ、それくらいだったら、うちの傘下の工場を動かせば、すぐにでも作ることができる。

 今でも、こちらの世界に移住を希望する転生者達の拠点を用意してやったという恩は売っているが、それはあくまでお嬢に対してであって、ハクにではない。

 であるなら、ここで恩を売っておくのもいいだろう。

 私はすぐに部下に指示を出し、工場を稼働させておく。

 写真を持っているというので、待ち合わせ場所に行くと、そわそわして落ち着かない様子のハクが待っていた。


「少し時間稼ぎをする必要があるでしょうね」


 パスポートを作ること自体は簡単だが、流石に写真を持っていってポンと作ることはできない。

 一応、偽造防止の技術があるから、それを突破するには、それなりの工程を踏む必要がある。

 まあ、それでも完全な偽物を作るのは難しいが。

 しかし、今はその程度でも十分だろう。聞いた限り、ハクの兄達は、暴漢を捕まえた結果、警察に目をつけられて連れていかれたという話だった。

 警察だって、わざわざ面倒な強制送還手続きはしたくないだろうし、一見きちんとしているパスポートを見せてやれば、すぐに解放してくれるだろう。

 問題となるのは、それまでに余計なことを喋ってしまわないかという点だ。

 いくらパスポートを作っても、本人達が不法滞在を認めてしまったら何の意味もない。

 もちろん、彼らは異世界人だから、言葉は通じないとは思うが、それでも通訳となる人物がいるのなら、いずれは白状してしまう可能性もある。

 だからこその、時間稼ぎだ。

 幸い、それくらいだったら部下を使えばどうとでもなる。だから、恩を売るためにも、こちらにすべて任せてもらうようにしたかったのだけど。


「……いえ、私もやります。そこまで頼りっぱなしになるわけにもいきませんから」


 ハクは、そう言って、自分には魔法の力があると言った。

 確かに、魔法なんて現実にはあり得ないとされている現代で、魔法による犯罪を立証できるわけはない。

 それに、これは間近で魔法を見せてもらえるチャンスでもある。

 私は、興味半分、いや、八割くらいで、その要求を飲んだ。

 さて、魔法というと、パッとイメージできるのは、火の玉を放つとか箒で空を飛んだりだろうか。

 正直、あんまりそういったものは信じてこなかったので、一体どういうメカニズムでやるのか非常に興味がある。

 そう思っていたのだけど、実際に目の当たりにすると、想像以上に凄いことなんだと理解した。


「こんなことが……」


 警察署の近くまで移動し、ハクが最初にやったのは、空を夜空に変えることだった。

 夜空と言っても、単に空を暗くしただけだが、それでも一瞬にしてそれができるのは、尋常じゃない。

 しかも、聞くところによると、被害を最小限に抑えるために、周りには結界を張っていて、一部の地域でしかこの現状は発見できないようにしたとか言っていた。

 そうして、始まるのは花火大会。

 空に打ち上げられる光の花は、確かに花火と言われたらそうだが、それを何の準備もなしに、いきなりできるというのは相当なことである。

 こんなことされたら、世の花火職人は商売あがったりだろう。

 さらに言うなら、地上を駆ける巨大ねずみ花火。

 ねずみ花火と言っているが、傍から見たら、巨大な何かが炎を吹き出しながら暴れまわっているという風にしか見えず、普通に恐怖を感じるものである。

 あれだけ激しい炎を噴き上げているのだから、周りの街路樹や家に引火してもおかしくないと思ったのだが、見ていた限り、そんなことは全くなかった。

 まるで、炎であるのに全く熱を持っていないかのように。

 直接接しているはずの地面すら、後から見れば焦げ跡一つなかったし、流石は魔法の炎だと思ったものだ。


「これが魔法か……」


 時間稼ぎも終わり、無事に救い出した後、私は魔法について改めて常識外れだと実感した。

 あんなの、誰も勝てるわけがない。

 今回は、ただ単に花火大会を開いただけだったが、その気になれば、私がイメージするような、火の玉を放つ魔法だって使えるだろう。

 もしかしたら、それよりも強力な魔法だって使えるかもしれない。

 そんな魔法を使えるハクが、もし敵になったら? 考えただけでも恐ろしすぎる。

 幸い、ハクはお嬢に対しては頭が上がらない様子だった。いや、気を許しあえる友人同士って感じだろうか?

 若干の苦手意識を持っていそうだが、それでも、決して裏切ることのない友情を感じた気がした。

 であるなら、お嬢が方針転換でもしない限り、ハクはこちらの味方であり続けるだろう。

 対策をするなら、魔法を封じ込める策を考えるべきなんだろうが、そんなことできるはずもない。ただでさえ、魔石の研究すら進んでないのに、魔法の対策など夢のまた夢だ。

 これは、今後も良好な関係を築いていかなければならないだろう。

 こちらが支配しているつもりが、逆に支配されるかもしれないって言うのは少し怖いが、この縁を捨てるには、もう深く関わり過ぎた。

 せめて、今のビジネスがうまく行って、あちらにも相応のメリットが発生するようにし、お互いに益があると感じてもらわなければ。

 そんなことを考えながら、家に戻っていった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 魔法が有れば一方的に暗殺もし放題だしなぁ
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