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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第八章:再びの里帰り編
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第二百四十五話:対価と本走配信

 報酬の件だけど、今度ローリスさんを連れてきてくれたらそれでいいと言っていた。

 一応、ローリスさんも、一週間に一回くらいの頻度で来てはいるようなんだけど、それだけだと足りないらしい。

 特に、今は転生者達の様子を見ることを優先していて、会ってもちょっと話をするとか、一緒に食事をするとか、お風呂に入ったりするくらいしかできなく、不満を抱えているようだった。

 聞いている限り、十分にスキンシップは取れているような気がしないでもないけど……。

 まあ、そういうわけなので、ローリスさんにもっと高い頻度でこちらに来て欲しいと伝えてくれたら、それでいいとのことだった。

 なんか、想像していた対価とは全然違ったけど、それくらいだったら問題はない。


「もう、いきなりいなくならないでよ。心配したんだからね?」


「ごめんごめん」


 正則さんに連絡した後、一夜ひよなを迎えに行くと、怒られてしまった。

 お兄ちゃん達が解放されるまでの約数時間、私の所在は知れていなかったからね。

 一応、スマホの方に連絡していたらしいのだけど、時間稼ぎに集中していて気がついていなかったというのもあったし、かなり心配をかけてしまったようだ。

 お母さんも、大丈夫だとは思っていたようだけど、心臓に悪いからやめて欲しいと言っていたし、今度からはちゃんと報告してから行くとしよう。

 それほどの緊急事態が起こらなければいいだけの話なんだけども。


「でも、確かに警察に捕まるのは災難だったね」


「ほんとだよ。戸籍がないって大変だね」


 普段なら、市民を危険から守ってくれる頼もしい存在として尊敬できるけど、いざ取り締まられる側に回ると本当に厄介な存在である。

 まあ、だからこそ犯罪の抑止力になっているんだろうけど、何も悪いことをする気がないのに捕まるっていうのは納得ができない。

 いや、わかるけどさ。不法滞在者がいたら捕まえなきゃいけないのはわかるけどさ。


「でも、パスポート作ってもらったんでしょ?」


「まあ、一応」


 私は、懐からパスポートを取り出す。

 今回、頼んだのはお兄ちゃん、お姉ちゃん、そしてユーリの三人分だったのだけど、なぜだか私の分まで作ってくれていた。

 まあ、お兄ちゃん達だけあって、私にないっていうのも不自然ではあるけど、私の分の写真は渡してないんだけどな?

 元々、私名義の銀行口座を作ったりしていたし、もしかしたら、あらかじめ作っていたのかもしれない。

 あった方が便利ではあるけど、勝手に作られたと考えると、ちょっと怖いね。


「どう見ても本物にしか見えない」


 もちろん、パスポートなんて日常で見る機会はそうそうないけど、それでも本物そっくりである。

 やたら凝った意匠の、恐らく偽造防止の術が散りばめられているであろうページも、しっかりと再現されていたし、一体どこでこんなもの作ったのかが気になるところだ。

 まあ、あんまり詮索しちゃいけない気がするけど。踏み込み過ぎたら消されそう。


「なんか、ハク兄がどんどん現実離れしていく気がするよ」


「ファンタジーの住人になってるだけでも十分現実離れしてるでしょ」


「そりゃそうだけど」


 まあ、言いたいことはわかるけどね。

 この偽造技術を見る限り、裏社会に通じている人間の中でも、かなりの重要人物に当てはまるだろう。

 私が聞いたのは、賭博関係の仕事をしているってことくらいだけど、ヤーさんにも絡まれているようだし、それは表の顔で、裏ではがっつり汚いことをしているのかもしれない。

 そんな、アウトローと関係を持つことなんて、普通ではありえないし、それすなわち現実離れしているって見方もできる。

 できれば、一夜ひよなはそのままでいてほしいけどね。便利ではあるけど、普通の生活が難しくなりそうだし。


「まあ、いいや。それより、今日は配信するの?」


「うーん、せっかくだからやろうか」


 今日は、お兄ちゃん達のごたごたのせいで配信できないかなと思っていたんだけど、案外スムーズに事が運んだので、時間が余っている。

 今から晩ご飯を食べて、配信の準備を整えることくらいは簡単にできそうだ。

 まあ、昨日は配信しなかったしね。こちらにいる間はできるだけやって行こうと決めたし、時間があるならやってしまおう。


「それじゃあ、ちゃっちゃと晩ご飯食べちゃおうか。なにがいい?」


「何でも……いや、じゃあ、ハンバーグ」


「はーい。ハク兄はお風呂の準備とかしておいて」


 そう言って、キッチンに向かう一夜ひよな

 ご飯の時に、何でもいいって答えるのはよくないと聞いたから、一応それっぽいのを答えたけど、あれでよかったんだろうか?

 ちなみに、私は特にそういうことを言われたことはない。

 あちらの世界では、よく私が料理当番をすることがあるけど、みんなこれがいいとかあれがいいとか、全然言ってこないんだよね。

 まあ、元々、一日三食、時には二食になるけど、しっかり食べられることの方が珍しい環境にいたっていうのもあるけど、だからこそ、食べられるなら何でもいいっていう考え方なのかもしれない。

 私も、そんなにレパートリーが多い方ではないから、自由に作れるのは助かっている。


「さて、と」


 その後、晩御飯を食べ終え、配信の準備に入る。

 今回は、以前練習配信した、宇宙運送の遭難記の本走をやろうと思っている。

 まだあれから二日しか経っていないけど、もうここまで来たら、練習数日でどこまで行けるかっていうのをネタにした方がいい気がしてきた。

 現時点でも、最低日数クリアは達成できている。それに加えて、グリッチを使えないということを考えると、これ以上短縮するのは単純な操作精度くらいしかない。

 まあ、極めれば多少は縮められるかもしれないけど、現状、そこまでしてタイムを縮める必要性を感じない。

 別に、私は世界記録を狙っているわけでもないし、ただ単に、リスナーさん達と楽しめたらそれでいいと思っているからね。

 だから、そういう記録を目指すのは専門の人に任せて、私はエンジョイしていこうと思う。


「じゃあ、始めようか」


 準備もできたので、配信をスタートする。

 今回は、ちょっと告知するのが遅かったが、それでも多くの人が待機してくれており、始まったと同時に多くのコメントが流れて行った。


「皆さんこんハクです。月夜ハクだよ」


(コメント)

・こんハクー

・こんはく

・待ってた


「今日は、以前やった宇宙運送の遭難記、そのRTAの本番をやって行こうと思うよ」


(コメント)

・まだ二日しか経ってねぇ

・早すぎる

・まあ、ルートは確立されたし、行けるとは思うが

・ルートができたとは言っても、あれをミスらず最後までいける人は少ないだろ

・昨日やってみたけど、ほんとにぎりぎりなのな

・グリッチに慣れ過ぎた


 みんな、あまりに早い本走に驚きつつも、ハクだからなと何か納得している様子。

 まだ二作目だというのに、すでに私のスタイルが認知されているようだった。

 別に、やろうと思ってこのスタイルにしたわけではないけど、まあ、インパクトはあるだろうし、これでもいいよね。

 私は、ゲームのタイトルを映しつつ、レギュレーションの説明をしていく。

 さて、うまく走ることができるかな?

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] もしかしたら役所とかに協力者とかが居るのかもね
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