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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第八章:再びの里帰り編
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第二百四十三話:時間稼ぎ

「こちらに任せてもらえれば、時間稼ぎもやっておきますが?」


「……いえ、私もやります。そこまで頼りっぱなしになるわけにもいきませんから」


 朝倉さんからの提案を、私は少し悩んでから断った。

 ここで、時間稼ぎをするというのは、犯罪行為をするということである。

 いや、例えば大声を上げまくるとか、いたずらをする程度のことだったら、犯罪行為とまではいかないかもしれないけど、今回の場合、お兄ちゃん達が捕まっている警察署の人員を、限りなく少なくするのが狙いである。

 警察署の人員が何人いるかは知らないが、多少大声を上げる程度で注意を引くのなら、来てもせいぜい一人や二人だろう。それでは意味がない。

 だから、ある程度大きな事件を起こさなければいけないのだ。

 これに加担するということは、私も犯罪行為に手を染めるということであり、そう考えると、ちょっとしり込みしてしまうけど、これもお兄ちゃん達を助け出すためだと思えば、まだ納得できる。

 もちろん、誰かが死ぬようなことは絶対にしないけど、できる限り大きな事件を起こして、注意を引かなくては。


「何か案があるのですか?」


「これといったものは特に。ですが、私には、魔法があります」


 さっき朝倉さんが言ったような、爆破騒ぎは、流石に気が引けるけど、私の得意分野である魔法で何かを起こすなら、そこまで抵抗はない。

 なにせ、その気になれば、都合のいい魔法を作ることだってできる。

 何か不測の事態が起きても、それをリカバリーできる魔法もあるわけだ。

 やるならば、私の支配下でやっておきたい。他人のテリトリーで背を向けるのは、リスクが高すぎるからね。


「ほう、この目で魔法が見れるわけですか。それはちょっと楽しみですね」


「ただ、さっきも言いましたが案はありません。朝倉さん、荒唐無稽でもいいので、何か案はありませんか?」


「うーん、そうですねぇ……」


 朝倉さんは、しばらく考えたのち、一つの案を提示した。

 なるほど、確かにそれなら、多くの人の気を引けるかもしれない。

 気を引きすぎて、警察署以外の人達にも影響が出そうだけど、それに関しては多少は目をつむるしかないかな。


「こちらはいつでも行けます。すぐにでも実行して大丈夫ですか?」


「ええ、問題ありません。あ、私も立ち会っていいですか? 興味があるので」


「……あの、偽造パスポートの件は?」


「それなら大丈夫ですよ。部下にやらせますので」


「そうですか……」


 どこか楽しそうな様子の朝倉さんに、小さくため息を吐く。

 まあ、実際に魔法が見れるって考えたら、興味を持つのは当たり前っちゃ当たり前だけど、緊急事態だということを考えてほしい。

 若干不安に思いつつも、お兄ちゃん達が捕まっているであろう警察署の近くへと移動する。

 警察署の場所は聞いてなかったけど、探知魔法を使えば、お兄ちゃん達の場所はすぐにわかるからね。


《さて、エル、念のため、結界張っておいてくれる?》


《了解です》


『アリアも、サポートよろしく』


『任せてー』


 できるだけ、被害を最小限にするために、一応結界を張っておく。

 この結界は、不可視の結界。外から中の様子がわからなくなるタイプの結界だね。

 それと同時に、結界の付近に近づいたら、無意識にそこを避けるようになる効果もつける。

 こうすることで、結界内でなんやかんややっている間、他の場所では普通の日常が過ぎているって感じにする。

 まあ、道路を走ってたら、いきなりUターンしたくなるっていうのは異常かもしれないけど、多分そこまで気にされないんじゃないかな。

 そういう効果の結界だしね。


「それにしても、本当にできるんですか?」


「流石に、世界中の、っていうのは無理ですけど、ここら一帯だけであれば、問題ありません」


 結界が張られたのを確認して、空を見上げる。

 今からやろうとしているのは、快晴のこの空を、夜空に変えることだ。

 もちろん、普通はそんなことできない。夜にするっていうことは、時間を進めるということであり、流石の私でも、そこまで大胆な時間加速はできない。

 だから、今からやるのは、夜に見せかけるための方法だ。

 空に水魔法と火魔法で厚い雲を作り出し、さらに闇魔法で暗闇を作る。

 見た目には、急に天候が変わって、雨でも降るんじゃないかと思うことだろう。

 しかし、それだけじゃあ、流石に注意を引くには弱すぎる。

 だから、ここからが本番だ。


「近隣住人の人には申し訳ないですが、どうか楽しんでくださいね」


 そう言って、私は空に向かって魔法を撃ちだした。

 天高く上ったそれは、次第に速度を落とし、そして、大きな音共に爆ぜる。

 ドーン!

 そんな音と共に空に映し出されたのは、光の絵。いわゆる、花火である。


「どんどん行きますよ」


 私は次々に花火を打ち上げていく。

 もちろん、ただの花火ではない。音は通常よりも大きく、また爆発音に近い音だ。何も見ないで聞いた場合、どこかで爆発が起きたんじゃないかと勘違いするようなものである。

 さらに、地上でも巨大なねずみ花火もどきを展開することにした。

 見た目には、激しい炎が地上を覆っているように見えなくもない。

 近づいてみれば、単なる花火だとわかるだろうが、遠目に見れば、かなりの非常事態だ。

 今回は、警察署から人員をつり出すことが目的だから、遠くから見て派手なものを選んだつもりである。

 まあ、仮に近くで見たとしても、こんなでかいねずみ花火ないだろうけどね。


《エル、空を飛んで、興味を引いてあげて》


《かしこまりました》


 私の指示に、エルは竜の姿になって空に飛び立つ。

 妙な音を聞いて駆けつけてみたら、外では予定にない花火をやっている。何事かと見上げてみれば、その陰になにやら巨大なものがあるのが見える。

 あれは何なのかと、人々は注目するだろうし、それが竜だとわかれば、好奇心によって釘付けになるか、あるいは恐怖してパニックを起こすだろう。

 どちらにしても、つり出した人を戻さない有効な手だと思う。

 これだけ派手なことをやっても、実際に起きているのは、結界内のごく一部の地域だけ。

 まあそれでも、巻き込まれた人達はたくさんいるだろうし、その人達には申し訳ないけど、警察署周辺以外にはやってないので、せいぜい音がうるさいくらいの被害だと思う。

 これを続けて、警察の気を引く。偽造パスポートができるまでは、続けさせてもらおう。


「見事なものですね。まさかほんとにこんなことができるとは」


「これくらいは魔法なら簡単ですよ」


 まあ、いくら結界で仕切っているとはいえ、この範囲でやるにはちょっと魔力の消費量が多すぎる気がしないでもないけど、私はそこのところは気にしなくてもよくなっているので、特に問題はない。

 さて、そろそろ警察署から人が出てくる頃か。

 私は、見つからないように隠密魔法をかけながら、成り行きを見守ることにした。

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[一言] 何故か妖怪感を感じる
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