第二百三十八話:縛りの壁
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その後も、先人のルートに従ってプレイしていき、ひとまずクリア手前までは行くことができた。
本当は、私独自のルートとか作って見たかったけど、それには運搬速度やら、壁の破壊時間やらの計算が必要になってくる。
一応、式自体は解明されているらしく、理解はできたけど、それを使って計算していこうと思うかと言われたら、そんなことはなかった。
なんというか、難しすぎる。
本物のRTA走者は、こういう計算を瞬時にできるのかもしれないけど、私には到底無理だと思ってしまった。
それに、そもそも今のルートは、洗練されすぎていて、他に余地がないというのもある。
レギュレーションが変われば、もう少しルートも変わってくるかもしれないが、私が今走っているルートを考えると、このルート以外を考える方が難しかった。
元々、私はRTA走者となることを決意したが、そこまでガチになるつもりはなかった。
世界記録など狙っていない、言うなればエンターテイメントとしてのRTAをするのが目的であり、本気でやっている人に勝負を挑むつもりなど微塵もない。
まあ、その考え自体が舐めていると言われたら反論できないけど、ライトにRTAを楽しむ人がいてもいいとは思っている。
なので、難しいことは専門家に任せていいんじゃないかなと思う。
「ただ、ここばっかりは自分で考えないとだよね」
しかし、私は、なるべくグリッチを使わないという縛りがある。
それを考慮すると、どうしてもルートを変更しなければならない箇所があるのだ。
数にして4つ目のステージ。多くの場所を水に囲まれており、青がいなければ攻略不可能な場所。
どこを変更しなければならないかというと、最初の方にコメントでも言っていた、場外抜けをする必要がある場所である。
まあ、挙動がおかしくなるわけではないし、これはグリッチではないと言う人もいるかもしれないけど、元々、場外は侵入不可な場所であり、通常の方法では行くことができない。
であるなら、その場所に行くことができるのは、グリッチと言ってもいいだろう。少なくとも、私はそういう認識をしている。
しかし、これを使わないとなると、どうしても時間がかかる。
一応、二日目と違って、そんなに時間がないわけではないから、他の動きを最適化すれば間に合うかもしれないけど、その後のルートは大きくずれることになるだろう。
「仮にそのままのルートで行くとして……あ、ここもダメかな?」
場外抜けばかりを気にしていたけど、よくよく考えるともう一つグリッチがあった。
いや、グリッチなのかはわからないけど、正規のルートではない取り方をするのがもう一つ。
それは、長い橋の先にあるのだけど、本来なら、橋をかけなければ、運ぶことができないパーツである。
しかし、運搬ルートが塞がれていると、その場でぐるぐる回る特性を利用し、パーツを一方向に誘導し、水辺に押し出すことによって強引に運搬ルートを変え、橋を作る時間をスキップするというものがあるのだ。
運搬ルートが塞がれている時にぐるぐる回るのは仕様だし、水辺に落ちたパーツがしっかり運搬されるということは、そのルートは想定されたルートであるということだし、グリッチではないと言ったらそうかもしれないけど、やっぱり、正規のルートで回収した方が良さげではある。
ただ、それも含めるとなると、流石に時間が足りない気がする。
ただでさえ、場外抜けをやらないと相当時間を取られるのに、さらに時間のかかる作業をやらなければならないのだから、ルート通りに進んでも、間に合うことはないだろう。
となると、やはりここは自力でルートを考える必要がある。
さて、どうしたものかね?
(コメント)
・グリッチを使えないという縛りが効いてきたな
・RTA動画を見ると、当たり前のように使ってるから違和感なかったわ
・最低日数目指すとなるとかなりきついな
・もう7日でもいいんじゃない? それなら楽勝でしょ
・まあ、ハクちゃんは世界を目指してるわけじゃなさそうだし
・最低日数見たいけどな
コメントの反応としては、妥協して7日クリアにしてもいいんじゃないかという意見と、どうにかして6日クリアしてほしいという意見の二つに分かれているようだ。
中には、グリッチ使っちゃってもいいんじゃない? と言ってくれている人もいたけど、流石にそれは『Vファンタジー』に迷惑がかかるかもしれないので、やりたくはない。
となると、妥協するか否かが問題になってくるわけだけど。
「うーん、とりあえず、できる限り最低日数は目指してみるね。できそうになかったら、その時はごめんなさい」
(コメント)
・ええんやで
・ハクちゃんならきっとやってくれる
・グリッチなしで行けたら快挙では
・操作精度高めたら行けるんだろうか
さて、ルート取りを考えなくては。
前提として、目指すべきは最低日数クリアだ。そのために、多少時間がかかったとしても、それは許容できる範囲である。
となると、グリッチを使えないことによって生じる時間的ロスを、どうやってフォローするかっていうのが焦点になるか。
一応、時間が全くないわけではない。他の走者さんの走りを見る限り、二日目のように、日没ぎりぎりという時間ではなかった。
であるなら、ロスを含めても、動きを最適化すれば、間に合う可能性は十分にある。
「先に橋をかけた方がいいかな?」
二日目にやったように、一日の序盤に少数で橋をかけさせておき、後半になったら出来上がっている、という風にしてもいいと思う。
ただし、今のルートをそのまま使う場合、匹数が足りない。
ぎりぎりの配分であるため、橋に回す余剰分はないのだ。
だが、すべてが終わった後に、大勢で一気に橋をかけるというのも難しい。
その場合、どうしても待ち時間が発生するし、その分がロスとなる。
そのロスがあるなら、その時間で何かした方がいいに決まってるだろう。
となると、橋をかけさせ、ちょうどいいタイミングで回収するのが一番いい。
「最初のムーブを応用して、このルートを通って……」
橋スキップをするパーツは、このエリアにおいて最も重いパーツであるため、運ぶのはできれば最後にしたいところではある。
かといって、橋を開通させた後に、回収する手間を考えると、そのまま運びたい気持ちではある。
これはなかなか難しい。
橋かけも、匹数によって時間が全く変わるので、ちょうどいい配分を見つけないといけないし、かなり大変。
なんか頭痛くなってきた。
(コメント)
・先に橋かけてもらって、後で回収するパターン?
・でも、クマの実家には爆弾があるから、そっちは最速で開けないと先に進めないぞ
・北側のルートは全部爆弾がいるからね
・流石に橋をかけて即運ぶには数が足りないと思う
・計算わかんね
流石に、そんなすぐにルート取りは思いつかない。
仮に思いついたとしても、常に理想ムーブをしなければ、本当にそれが有用かどうかわからないし、実証するのも大変だ。
これは、思ったよりも時間がかかるかもしれないね。
そんなことを考えながら、ルートを思案した。




