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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第八章:再びの里帰り編
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第二百三十四話:次なるRTA

 みんな、私のこと気になりすぎじゃないだろうか。

 そりゃ確かに、私はこの二週間、姿を消していたし、その間何をしていたのかとか、色々聞きたいことがあるのはわかる。

 でも、仮にもこの配信はアケミさんの枠であり、私の配信ではない。

 コラボではあるけど、主役は私ではなく、枠主であるアケミさんのはずである。

 それなのに、質問は私のものばかり。たまにあっても、三期生全体に対する質問があるくらいで、アケミさん達個人に触れる内容はあまりなかった。

 いくら私達が仲良しでも、これだけ偏ると流石に申し訳なくなってくる。

 予想していたこととはいえ、なんとなくもやもやした気分になってしまった。


『ハクちゃん、なんか落ち込んでる?』


 配信が終わり、今は通話アプリで通話をしているところである。

 私の機微を読み取ったのか、アケミさんがそんな言葉をかけてきた。

 通話越しだというのに、よく気づけるものだ。


「いえ、質問が私に対してばっかりだったので、ちょっと申し訳なくて」


『それは当然じゃない? 僕だって、ハクちゃんのことは気になってたし』


『ハクちゃんはみんなのアイドルですからね。気になる気持ちはわかります』


 もちろん、これによってアケミさん達が私のことを嫌いになるとか、そういうことはないと思う。

 裏表のない人達ばかりだし、注目されていないことが不満なら、自力で努力して勝ち上がっていくことを選ぶだろう。

 ただ、それでも、人の配信を占拠してしまったのは、何となく居心地が悪い。

 リスナーさんの気持ちは嬉しいけど、他のみんなにも注目を向けてほしいな。


『それより、アンケート結果、どうなった?』


「ああ、あれですか……」


 配信中、次にやるRTA企画について、アンケートを取ったのだけど、すでにたくさんの投票が集まっていた。

 まだ、投票時間はあるので、今後どうなるかはわからないけど、人気なのは、コメントでも真っ先に挙げられていた、宇宙運送の遭難記である。


『チトセ、知ってる?』


『有名ですよ。今だと、シリーズ化されていて、確か4まで出ていたかと』


『私やったことあるよー。シリーズごとに難易度は異なるけど、個人的に一番難しいのは、やっぱり初代だね』


 宇宙運送の遭難記。

 簡単に概要を説明すると、宇宙を股にかける運送会社に所属する主人公が、宇宙船で航行してたところに隕石が衝突し、未知の星に不時着してしまう。その際、宇宙船のパーツの大半が飛び散ってしまい、このままでは帰れない。

 絶望に暮れていた時に、主人公の星のニンジンによく似た生物に出会い、彼らの力を借りてパーツを回収していって、未知の星からの脱出を目指す、という感じ。

 パーツ回収には制限時間があり、30日が経過すると、生命維持装置が切れてお陀仏って状況。私も初代はやったことがあるけど、初見の時は普通に時間切れでバッドエンドだった気がする。


「この調子で行くと、これになりそうですね」


『ちなみに自信のほどは?』


「うーん、どうでしょう。やれないことはないと思いますが……」


 このゲーム、RTAをするとなると、自然と最低日数クリアが必須条件になる。

 夜は、原生生物が活発になるため、活動することができず、パーツの回収は基本的に昼に行われる。なので、日没になった時点で、切り上げなければならないのだ。

 だから、最短を目指すなら、日数をできる限り縮める必要があるので、必然的にそうなるわけである。

 最低日数ってどのくらいなんだろう。


『今調べたところによると、初代は6日が最低日数みたいですね』


『あと四回遭難できるじゃん』


「そんなに短いんですね……」


 制限時間が30日あるわけだけど、わずか6日でクリアできるとか、遭難のプロすぎる。

 確か、あのゲームはそれぞれマップがあって、一日に探索できるのはそのマップだけだから、最低でも一日はそのマップに費やす必要がある。

 マップの数は、5つだったから、ほぼ一日でそのマップのすべてのパーツを回収していることになるね。

 いや、チュートリアルで、一日目はパーツを一つ回収したら強制終了だから、実質すべて一日で終わらせるのか。

 ……普通にやばくない?


「とりあえず、やって見ないことにはわかりませんね」


『また練習配信する?』


「機会があれば。まだ、このゲームに決まるかわかりませんしね」


 あんまり練習風景ばかり垂れ流すとリスナーさんが飽きちゃいそうだし、やるとしても一回くらいになるだろう。

 他のゲームになったとしても、知らないゲームというわけではないので、多分何とかなるはず。


『楽しみにしてるね』


『応援してるぞー』


「ありがとうございます」


 この調子で行くなら、明日も配信かなぁ。

 なんか、毎日配信しすぎて、供給がおかしくなりそうだけど、どうせしばらくしたらまたいなくなるんだし、できるだけやっておきたいというのはある。

 お兄ちゃん達のこともあるし、あんまり配信しまくるのも違う気はするんだけどね。


 その後も、色々と話をした後、通話は終了した。

 またコラボしようということになったけど、私を独占しすぎるのもよくないってことで、次のコラボは少し間を置きたいらしい。

 まあ、あんまりコラボし過ぎて、自分の配信を疎かにするのもあれだし、間違ってはいないだろう。

 できることなら、アケミさん達の配信の引き立て役になれたらいいんだけど。


「ハク兄、話し終わった?」


一夜ひよな、うん、終わったよ」


 待っていたと言わんばかりに、一夜ひよなが部屋に入ってくる。

 今回は三期生とのコラボということで、一夜ひよなは出しゃばらないようにと退出していた。

 まあ、別に入ってもよかったは思うけどね。その場合、ますます私寄りの配信になっちゃいそうだけど。


「ねぇ、明日暇?」


「一応、夜に配信しようかなとは思うけど、それ以外は特に予定はないよ」


「じゃあさ、一緒に映画でも見に行かない? ほら、最近話題になってるのがあるし」


「いや、最近の話題はよくわからないけど……」


「あ、そっか。まあ、たまにはいいでしょ?」


「まあ、一夜ひよなが行きたいならいいけど」


 確かに、一夜ひよなとはいつも一緒にいるけど、出かけるとなると、『Vファンタジー』の本社に一緒に行ったくらいしかない。

 一応、お揃いの指輪を買ったことはあったけど、あれはもっとしんみりした雰囲気だったしね。気軽に行く買い物というのはなかったかもしれない。


「それじゃあ、明日の朝、二人で行こうね」


「エルは連れて行っちゃダメ?」


「ダメじゃないけど……できれば二人がいいな」


 うーん、まあ、確かに一夜ひよなからしたら私を独り占めにしたいんだろうし、エルはあんまり来て欲しくはないか。

 仕方ない、エルには明日はお兄ちゃん達の下にいてもらおう。

 この世界であれば、危険はほとんどないし、エルもそこまで難色は示さないはずである。


「わかった。じゃあ、二人で行こうね」


「やった! 楽しみにしてるね」


 嬉しそうに笑顔を見せる一夜ひよな

 私はその顔を微笑ましく見ながら、エルを説得にかかるのだった。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] > ニンジンによく似た生物に出会い 何のゲームかと思ってたらピ○ミンか そんなストーリーだったんだなぁ エルさんにはとりあえずゲームでもやっててもらえば良いんじゃないかな?
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