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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第八章:再びの里帰り編
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第二百三十二話:ケーキをテイクアウト

 しばらく話した後、今日の夜のコラボ配信について話し合うことにした。

 基本的には、雑談配信をする予定だとのことだけど、私の近状を伝えるだけでいいんだろうか?


「昨日告知した時に、質問箱を設置しておいたから、それを読むつもり」


「みんな、ハクちゃんのことは気になってるだろうから、大半はハクちゃん絡みになるんじゃないかな?」


「それ、いいんですか?」


「全然大丈夫! 僕もハクちゃんのことは気になるし」


 今や、私は結構な数の人に注目されているらしい。

 一応、『Vファンタジー』という箱に入っているから、スカウト的なお誘いはあまりないけれど、それでも案件などを狙っている企業はそれなりにあるようなのだ。

 そう言った、ビジネス的な部分もあるし、当然個人的な興味から来るものもある。

 特に、一昨日の配信で、RTA業界からも目をつけられているらしく、それについての質問もあるかもしれないとのこと。

 正直、RTA業界から目をつけられても何も答えることはないんだけど……まあ、私の配信スタイルの一つになるものだし、少しは勉強しておいた方がいいかもね。


「時間はどうしますか?」


「21時からでどうかな?」


「わかりました。合わせます」


 その時間なら、ご飯も食べ終えているし、問題はない。

 今回は、私がアケミさんの配信にお邪魔させてもらう形になるので、そこまで準備するものもない。

 まあ、トラブルがないように、チェックくらいはしておいた方がいいかもしれないけど。


「お願いね。いや、楽しみだね!」


「ハクちゃんは定期的にいなくなりますから、次現れるまではハクちゃんの話題が上がるのは間違いないですからね」


「ある意味理想の形なのかなー?」


「いや、理想は毎日配信では?」


「まあ、それはそうなんだけど」


 勝手なイメージだけど、人気の配信者は、毎日でも見たいという人は多いと思う。

 もちろん、毎日なんてやってたら、身が持たないかもしれないけどね。リスナーさんだって、配信者に体調悪くなって欲しいわけじゃないから、そこは適度に休憩しながら、毎秒配信してくれって感じなんだと思う。

 矛盾してるって? うん、私もそう思う。


「それにしても、やっぱりケーキ美味しいね」


「雑誌にも載るほどですからね。見た目もかなり映えます」


 ケーキに関してだけど、かなり見た目に凝っていると思う。

 私には、いわゆる映えっていうのはよくわからないけど、ちょっとSNSで検索をかけるだけでも、この店のケーキを映しているであろう写真はたくさんあるし、人気なのは間違いなさそうだ。

 エルも、話に入れないのもあるかもしれないが、ずっとケーキを食べている。

 味も悪くないし、普通に当たりの店だよね。


「ケーキなんて久しぶりに食べました」


「異世界だと、ケーキはやっぱり貴重なの?」


「そうですね。砂糖が貴重なので」


 砂糖が量産できればいいのかもしれないけど、仮に量産できたとしても、絶対貴族が絡んできそうだよね。

 実際、塩とかも割と高いし、特に娯楽品とかは利権が絡むことが多いと思う。

 大衆が享受できる娯楽なんて、せいぜい闘技場とか劇場くらいじゃないだろうか。

 そう考えると、なかなか流通させるのは難しそうである。


「テイクアウトもできるみたいですし、お土産に買っていきましょうか」


「いいねー。私、ハクちゃんになら奢っちゃうよー」


「いや、それは悪いですよ。ちゃんと払いますから」


「でも、ハクちゃんお金持ってるの?」


「はい。当てができたので」


 そう言って、私は【ストレージ】から財布を取り出す。

 きちんとこちらの世界で調達した、普通の財布だ。

 ローリスさんのおかげで、こちらの世界でもお金を手に入れる手段ができたので、今はそこまでお金に困ってはいない。

 そう言えば、拠点の家賃を払っていなかったような? 後で有野さんにでも渡しておくとしよう。


「えー、せっかくだし奢らせてよー」


「呼び出したのはこっちだし、そのお礼ってことでどう?」


「そんなに奢りたいんですか?」


「もちろん!」


「えぇ……」


 普通、逆な気がするけど、多分、みんな私のことを可愛がりたいんだろうな。

 そういうことなら、むしろ奢られた方が喜んでくれるかもしれない。

 この分の穴埋めは、後ほど何かプレゼントを渡すとかして返せばいいだろう。

 ちょっと申し訳ないけど、ここは折れておこうか。


「……わかりました。ゴチになります」


「やった! なら好きなの選んでね」


 そういうわけで、私はケーキをいくつかお土産にもらい、帰路につくことになった。

 まあ、これに関しては後でお兄ちゃん達にも持っていこうか。ケーキを見て、食べないとは言わないだろうし。

 【ストレージ】に保存しておけば、劣化もしないし、問題はないだろう。


「お帰り。割と早かったね?」


「ただいま。まあ、打ち合わせしただけだからね」


 まあ、大半は近状報告だった気がしないでもないけど、きちんと打ち合わせもしていたから嘘ではない。

 私は【ストレージ】からケーキの箱を取り出し、テーブルの上に置く。


「これ、お土産に貰った」


「へぇ、ケーキ? あ、これって駅前のあの店のじゃない? 美味しいって評判なんだよね」


 どうやら、一夜ひよなもあの店を知っている様子。

 そんなに人気なのかな? だとしたら、よく入れたな。


「お兄ちゃん達にも配るけど、その分を残してくれたら食べていいよ」


「いいの? ありがとー」


 そう言って、一夜ひよなはルンルンでキッチンに皿を取りに行った。

 私も食べようかと思ったけど、さっき散々食べてきたから、正直お腹すいてない。

 あんまり食べて、晩御飯が食べられなくなっても困るし、食べるとしたら、お兄ちゃん達のところに持っていく時かな。


「エル、食べたければ食べてもいいからね」


「い、いえ、流石にハクお嬢様のお土産を食べるわけには……」


「そう? まあ、後でもいいか」


 食べたそうにしてるけど、流石にここじゃ食べにくいよね。一夜ひよなの目もあるし。

 戻ってきた一夜ひよながケーキを取り分けたのを確認し、残りを【ストレージ】にしまう。

 さて、まだ時間はあるけど、とりあえずチェックくらいはしておこうか。


「そういえば、ハク兄、変な奴からフレンド申請来てたから、ブロックしておいたよ」


「フレンド申請? どれの?」


「イカのゲーム」


 はて、あのゲームでフレンド申請が来ることなんてあるだろうか。

 そりゃ、配信していたから、リスナーさんの誰かがしてきてもおかしくはないけど、基本的にそういうのはお断りすると言ってあるし、それを無視してまでフレンド申請してくるような人はいない気がするけど。


「ブロックしたって、断ったんじゃなくて?」


「うん。まあ、誰が送って来たかは想像がつくけど」


 そう言って、一夜ひよなはちょっと不機嫌そうな顔をしている。

 何のことかと思って詳しく聞いてみると、どうやらフレンド申請という名の誹謗中傷だったらしい。

 フレンド申請では、申請と同時にコメントを送ることができるんだけど、そのコメントに、誹謗中傷が書かれていたようだ。

 具体的に言うと、私が芋砂ばっかりしたせいで勝てなかった、ふざけるな、みたいな内容。

 それを聞いて、昨日の利敵してきた人を思い出す。

 多分、あの人だよね? あの試合は結局勝ったような気がするんだけど、あの人にとっては負けていたってことなんだろうか。

 なんか、そこまで徹底的にやってくると、逆にすがすがしいな。よっぽど暇らしい。

 まあ、ブロックしたってことだし、もう来ることはないだろう。来たとしたら、それはそれで通報すればいいだけの話だし、問題はない。

 なんだか嫌なことを思い出しちゃったけど、気を取り直して、私は機材のチェックをすることにした。

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― 新着の感想 ―
うーんこの微妙にリアル感ある現代の嫌なエピソードよ 世の中には…ゲームに向いてないメンタルな人々が多すぎる……ッ
[一言] 粘着してきそうなやつやなぁ
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