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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第八章:再びの里帰り編
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第二百三十一話:打ち合わせ

 翌日。いつものように起床し、朝食を食べてから、パソコンを起動する。

 通話アプリを見てみると、アケミさん達からチャットが送られてきていた。

 内容は、今日のコラボについて、打ち合わせ的なことをしないかというもの。

 まあ、打ち合わせとは言っても、どちらかというとみんなが会いたいだけな気がしないでもないんだけど。

 とはいえ、今日の配信で決まっていることは、雑談配信をするということくらい。ある程度、何を話すかを決めておくのは悪くないだろう。

 私はチャットで返事を返す。すると、すぐに返事が来て、これから会わないかということになった。


「お兄ちゃん達は、多分大丈夫かな」


 一瞬、お兄ちゃん達のことが浮かんだが、そこらへんはユーリが何とかしてくれるだろうという期待がある。

 お兄ちゃん達だって、私が仕事をしていることは知っているだろうし、その関係だというのなら、特に文句は言わないはず。

 後、恐らく昨日の配信を見ていただろうから、ちょっと恥ずかしいというのが一つ。

 どうせ、帰る時になったら会うんだから意味ないとは思っているけど、褒められるにしろ、貶されるにしろ、どっちにしろ恥ずかしい。

 下手にのめり込んで、変なこと言わなきゃいいんだけど……。


一夜ひよな、ちょっと出かけてくるね」


「はーい。夜には帰ってくるよね?」


「うん。コラボって、オンラインだろうし」


 以前の復帰配信は、『Vファンタジー』の本社のスタジオを借りたけど、オフコラボでもない限り、基本的には通話を繋いで話すのが普通だと思う。

 まあ、今日の話の流れによっては、もしかしたらがあるかもしれないけど、できる限り帰ってくる努力はしよう。


「じゃあ、行ってらっしゃい」


「行ってきます」


 身だしなみを整え、一夜ひよなの部屋を後にする。

 さて、アケミさん達から指定された場所だけど、とあるカフェらしい。

 ケーキが有名らしくて、打ち合わせがてら、食べようということで、その場所に決まったようだ。

 今日は休日なので、お昼から行っても問題はない。

 さて、どんなところなんだろうね?


《こちらの世界だと、砂糖はあまり貴重ではないのですか?》


《まあ、そこまで入手に苦労するものではないかな。昔は違ったみたいだけど》


 ケーキを食べに行くと言ったからか、エルがそんなことを聞いてくる。

 確かに、あちらの世界だと、砂糖って割と貴重だしね。

 一応、聖教勇者連盟がある、セフィリア聖教国は、すでに結構な数が流通しているようだけど、オルフェス王国はまだそこまで流通していないと思う。

 ケーキなんて、砂糖を結構使うし、貴族でもなければなかなかお目にかかれないものだ。

 だから、それが気軽に食べられるというのは、幸せなことなんだろう。


《神様が地上にいた頃には、もうケーキってあったの?》


《はい。ですが、かなり貴重なものでした》


 ふと気になって聞いてみたら、まさかの回答である。

 1万年前からケーキってあるんだ。

 ああでも、神様もいたわけだし、誰かしらが砂糖の知識を教えていても不思議はない。

 ただでさえ、地球と貿易していたようだしね。むしろ、直接取引していてもおかしくはないだろう。


《エルも食べていくといいよ。こちらの世界のケーキも美味しいから》


《楽しみにしております》


 そんなことを話しながら、目的地へと歩みを進める。

 しばらくすると、それらしきカフェが見えてきた。名前も合っているし、ここで間違いなさそうである。


「いらっしゃいませ」


 中に入ると、なんだか可愛らしい雰囲気の内装だった。

 あちらこちらに動物をモチーフとした小物が置かれており、全体的に甘い雰囲気を感じさせる。

 店内を見回すと、窓際の席に、アケミさん達の姿があった。


「あ、ハクちゃん、こっちこっち!」


 すでに三人とも集まっているようで、こちらに手招きをしてくる。

 私は待ち合わせであることを店員に告げた後、その席へと向かった。


「お久しぶりです、皆さん」


「久しぶり。と言っても、まだ二週間くらいだけど」


「以前の今生の別れに比べたら、まだ早い方ですね」


「いや、今生の別れではなかったでしょう……」


 見た限り、みんな元気そうである。

 私がいなくなったことで、落ち込んでいるかと思ったけど、明るい様子で安心した。


「それで、打ち合わせですよね」


「そうそう。まあ、それは建前で、一緒にケーキ食べたかっただけだけどね」


「ここのケーキは美味しいよー。ハクちゃんも是非食べてみてねー」


「そのつもりです」


 ちょうどよく現れた店員に注文を伝え、しばし待つ。

 この店は、ケーキの種類が豊富なようで、ショートケーキやチョコケーキ、チーズケーキなど、より取り見取りである。

 ちょっと注文に手間取ることはあったけど、私はとりあえずショートケーキを頼むことにした。


「それで、あれからどうなったの?」


「まあ、色々ありましたが……」


 私は、これまでの経緯を説明する。

 多少であれば、配信でも話したけど、それでも気になることはたくさんあるようで、しばらくの間は私の話でもちきりだった。

 まあ、約一年分の話だからね。異世界の話でもあるし、興味があるのは仕方ない。


「ハクちゃんって、トラブルメーカーだったりする?」


「確かにそんな感じはしますよね。一年であったにしては、濃密すぎますし」


「それでこそハクちゃんって感じはするけどねー」


 なんだかとっても失礼なことを言われている気がする。

 まあ、確かに私の行く先々でトラブルは起こるし、なんなら自分から首を突っ込むことも少なくないけど……別にトラブルメーカーってわけじゃないと思いたい。


「そっちはどうだったんですか? 何か変わったことは?」


「変わったことは特にないかな。しばらくハクちゃんのこと聞かれたりはしたけど」


 こちらの世界で私がいなかった約二週間の間、アケミさん達は適度に配信をしながら、日常生活を送っていたらしい。

 私の復帰配信の後、またしばらく配信がなかったから、何か知らないかと聞かれたことはたくさんあったようだが、私がいつ戻ってくるかなんてアケミさん達にはわからない。

 だから、そのうち帰ってくるとしか言えず、ちょっと困ったことになっていたようだ。

 さらに言うなら、前回の最後の配信で、私がチートっぽく見えるRTA配信をしてしまったせいで、それについて意見を聞かせてくれと言ってくる人がそれなりの数いたようで、捌くのが大変だったと言っていた。


「それは、迷惑をかけて申し訳ないです……」


「いや、迷惑だなんて思ってないから」


 そもそも、私のプレイがチートを使ったものじゃないかって言っていたのは、ごく一部の人達だけだ。

 コメントでも、基本的にはスルーで、あまり荒れないようにしてくれていたおかげもあって、特に面倒なことにはならなかったようである。

 結果的に、私が帰って来て、チート疑惑を払拭したことで、コメントでもそういった人はいなくなり、むしろ感謝しているのだとか。

 やっぱり、みんな優しいなぁ。

 お互いの近状を伝えつつ、途中でやってきたケーキに舌鼓を打ちながら、和やかな時間が過ぎて行った。

 誤字報告ありがとうございます。

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[一言] 皆にケーキお土産に買って帰らないと
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