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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第八章:再びの里帰り編
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第二百二十九話:裏切り行為

 その後も、色々な武器を試していったが、どれもそれなりの動きはできたように思う。

 元々は、苦手な武器もたくさんあったような気がするんだけど、やっぱりこの体になったからなのか、そう言った苦手武器がなくなっていったように思える。

 これは、身体強化魔法を使わなくても同じことで、恐らく、神様もどきになった影響も含めて、この体のスペックが高すぎるんだろう。

 純粋にゲームできなくなったという意味ではちょっと悲しいことかもしれないが、別にそれでゲームが面白くなくなったわけではないし、これはこれでいいんじゃないなと思う。

 そもそも、配信以外でゲームする機会が全然ないし、それならリスナーさんが喜んでくれた方が私も嬉しい。


「それで、鉛筆だっけ?」


「ガチはともかく、バイトでは嫌がられてる武器よね」


(コメント)

・見た目は好きなんだけどね

・チャーなのに一撃じゃないっていうのが爽快感がない

・射程は意外と長いし、五連射できるから、使いこなせれば強そうなんだけど

・竹の方がまだまし

・エリアならステージによってはめっちゃ強いから

・お前らそんな武器を使わせるなよ

・だって、ハクちゃんが使ってるの見たいじゃん?

・それは同意する


 みんなが鉛筆と呼んでるこの武器だけど、カテゴリー的にはチャージャーである。

 チャージャーの特徴は、その名の通りチャージを必要とし、射程が長く、当たれば一撃ってものが多い。

 そんな中で、この鉛筆は、当たっても一撃ではない。

 チャージをすると、そこから五連射することができるのが最大の特徴で、倒すためには二発当てる必要がある。

 一回のチャージで五連射もできるなら、倒すことは簡単なのではないかと思わなくもないけど、このゲームのチャージャーは、射線が見えてしまう。つまり、素直に狙ってしまうと、相手は当たるまいと回避行動を取ろうとするのだ。

 普通のチャージャーなら、撃つ直前まで視線を下に向けておき、射線を隠して、撃つ直前だけ狙うという方法で、気づかれずに狙うことが可能だが、この武器は二回当てないといけない関係上、絶対に気づかれてしまう。

 一発目を正確に当てられたとしても、二発目を撃つ頃には移動しているなんてことも少なくない。そりゃ、撃たれたのにそのまま留まる人は少ないだろうからね。

 移動先を正確に狙えるなら行けるんだろうけど、弾は撃ってから時間差で着弾するので、ちゃんと移動経路を予測しないと当たらない。

 相手の移動経路を正確に、それも瞬時に予測するのは、よっぽど慣れてる人じゃないと不可能に近いので、それで扱いが難しいとされているのだ。


「見た目は凄い好きだし、持ち武器にしたいくらいだけど」


「まあ、ナワバリならそこそこ使えるんじゃない? 使ったことはないけど」


(コメント)

・まあ、世の中にはマイナー武器でランキング上位に食い込む奴もいるしな

・使いこなせれば強い(使いこなせるとは言ってない)

・ハクちゃんのセンスやいかに

・どうせならアカリちゃんも鉛筆持とう

・地獄かな?


「流石に同じ武器を持つのは味方に申し訳ないから、私は普通にシューター持つわ」


「じゃあ、これで行くね」


 武器を鉛筆に持ち替え、マッチングを開始する。まもなく決まり、試合が始まった。

 ステージはスーパー、なのかな? 屋内のステージである。

 ここも、チャージャーが有利なステージではあるけど、横にも広いので、橋よりはましかもしれない。


「案外塗りは強いね」


 チャージャーは、基本的に塗りが弱い。

 長い距離を一気に濡れるという点は強いが、チャージしないとまともに濡れないから、瞬間的な足場塗りなどができず、塗りは味方に任せることになると思う。

 今回の味方は、筆とローラー。一夜ひよながシューターということを考えると、塗りはそこそこだろうか。

 私は、適度に塗りつつ、高台へと移動する。

 使うのは初めてだけど、撃っている感覚は面白かった。


(コメント)

・まずは一キル

・よく当てられるなぁ

・これは相手のローラーぶち切れかな?

・あからさまにこっち狙ってきてるね


 相手の一人に、ローラーの中でも重量級の武器を使う人がいたんだけど、重量級だけあって、かなり隙が大きい。

 なので、当てやすくて無意識に狙ってしまっていたんだけど、怒らせてしまったかもしれない。

 まあ、むきになって突っ込んできてくれた方が狙いやすいから、ありがたいっちゃありがたいんだけど。


(コメント)

・アカリちゃんもめっちゃキルしてる

・相手がシューターばっかりだから撃ち合いになるね

・射程はこっちの方が長いから、落ち着いてたら倒せる

・段差に登られると案外当たらないけどな


 一夜ひよなが使っているのは、相手を二発で倒せる長射程の武器だ。

 基本的なシューターは、倒すのに三発、あるいは四発必要なことが多いので、二発で倒せるこの武器は、結構強い部類に入る。

 ただし、その分動きは遅いし、弾もめちゃくちゃぶれるので、最大射程で当てられるかどうかは運になるけどね。

 私も、昔はよく使っていた気がする。今は使ってないけど。


「……ん?」


 ふと、味方の一人が目の前を横切った。

 まあ、ここは自陣近くの高台だし、通ること自体はよくあることなんだけど、どうにも様子がおかしい。

 というのも、私の前から動こうとしないのだ。

 このゲームは、フレンドリーファイアはないが、当たり判定自体は存在する。だから、味方に弾が当たってしまうと、その先にいる敵に当てることができない。

 これは、明らかに妨害しているように感じる。一体何のつもりだ?


(コメント)

・なんやこいつ

・利敵?

・こいつ、開幕時陣も塗らずに突っ込んでやられてた奴だよな

・お、利敵か?

・ハクちゃん相手に何やってんだこいつ


「利敵って何?」


「今みたいに味方の邪魔をしたりして、敵が有利になるように行動することね」


 なるほど、要は裏切り行為ってことか。

 しかし、なんでそんな真似をするんだろう? 確かに、負けても特にペナルティはないとはいえ、勝った方が多くのポイントを貰えるし、わざわざ負けようとする理由はないように思えるんだけど。


「多分だけど、ハクが鉛筆を使ってるからじゃない? 使いこなせてないと、それが原因で負けることもよくあるし」


「でも、今のところそこそこキルは取ってるつもりだけど?」


「相手の画面からじゃ正確にわからないから、置物と化してると思ってるんじゃない? あんまり場所を移動してないから、芋砂と思われたのかも」


「なるほど」


 確かに、このゲームで芋砂はあんまり褒められた行為ではない。

 エイムに自信があり、一方向を完全にシャットアウトできるって言うならまだ意味があるかもしれないが、そうだとしても満遍なく広い範囲を見るのが普通だ。

 特に、芋砂になった挙句、普通に敵を通しちゃいましたじゃそこにいる意味はないわけで、それはいわゆる戦犯として見られることも多い。

 この人は、私がそんな戦犯行為をしていると思って、こうして注意をしようとしているわけだね。


(コメント)

・確かに鉛筆が味方に来たら萎えるけど、利敵はダメだろ

・別にハクちゃん仕事してないってわけじゃないし、むしろ仕事しまくってると思うんだが

・むしろ、この筆の方が仕事してないだろ。パッと見てただけでも、開幕一分で7デスくらいしてるぞこいつ

・突っ込んではやられてを繰り返してむしゃくしゃしてたんやろな

・考えなしに突っ込む奴が一番邪魔


 コメント欄も何となく荒れてきている気がする。

 まあ、注意という意味で邪魔してるならまだ理解できなくはないけど、そうやって邪魔している間、前線の味方は人数不利を押し付けられるわけで、どっちが戦犯かと言われたら目に見えている。

 別に、私は楽しくできれば勝敗は気にしないからいいけど、配信で流してしまった以上、この人のことが少し心配だなぁ。

 でも、今更配信を止めるわけにもいかないし、このまま続けるしかない。

 私は、わずかな不安を抱えつつ、プレイを続行するのだった。

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[一言] イカってキックできないのかな
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