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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第八章:再びの里帰り編
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第二百二十二話:再走配信

 それっぽい手袋を買ってきて、ひとまずゲームをプレイしてみた。

 確かに、押す時の感覚がいつもと違うっていうのはあったけど、思ったよりは支障はないかな。

 元々、目に身体強化魔法を使った時は、相当動きがゆっくりに見えるし、猶予が1フレームだけとかでもない限りは、余裕で間に合うと思う。

 しばらくやっていたら手袋の感覚にも慣れたし、これなら普通にプレイもできそうだ。

 これで、プレイに関することはオッケー。後は配信の内容だけど。


「謝罪はしないって方向でいいんだよね?」


「うん。まあ、遅くなったことに対する謝罪はしてもいいかもしれないけど、チートを使ってたんじゃないかってことに対しては、謝らなくていいよ。事実無根なんだし」


 日本人としては、相手が怒っているのなら、自分が悪い悪くないに拘わらず、とりあえず謝っておこうと思ってしまうけど、それは相手を余計につけ上がらせるだけだ。

 もちろん、こちらに落ち度があるなら、精一杯謝罪するべきだけど、こちらが全く悪くないことを、言いがかりのように悪いと言い張っている相手に謝るのは違うだろう。

 何が悪いのか、しっかり見極めて行かないと、損をすることになる。

 だから、不用意に謝るのはなしだってことだね。


「わかった。手元のカメラに関しては、そっちに任せていい?」


「うん、大丈夫。気にせずプレイしてね」


 私の手元を映すカメラは、机に固定して、手元だけが見えるように調整している。

 この位置だと、ちょっとぶつけただけでカメラの角度が変わり、顔が映ってしまうかもしれないという可能性もなくはないが、そこらへんは一夜ひよなにフォローを頼んである。

 万が一の時は、すぐに配信を切ってくれることだろう。

 そもそも、そんな事態にならないとは思うけどね。


「それじゃあ、始めようか」


「頑張って、ハク兄」


《頑張ってください、ハクお嬢様》


 みんなに見守られながら、私は配信開始のボタンを押す。

 すでに待機していた人達がいたが、配信が始まったとたん、そのコメントの速度は爆増した。


(コメント)

・きちゃー!

・待ってたぜー

・こんハク

・ハクちゃーん!


「妖精の皆さん、こんハクです」


 視力がいい私でも、うっかり見逃しそうになってしまうほどの速度にちょっぴり面を食らったが、すぐに態勢を整える。

 初めからプレイ画面を映してもよかったんだけど、流石にそれだと事情を知らない人が混乱しそうなので、まずは状況説明から入ることにした。


「約二週間ぶりかな? なかなか配信できなくてごめんね」


(コメント)

・気にしないで

・無理せず毎秒配信して

・今日はどんな枠なの?


「ここ二週間の間、私はパソコンやスマホに触れない状態だったんだけど、なにやらトラブルがあったらしくてね。それに関する今後の方針を話そうかと思って」


(コメント)

・ああ、あのアンチ共か

・確か、ハクちゃんがチート使ったみたいな話だっけ?

・ハクちゃんのプレイスキル見てたらそんな感想浮かぶはずもないんだがな

・このチート野郎!

・なんか露骨なのいるし


 コメント欄が落ち着いてくると、これ見よがしと言わんばかりにそう言ったコメントが書かれ始めた。

 ほとんどの人は私のことを信じてくれているみたいだけど、そうでない人もそれなりの数いるようで、ところどころ目に付く。

 ちょっと悲しいけど、まあそう思われても仕方のないプレイをしたのは私だしね。

 ここはしっかり潔白を証明していくとしよう。


「問題点は、私が以前のRTA配信で、チート、もしくはツールの類を使ったんじゃないかって話みたい。もちろん、私はそれらは使ってないけど、みんなから見ると、使っていても不思議じゃないくらいにうまかったってことなんだよね?」


(コメント)

・うまいなんてレベルじゃない

・練習二日であれは最強

・練習二日であんなにできるわけないだろ

・もっと練習すれば世界取れそう

・知り合いのRTA走者に聞いたけど、エイのところとか相当な操作精度が必要だって言ってたぞ

・このチート野郎!


「うまいと思われていたなら、私としては嬉しいんだけど、いつまでもチート疑惑をかけられるのは、『Vファンタジー』にも申し訳ないから、今回は、もう一度RTAに挑戦して、潔白を証明していこうと思うよ」


(コメント)

・証明って、どうやるんだ?

・パソコン画面見れば、ツールの類が動いているかどうかはわかるけど、公開するの?

・これで前回より明らかに下手だったら、わかってるよな?

・このチート野郎!


「一応、手元を実際に見せようと思ってるよ。後は、パソコンを見せればいいの? ひ……アカリちゃん、できそう?」


「ちょっと待ってね……うん、見せてもいいって。画面の端っこに載せときましょうか」


(コメント)

・さらっとアカリちゃんいるの草

・そりゃ姉妹ですしおすし

・これで言い逃れはできなくなったな

・いや、ハクちゃんならこれでも余裕でしょ


 一夜ひよながパソコンをカタカタといじくると、配信画面にパソコンの画面が表示される。

 今映っているのは、録画ソフトくらい。

 あんまり、こういう裏側を見せるのはダメな気がするけど、まあ、今回は仕方ないだろう。

 それと同時に、手元を映すためのカメラも起動する。

 配信画面に私の手元が映し出され、コメントが沸いた。


(コメント)

・おてて!

・え、めっちゃ小さいじゃん

・ハクちゃん小学生くらいじゃなかったっけ?

・見た目はな

・あ、手を振ってくれてる。尊い……

・こんな小さい手でコントローラー握れるのかな


 見ればわかるけど、私の手は結構小さい。

 そりゃ、一桁歳の体から成長してないんだから、小さいのは当たり前なんだけど。

 コメントでも言っていたが、この手だと、コントローラーを握るのが地味に難しい。

 届かないことはないんだけど、場合によっては押しにくい時もあったりして、微妙に難易度が上がっている気がする。

 まあ、誤差程度だけどさ。


「これで大丈夫かな? やるのは以前と同じゲーム。あれからあんまり練習できてないけど、それなりの走りはできると思うよ」


(コメント)

・期待

・失敗しろ!

・それなりどころか記録更新しそう

・これで前より早かったら認めてやるよ

・上から目線なコメント多いな


「それじゃ、よーいスタート」


 ゲーム画面を開き、以前と同じルールでRTAを開始する。

 悪いけど、ここでアンチにつけ上がられると困るので、今回は本気だ。

 いや、以前も本気じゃなかったわけではないけど、今回はより本気で行きたいって感じ。

 あれからあんまり練習していないとはいえ、動きやルートは頭の中に入っている。

 事前の練習もしたし、よほど大きなミスがなければ、同じくらいの記録は狙えるだろう。

 私は休憩時間中に目に身体強化魔法をかけ、記録に挑むのだった。

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