第百八十七話:報告と家探し
去っていくメーガスさんを見ながら、今後の展開について考える。
とりあえず、メーガスさんとメルトさんがこちらの世界に来るのなら、居場所が必要になるだろう。
竜の谷で暮らしてもらうのもいいけど、流石にあそこだと暮らしにくそうだし、別に場所を用意した方がいいかもしれない。
私の家でもいいけど……ヴィオのことを考えると、この大陸の方が都合がいいかな?
メリッサちゃんの要望を考えると、ヴィオの森にほど近く、暮らしやすい場所ということになりそうだけど、そもそもヴィオの森にほど近い場所はみんな毒に侵されている。
そうでなくても、高い山脈に囲まれた場所だし、どうやって暮らせばいいんだろうか?
まあ、そのあたりはお父さんとかに相談したらいいだろう。
というか、ダメだったら、最悪転移魔法陣を描けば、場所は関係なくなるし。
〈ふぅ、すっきりした。いいものが見れたわ〉
〈お疲れ様です。あれでよかったんですか?〉
〈ええ。元々戻る気はなかったけど、上姉様と離れるのは、ちょっと寂しかったしね。余計なのまでついてくるのは癪だけど、三人で一緒に暮らせるなら、これ以上のことはないわ〉
メリッサちゃんがいた国には申し訳ないけど、ここにメリッサちゃんが来た時点で、私はメリッサちゃんの味方になった。
どうか、崩壊せずに残ってくれたらいいと思う。
まあ、まだ来ると決まったわけではないけども。
〈どこか住みたい場所はありますか?〉
〈ヴィオの近く、って言いたいけど、それは難しいんでしょ?〉
〈まあ、そうですね。一応、すぐに会いに行くことはできると思いますが、それじゃあだめですか?〉
〈ま、仕方ないわよね。ヴィオの毒は、私には通用しないけど、姉様達はどうかわからないし、一緒に暮らすなら少しは自重しないと〉
最初は、あんなにヴィオと離れたがらなかったのに、成長したものである。
いや、それだけ信用できるものが増えたというべきだろうか。
今でもヴィオと一緒にいたがっているのは確かだが、私やエルなんかが連れ出そうとしても、特に抵抗しなくなった。
他の竜達はまだ慣れていないかもしれないけど、この調子で慣れて行けば自立することも可能かもしれない。
まあ、ヴィオの話し相手になって欲しいって言うのはあるし、このままでも問題はないだろうけどね。
〈ハク、あなたも一緒に住む?〉
〈申し訳ないですけど、私にはすでに自分の家があるので〉
〈そっ、まあ、会いに来てくれたらそれでいいわ。これからもよろしくね〉
〈はい、よろしくお願いします〉
さて、とりあえずの目標は達したし、お父さんに報告かな。
私はみんなを連れて、竜の谷へと転移した。
〈……そうか。まあ、問題はないだろう〉
お父さんに報告すると、若干呆れたような目で見られてしまった。
なんでそんな目で見るんだろうか。まるで、またやったか、みたいな。
でも、デメリットはそんなにないように思える。
他の二人が来た後、次元の歪みを閉じてしまえば、もう異世界の魔物が入り込んでくることはないし、あちらの国から報復される心配もない。
こちらはカオスシュラームに関する切り札を手に入れ、何の問題もないように思える。
問題があるとしたら、衣食住と言葉くらいだろうか。
それらが整うまでは大変かもしれないけど、人員はいるし、言葉は私が教えるつもりだから、特に問題はないように思えるけど。
〈それで、どこに住ませるつもりだ?〉
「まだ決めかねています。竜の谷、では危険でしょうし、そこらの町に、というのもまだ早いでしょうし」
最悪私の家でもいいけど、流石に部屋が足りない。
三人まとめて一部屋でいいなら、来客用の部屋があるけど、流石に大所帯過ぎる。
言葉を教えるという意味ではいいかもしれないが、お姉ちゃん達にも聞いてないし、何よりユーリが反対しそうだ。
楽なのは、王都のどこかに家をもう一軒買って、そこに住んでもらうとかだろうか?
新たに未開の地に家を建てるよりも、そっちの方がよっぽど簡単だし。
こっちの大陸がいいなら、ホムラが懇意にしているエルクード帝国辺りで探せば何とかなるかな。
〈奴らが未知の存在であることは事実だ。あまり油断しすぎるなよ〉
「わかっております。と言っても、そこまで警戒しすぎる必要はないと思いますが」
〈それはそうだが……とにかく、手元近くに置いておけ〉
「わかりました」
となると、やっぱり王都かなぁ。
後でいい家がないか聞いておくとしよう。
〈メーガスとやらは、いつ頃戻ってくると言っていた?〉
「特に聞いておりませんが」
〈ふむ……わかった、また現れたら伝えよう。ハクは拠点を探しつつ、待機していていてくれ〉
「了解です」
ひとまず、残りのことはメーガスさんが戻って来てからということで、報告は終わった。
さて、とりあえず王都に戻ろうかな?
最近は、ずっと竜の谷にいたし、全然王都に顔を出せていない。
一応、お姉ちゃん達と王様にはしばらく離れることを伝えに行ったけど、ずっと戻らないのも心配させちゃうしね。
メリッサちゃんの家も見つけてあげないといけないし、早めに戻るとしよう。
「お帰りなさいませ、ハクお嬢様。どうでしたか?」
「とりあえず、メリッサちゃんの家を見つけつつ、待機。だから、一回王都に戻ろうと思うよ」
平原に戻り、エルに事の次第を報告する。
さて、戻るのはいいけど、メリッサちゃん達はどうしようか。
流石に、ヴィオと一緒に王都に戻ることはできない。メリッサちゃんはできれば連れて行きたいけど、嫌がるだろうか。
一応、家は自分で決めてほしいから、連れて行きたくはあるんだけど。
「メリッサちゃん、一緒に来る?」
「***」
こちらの言葉をわかっているのかはわからないが、メリッサちゃんは私の手を取った。
どうやら、一緒に行ってくれるらしい。
これ、せめてはいといいえくらいは覚えさせた方がいいだろうか? いや、どっちにしろ言葉がわからないから判断できないか。
早いところ、言葉も教えたいところである。
「ヴィオ、落ち着いたらまた来るから、しばらくメリッサちゃんを借りるね」
〈わかりました。どうかよろしくお願いします〉
しばらく竜の谷に待機する必要もなくなったので、ヴィオも森に帰ってもらうことにした。
もちろん、今でも異世界からやってくる魔物はいるかもしれないが、それに関しては竜や精霊が監視しているし、隔離くらいならすぐにできるだろう。
万が一にも、カオスシュラームが溢れ出さないようにする必要はあるけど、竜達なら空間魔法も使えるし、多分大丈夫だと思う。
「それじゃあ、帰ろうか」
そう言って、私達は王都に向かって転移する。
さて、これからどうなることやら。
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