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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第六章:人工神とエンシェントドラゴン編
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第百八十三話:巻物の内容

 平原へと戻り、メリッサちゃんと合流する。

 メリッサちゃんは、ヴィオに体を預けながら、なにやらぶつぶつと呟いていた。

 私が近づいても気が付かないほどで、よっぽど先程の出来事が気にかかっていると思われる。

 知り合いだったのかな? まあ、連れ戻そうとするなら知り合いが来てもおかしくはないけど。


「メリッサちゃん?」


「****……」


 話しかけても反応しないので、仕方ないから竜神モードへと変身する。

 この姿なら、流石に気づくだろう。案の定、いきなり目の前に現れた巨体に、メリッサちゃんは目を白黒させていた。


〈え、なに、どうしたのハク?〉


〈どうしたもこうしたも、聞きたいことがあるので答えていただけませんか?〉


〈ああ、うん、そうね。あの人のことよね〉


 そう言って、メリッサちゃんはあの女性について話し始めた。

 まず、あの女性だが、何とメリッサちゃんの姉らしい。

 メリッサちゃんと同じく、複合神であり、同じ国で生活していたようだ。

 ただ、メリッサちゃんと違って働き者であり、国からの評価は雲泥の差があった。

 常に比べられていたこともあり、その反抗心から意地になっていた部分もあるようだ。


〈あの人、意地悪なのよ。いっつも私にちょっかいかけては笑っていたわ〉


 働き者である一方、メリッサちゃんにちょっかいをかけるのが好きらしく、いきなり背後から大きな声を上げたり、お菓子を盗ったり、そんないたずらじみたことをよくされていたらしい。

 そのせいで、メリッサちゃんの中では、あの女性は嫌いな部類に入るのだとか。


〈私にはもう一人姉がいるんだけど、そっちは優しい人だったわ。私が島流しされるってなった時も、最後まで庇ってくれたしね〉


〈そうだったんですね〉


 どうやら三姉妹であり、メリッサちゃんが一番下で、あの女性が次女、そして、その庇ってくれたという優しい姉が、長女と言うことらしい。

 姉妹揃って複合神なのは驚きだけど、メリッサちゃんの世界だったらそう珍しいことではないのかもしれない。

 庇ってはくれたが、結局押し切られてしまい、メリッサちゃんは島流しに遭い、この世界に辿り着いた、と。

 となると、次女がこの世界に来たのは、どんな目的があるんだろうか?


〈巻物が残されていましたが、読むことはできますか?〉


〈ちょっと待って。……ああ、そういうこと〉


 巻物をメリッサちゃんに見せてみると、なんだか面倒くさそうな顔でそう言った。

 内容を簡単に言うと、戻ってきてほしい、と言うことらしい。

 と言うのも、メリッサちゃんが島流しにされた後、長女がストライキを起こしたようだ。

 メリッサちゃんがいないなら、この国から出ていくと、強く主張したらしい。

 長女は、次女よりも働き者である上に、その優しい性格から、国の上層部からもかなりの人気があった。

 戦力的にも、癒し枠的にも、長女にいなくなられては困るということで、仕方なくメリッサちゃんを捜索することになったらしい。

 そして、次女はどうせこんなことになるだろうと思っていたらしく、メリッサちゃんに発信機的なものをつけていたようだ。

 それを追って、この世界までやって来て、メリッサちゃんのことを探していた、と言うことらしい。

 なんか、なんだかんだで次女にも愛されているのでは? ちょっかいかけるのも、好きの裏返しなのかもしれない。


〈メリッサちゃんは、戻る気はあるんですか?〉


〈ない。上姉様のことは心配だけど、あの人なら私が居なくてもやっていけるでしょ〉


〈でも、戻らない理由はなくなったのでは?〉


 元々、メリッサちゃんが元の世界に戻らないと言った理由は、国に戻れないからだ。

 複合神と言う、特殊な立ち位置にいるメリッサちゃんは、下手に他の国に仕えようものなら報復される可能性もある。

 どうせ戻れないのなら、助けてくれたヴィオと共に暮らしたい、と言うのが理由だったはず。

 しかし、国が戻ってきてほしいと言っているなら、戻れないってことはないだろう。

 もちろん、一度は島流しにした国である。今後も、そう言ったことがないとは言えないが、長女が強く主張するだけで手のひらを返すような国なのだから、少なくとも、その長女が生きている限りは下手な扱いはされないはずである。

 むしろ、国は気まずさもあって、メリッサちゃんのことをより一層大切に扱うのではないだろうか?


〈別に、国が困ろうが知ったこっちゃないわ。私は違うって言ったのに、無理矢理押し通してきた国が悪い。下手したら、私はとっくに死んでいたでしょうしね〉


〈まあ、それはそうですが……〉


〈とにかく、私は戻らない。特に、下姉様を見たらますます戻る気がなくなったわ〉


〈そんなに嫌いなんですね……〉


 なんとも可哀相な次女である。

 しかし、そうなると、次女との戦闘は避けられなさそうだ。

 あの時、攻撃してきたのは、十中八九次元の歪みを閉じさせないためだろう。

 閉じてしまったら、その時点でメリッサちゃんの意志がどうであれ、帰ることはできなくなってしまうわけだからね。

 ついでに言うなら、次女も帰れなくなってしまうだろうし、止めるのは当然と言える。

 しかし、連れ戻すのが目的なのに、結局メリッサちゃんが帰らない選択をするとなると、次女は無理矢理にでも連れて帰ろうとするんじゃないだろうか?

 次女がメリッサちゃんのことをどう思っているのかはわからないけど、私のイメージ的には恐らく心配でわざわざここまで来たんだろうし、何が何でも連れて帰ろうとする気がする。

 メリッサちゃんが自分で決めたこととはいえ、傍から見たら、私達が何かを吹き込んだから帰らない選択をしたのではないかと思われても仕方ないし、こちらに攻撃を仕掛けてきてもおかしくない。

 当然、次元の歪みを閉じるのも妨害してくるだろうし、次女を何とかしない限り、次元の歪みを閉じることはできないだろう。

 なんとも面倒なことになった。

 メリッサちゃんを、強引にでも送り返すというのであれば、次女とも協力できるかもしれないけど、それだとメリッサちゃんを敵に回しそうだし、私としては、会ったばかりの次女よりも、メリッサちゃんの方が大事である。

 だから、無理矢理送り返すという選択肢はないね。


〈でも、そうなると、説得する必要がありそうですね〉


〈問答無用で次元の歪みに叩き込んでしまえばいいわ。そうしたら、私がすぐに閉じちゃうから〉


〈そんなんでいいんですか?〉


〈いいの。あんな奴と一緒に帰るなんて御免だわ〉


〈あはは……〉


 とりあえず、再び次元の歪みを探すところから始めることになるだろう。

 次女を説得するとしても、強引に押し切るとしても、どのみち会うためには次元の歪みを見つけなければいけないわけだし。

 素直に説得に応じてくれたら楽なんだけど、果たしてどうなることやら。

 私はどう説得しようか考えつつ、その時が来るのを待つことにした。

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