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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第六章:人工神とエンシェントドラゴン編
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第百八十一話:奇妙な女性

 しばらくして、メリッサちゃんが戻ってきた。

 お腹がすいているのか、ヴィオの背中に乗って、生えている茸をかじっている。

 だからそれ毒……いや、もう気にしなくていいのかもしれない。実際、ヴィオも気にしてないみたいだし。


〈お待たせしましたな。これから竜の谷に行くとのことで、吾輩も同行してよろしいのですかな?〉


「まあ、うん、大丈夫。うまくすれば、そんなに長い時間はかからないと思うし、メリッサちゃんの側にいてあげて」


〈了解です。ほれ、メリッサ殿、行きますぞ〉


「***」


 なんか物欲しそうに見ていたから、【ストレージ】の保存食を渡す。

 一応、【ストレージ】には、いざと言う時にどうにかできるように、大量の食料を入れてあるんだけど、ここ数日で結構減ってしまったな。

 足りなくなるってことはないと思うけど、そのうち補充しておいた方がいいかもしれない。


「さて、じゃあ、転移」


 みんなの魔力を使わせるのももったいないので、私が全員転移させる。

 もう、何度も転移しているけど、今の私なら、これくらい消費してもまだまだ余裕がある。

 と言うか、本当に底があるんだろうか。竜珠に大部分を封じていてこれだから、まじで底なしの可能性がある。

 あの修業は無駄じゃなかった、と言えば聞こえはいいけど、こんなにいらないんだよなぁ。


〈お、来たな。お疲れさん〉


「ホムラ、どうしたの?」


 竜の谷へ戻ると、ホムラが待っていたかのように出迎えてくれた。

 さっきは、姿が見えなかったのに、なんで今になって?

 疑問に思いつつも、とりあえず平原へと降りる。

 ヴィオを連れてくるのはいいけど、竜の谷の中へ入れることはできないからね。


〈いや、ちょっと妙なことがあってな。一応伝えておこうかと思って〉


「妙なこと?」


〈ああ〉


 そうしてホムラは説明を始める。

 まず、ホムラだけど、お父さんの命令を受けて、各地の竜に指示を出しつつ、自らも異世界の魔物の保護に向けて動いていたようだ。

 それで、魔物が人里に近づかないように見張っていたところ、魔物が一人の女性に襲い掛かる場面を目撃したらしい。

 これはまずいと思って助太刀に入ろうと思ったが、その女性は臆することなく何かを払うような仕草を見せると、その瞬間魔物は真っ二つに切り裂かれ、死亡したという。


「その人、何者なの?」


〈わからん。だがまあ、聖教勇者連盟とかもいるし、そういうことができる奴がいないことはないだろう。妙だと思ったのは、この後だ〉


 切り裂かれた魔物は、しばらくして真っ黒に染まり、黒い靄を吐き出し始めたのだという。

 それは、まぎれもなくカオスシュラームであり、これはとんでもないことが起こったと、ホムラは慌てて報告に戻ったそうだ。

 しかし、報告を終えて、戻ってきた時には、カオスシュラームの痕跡はなくなっていたらしい。


「なくなっていた?」


〈ああ。魔物の死体もなかったし、当然女もいなかった。辺りに汚染された様子の泥なんかもなかったし、まるで初めから何もなかったかのような状態だった〉


 カオスシュラームは、増殖する性質がある。

 少し目を離した程度でも、その増殖力は目を見張るものがあるし、確実に辺りの環境を飲み込んでいたはずだ。

 それなのに、戻った時には何もない。むしろ、戦った痕跡すら残されていなかったという。


「考えられるとしたら、その女性が何かしたかってところかな」


〈多分な。一応、リュミナリア様にも報告したが、今のところそいつは見つかっていない。それも含めて、妙な話だろ?〉


「確かに、それは妙だね」


 それほどの強者なら、魔力は多いだろうし、精霊が注目しないはずがない。

 ホムラが容姿とかを正確に報告しているなら、見つかるのは時間の問題だろう。

 それがないってことは、精霊がいない場所にいるか、あるいは精霊すら近づかないような異質な存在かってことだ。

 一瞬、神様かとも思ったが、神様の多くは地上に降りることを許可されていない。

 逆に言えば、一部は許可されているのだから、そう言った神様かなとも思ったけど、神様がわざわざ地上に降りてきて、カオスシュラームの除去を手伝ったりするだろうか?

 そりゃ、パドル様とかは優しい神様ではあるけど、基本的に、そう言った雑務は天使の仕事である。神様自身は動かず、ただ指示を出すのが普通だ。

 あえて手を貸しに来た理由がわからない。そもそも、カオスシュラームの件を把握していることもおかしいし。

 今回の件をすべて知っているんだろうか。まあ、神様なら何かしらの方法で知っていてもおかしくはないけども。


「このこと、お父さんには?」


〈リュミナリア様と一緒に報告したよ。一応、警戒はするけど、今のところは放置するしかないってさ〉


「まあ、それはそうか」


 お母さんの監視を潜り抜けられるほどなんだから、どうしようもない。

 一応、カオスシュラームの除去ができるという前提で進めるなら、味方と言う考えもできるけど、もしかしたらまたマキア様のようにやらかした神様が、秘密裏に解決しに来た可能性もある。

 そうなった時、下手に介入すれば敵になる可能性もあるだろう。

 その辺は、慎重に事を運ぶ必要がありそうだね。


〈そっちは、ここで待機するんだったか?〉


「うん、次元の歪みが見つかり次第、転移していくつもり〉


〈気をつけろよ? さっきの女も得体が知れない。もしかしたら、敵になる可能性もあるんだからな〉


「わかってるよ。もしもの時は、ホムラを頼るね」


〈おう! 任せとけ!〉


「私もついておりますから、心配しなくても大丈夫ですよ」


 まあ、その女性のことは頭の片隅に置いておくとして、今は転移についてである。

 一応、私はこの大陸なら割といろんな場所に行っている自信はある。

 記憶力のおかげか、一度行ったことある場所なら大抵は向かうことができるし、目印さえあれば、正確な転移も可能だろう。

 後は、そう言ったわかりやすい場所にうまい具合に次元の歪みが来てくれるかどうかだ。

 最悪、時間経過で消滅する可能性があるにしても、できれば早めに決着をつけておきたいところである。


「メリッサちゃん、頼みますよ?」


「***」


 何を言ってるのかわからないが、得意げな顔でふんぞり返っているから、任せておけって感じなんだろう、多分。

 この問題が片付いたら、本格的にメリッサちゃんの処遇について考えないといけないね。

 ヴィオと暮らすか、それとも離れて暮らすか、あるいは、元の世界に帰るのか。

 最後のは恐らくないにしても、前者二つも相当厳しいことに変わりはない。

 何かうまい手を思いつければいいんだけどね。

 そんなことを頭の片隅に置きつつ、次元の歪みが現れるのを待つのだった。

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[一言] メリッサさんの元同僚かな
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