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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第六章:人工神とエンシェントドラゴン編
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第百七十八話:異世界の魔物の危険性

〈何をそんなに焦ってるの? ハクなら、そんな魔物いちころでしょ?〉


 メリッサちゃんは、いまいち事の重大さに気づいていない様子だ。

 カオスシュラームの危険性は十分わかっているはずだが、どうにかなると思っているんだろうか?


〈もし、カオスシュラームが流出したらと思うと、気が気じゃないんですよ……〉


〈カオスシュラーム? ああ、あの瘴気のこと? 確かに厄介ではあるけど、ハクなら余裕で浄化できるでしょ?〉


〈できるかもしれませんけど、今地上でカオスシュラームに対処できるのは私くらいしかいないんですよ。もし対応が遅れれば、世界中が混乱の渦に落ちます。だから、焦ってるんです〉


〈ふーん。まあ、確かに一人しかいないんじゃ、焦りもするか。私が手伝おうにも、それでも二人だしね〉


 カオスシュラームは強い神性を嫌う。

 だから、神様もどきである私や、複合神であるメリッサちゃんにかかれば、多少の浄化はできるだろう。

 特に、メリッサちゃんは、ついこの間まで本職だったのだ。処理の方法くらい心得ているだろう。

 だが、いくら何でも、たった二人で世界中をカバーするのは無理がある。

 メリッサちゃんのいた世界では、複合神を作る技術が割とありふれていて、各国に複合神は存在していたらしい。

 だから、どこで出現しようとも、対処できる人員がいたのだ。

 でも、この世界にはそれはない。一度流出すれば、止めるのは相当難しくなる。

 せめて、カオスシュラームの流出条件がわかればいいんだけど。


〈メリッサちゃん、そちらの世界の魔物は、皆カオスシュラームを持っているんですか?〉


〈いや、そういうわけではないよ? 持っているのもいるけど、持っていないのもいる。半々くらいかな〉


〈それを見分ける方法はありますか?〉


〈見ればわかるよ。瘴気を持っている奴は、そのオーラを纏ってるから、わかりやすい〉


〈オーラ、ですか〉


 確かに、魔力とかでも、強い力を秘めている人は、それがオーラとなって見えることはよくある。

 となると、カオスシュラームも同じような性質を持っているってことなのかもしれない。


〈カオスシュラームを持っている魔物を倒したら、問答無用で流れ出してしまうんですか?〉


〈そういうわけじゃないよ。なんて言えばいいのかな……瘴気を纏ってる魔物は、体内に瘴気を貯めておく袋みたいなものがあるの。で、それを破っちゃうと、溢れてくる。だから、破らないように倒せば、流れ出すことはないよ〉


〈その袋の場所は決まってるんですか?〉


〈魔物によって様々かな。まあ、最悪流れ出しても、すぐに消しちゃえば何とかなるけどね〉


 イメージ的には、イカとかが持つ墨袋みたいなものだろうか?

 特定の部位を破壊しない限りは、倒しても問題ないってことなんだと思う。

 それなら、まだ捕獲するハードルは下がるかな。傷つけなければ、出てくる心配はないわけだし。


〈後は、カオスシュラームを持っている魔物に近づいても、闇の眷属に堕ちることはないですか?〉


〈近づくだけじゃならないよ。確かに、瘴気を纏っていて不気味ではあるけど、そのオーラに触れても特に何も起こらないし。袋を破壊しない限りは、感染はしないんじゃないかな〉


〈それなら、捕獲命令は取り下げなくて大丈夫そうですね……〉


 いくら安全を確認してからと言っても、万が一と言うこともありえたしね。

 本職の人に、それはないと言って貰えるなら、だいぶ信憑性が上がる。

 竜が闇の眷属に堕ちたら大変だからね。用心するに越したことはない。


〈ハクは、魔物の流出を止めたいの?〉


〈そうですね。このままこの世界に溢れられても困りますし……〉


 もし仮に、やってくる魔物がカオスシュラームを持っていなかったとしても、新種の魔物が増えるわけだから、こちらの世界としては十分脅威になる存在である。

 強さだってはっきりしていないし、もしかしたら竜より強いなんてこともあるかもしれない。

 そうなったら、その魔物が現れた地域は大損害を負うことになる。

 なんとしても、次元の歪みを閉じなければならない。


〈そう言えば、メリッサちゃんは、次元の歪みの閉じ方は知っていますか?〉


〈んー、まあ、知ってるっちゃ知ってるよ。やったことはないけど〉


〈なら、もし見つけたら、閉じるのを頼んでもいいですか?〉


〈……まあ、いいよ。見つけたらやって上げる〉


 ちょっと間があった気がしたが、メリッサちゃんは引き受けてくれた。

 やったことがないというのは不安だけど、やり方を知っているのは今のところメリッサちゃんだけだし、頼るしかない。

 後は、うまい具合に次元の歪みが見つかればいいんだけど……。


〈またお腹すいてきちゃった。もうこれくらいでいい?〉


〈あ、はい、ありがとうございました〉


 数十分程度だったが、メリッサちゃんにとっては十分長い時間だったらしい。

 また、よくわからない言語を話し始めたので、私も元の姿に戻る。

 話せるのはいいけど、竜神モードにならないと話せないのは問題だよなぁ。

 翻訳魔法、みたいなものがあればいいんだけど、そもそも異世界の言語を知らないので、学習するのは難しそう。

 まあ、時間かければ、メリッサちゃんから教えてもらえば、覚えることはできるかもしれないけどね。

 しばらくは、言葉が通じない不便を受け入れるしかないかもしれない。


〈おお、戻ってこられましたな〉


 お腹がすいたというメリッサちゃんを連れて、皆のところへと戻る。

 メリッサちゃんには、【ストレージ】から取り出した保存食を上げて、先程話した内容を伝えた。


〈なるほど。エル殿からも話を聞きましたが、かなり厄介な状況になっているようですな〉


「うん。ちなみにだけど、ヴィオは次元の歪みがどこにあるのかわかったりしないよね?」


〈流石にわかりませんな。見ればピンとくるやもしれませんが、今のところはさっぱり〉


「だよね。無理言ってごめんね」


 世界各地に出現しているらしいし、足で探すのは不可能に近い。

 もし見つけられるとしたら、それはお母さんの精霊ネットワークくらいだろう。

 精霊が行けない場所でなければ、かなり速い速度で知らされるらしいから、もしかしたら、すぐにでも見つかるかもしれない。

 まあ、こちらでも探す努力はした方がいいかもしれないけどね。

 エンシェントドラゴンのみんなも頑張ってくれているようだし、私も頑張らないと。


「ひとまず、また報告しなくちゃかな」


 なんだか、さっきから転移してばかりなような気がするけど、これは仕方ないだろう。

 私はともかく、エルやアリアは魔力の残量の心配もあるし、今度は私だけで行った方がいいかもしれない。

 まずは、うまい具合に次元の歪みが見つかること、それを祈ることにしよう。

 そう思いながら、竜の谷へ行く準備を始めた。

 感想ありがとうございます。

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