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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第六章:人工神とエンシェントドラゴン編
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第百七十六話:奇妙な魔物

「なるほど、そういう事情があったんですね」


 お昼ご飯を用意しつつ、先ほどの出来事をエルとヴィオに報告する。

 まあ、エルは途中から私が竜神モードになっていたことには気づいていたようで、近くで聞いていたらしいんだけどね。

 おかげで、スムーズに情報共有をすることができた。


「気になるのは、その巨人の神ですか?」


「まあ、ね」


 巨人の神と聞いて、真っ先に思い浮かんだのがマキア様である。

 私が会った時は、巨人と言われるほど大きくはなかったけど、マキア様は元々巨人として知られる神様だ。

 カオスシュラームを持ち帰ってきたことからしても、メリッサちゃんのいた世界に行っていた可能性は高い。

 となると、メリッサちゃんがこの世界に来たのは、間接的にはマキア様が原因と言うことになるだろう。

 なんというか、本当にろくなことしないな、あの神様。


「次元の歪みと言うのは、恐らくその神が残していったものでしょう。だからこそ、この世界と繋がっていた」


「そうみたいだね」


「そうなると、元の世界に帰すには神に頼るしかなさそうですが」


 まあ、こちらの世界に来た原因が神様にある以上、神様が後始末をするというのは何も間違ってはいないだろうけど、そもそもその案はすでに取れなくなっている。

 なにせ、メリッサちゃんが元の世界に帰るメリットがもうないからね。

 まあ、ヴィオの毒で死ぬことなく、元の居場所に帰ることができるという点だけ見れば、幸せなのかもしれないけど、メリッサちゃん自身が、元の世界に帰ることを望んでいない。

 嫌がってるのに、無理矢理帰すのは、ちょっと違うよね。


「ねぇ、できることなら、ヴィオと一緒に暮らさせてあげたいんだけど……」


「それは無理じゃないですか? 毒の問題もそうですし、仮にそれをどうにかできても一緒に生活するにおいても環境が悪すぎます。まあ、誰かが毎日食料を運んでいく、とかすれば行けるかもしれませんが」


「それをしてくれる人はいない、か……」


「ですね。ヴィオの森に好んで近づこうとする竜はいません」


 毒に関しては、一応耐性があるらしいから、なんとかなるかもしれないけど、居住環境を整えるのは難しい。

 寝る時は離れた場所で寝泊まりして、日中だけ会いに来る、と言う形にしても、結局は移動の手段が必要になる。

 メリッサちゃんは、身体能力は高いようだけど、別に空を飛べるわけではない。

 この森は、人里からは相当離れているし、空を飛ぶ手段、あるいは転移魔法でも使えない限り、通うことは不可能に近いだろう。

 何かうまい手があればいいんだけど……。


「ひとまず、ハーフニル様に報告しましょう。話はそれからです」


「そうだね。あっちも何か情報を掴んでるかもしれないし」


 情報と言っても、すでにメリッサちゃんの出所は判明したから、もう必要ないと言えばないけど、何かしらのヒントにはなるかもしれないしね。

 ちらりとメリッサちゃんの方を見てみる。

 よほどお腹がすいていたのか、私が上げた保存食をがつがつとむさぼっている。

 頬を膨らませて、まるでハムスターか何かだと思うけど、これでも神様なんだよなぁとしみじみ思う。

 いったい何の神様なんだろうか。ちょっと気になる。


「ヴィオ、一回報告に戻るから、メリッサちゃんをお願いね」


〈お任せを〉


 ヴィオにメリッサちゃんを任せ、エルと一緒に一度竜の谷へと転移する。

 そのままお父さんの下に向かい、事の顛末を報告した。


〈ふむ、そういう経緯があったか〉


「はい。私としては、このままどうにかしてヴィオと共に暮らさせたいと思っているんですが、どう思いますか?」


〈いくつかの問題をどうにかできるなら、それでもかまわないだろう。元々、ヴィオについてはどうにかしなければならないと思っていた。その問題を解決できるなら、こちらの世界に留まるのは何も問題はない〉


 私の意見をお父さんにも伝えてみたが、お父さんも特に問題はないと思っている様子。

 まあ、ヴィオは長年一人で暮らしてきて、話し相手もまともにいない状況だったらしいからね。

 もちろん、昔からの仲間である、エンシェントドラゴン達とは交流もあるらしいけど、それも時たま会うだけに過ぎない。

 いくら竜が退屈に強くても、やはりどうにかしなければならないとは思っていたようで、それを解決するためのピースとして、メリッサちゃんは有用だと考えたようだ。


〈ただ、気になることが一つある〉


「気になること?」


〈これはリュミナリアに調べてもらったことだが、ここ最近になって、各地で奇妙な魔物を見た、という目撃情報が上がっているらしい〉


 お父さんによると、ここ数日の間に、人里近くに今まで見たこともない奇妙な魔物が目撃されているらしい。

 その種類は様々で、極彩色をした巨大な虫だったり、ワーウルフに巨大な腕がついた者だったり、変異種とも取れるような魔物が多かったという。

 まだ見つかってから日が浅いらしく、直接的な被害は出ていないが、それでも追いかけまわされたりすることはあったようで、このままでは被害が出るのも時間の問題だということだった。


〈変異種が現れることは稀にある。だが、こんな短期間に、何体も目撃されるなど聞いたことがない。明らかな異常だ〉


「それは確かに。ちなみに、その魔物が出現し始めたのは?」


〈約半月前だ。ちょうど、あの娘が現れた時期と合致する〉


「なるほど、メリッサちゃんが何か関係があるかもしれないと」


 メリッサちゃんがこちらの世界に来たと同時に現れた変異種のような魔物。

 考えられる可能性としては、メリッサちゃんが異世界から持ち込んだ何かしらの力が、こちらの世界の魔物に何かしらの影響を与えて、変異種に進化させたか、あるいは、メリッサちゃんと同じく、次元の歪みを通じて、メリッサちゃんの世界からやってきた異世界産の魔物かってところだろうか。

 どちらにせよ、これは結構やばい事態だと思う。

 なにせ、メリッサちゃんの世界では、カオスシュラームが当たり前のように存在していた。そんな世界から魔物がやってきたとなれば、その魔物もカオスシュラームを持っている可能性がある。

 以前、大陸一つ滅ぼしかけた、あの悪魔の泥が、再びこの世界に来ているかもしれないのだ。

 しかも、今回は各地に存在している。一か所ではないわけだ。

 その侵食速度は前回の比じゃないだろうし、今度こそ大陸が、いや、世界が滅んでも不思議はない。

 もしかしたら、再び神様に頼る案件になるかも……。


「カオスシュラームは、大丈夫でしょうか……」


〈今のところ、その兆候はない。だが、それがその魔物がカオスシュラームを持っていないからなのか、倒さないと発揮されないものなのかはわからない。もし下手に倒して、カオスシュラームが拡散されるようなことがあれば、相当まずいことになる〉


 その魔物達は、どうやら人里近くに現れているようだし、このまま手をこまねいていたら、事情を知らない現地人が、倒してしまって、それをきっかけにカオスシュラームが拡散、ってことにもなりかねない。

 早急に手を打つ必要があるだろう。

 これは、メリッサちゃんの生活について考えている場合ではないかもしれないね。

 そんなことを思いながら、今後の対策を練った。

 感想ありがとうございます。

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[一言] ほんとろくでもないなぁ
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