幕間:学園に復帰して
ロードレスに住む少年、ロイの視点です。
僕は元々、冒険者のお父さんと一緒に旅をしていた。
それが、ロードレスの学園の副学園長と言う人に誘われて、魔術師としての素質があると見いだされて、僕はロードレスの学園に入ることになった。
最初は嬉しかった。僕の魔法は、お父さんに教わったもので、実践向きのものが多かったけれど、一度しっかりとした魔法を学んでみたいとは思っていたし、何より、いくら優秀とは言っても、魔術師一人で相手にできる魔物は少なく、稼ぎも安定していなかった身からしたら、こうして家も用意してもらって、定住させてくれた副学園長には恩もあるし、自分が役に立てるのならと喜んで学園に入ったのである。
しかし、この町は魔法に関しては優秀な人ばかり。僕もそれなりに魔法は使えたけれど、そんな人達と比べると、ちょっと見劣りしてしまっていた。
それでも、頑張って授業にはついて行ったし、フランちゃんと言う友達もできて、なんだかんだ楽しくやってこれていたと思う。
でも、いつの日だったからか、僕に対するいじめが横行し始めた。
最初は、僕が落ちこぼれだからと思っていたけど、魔法に対する取り組み方はそこまで悪くなかったと思うし、別にその子のことを卑下していたとか、ちょっかいをかけていたというわけでもない。
だから、いじめられている理由がわからなかった。
次第に、友達であるフランちゃんもそっけない態度を取るようになり、いじめに加担するようになったのも悲しかった。
いったい何がいけないんだろうと、自問自答したが、答えは出ず。結局、休学と言う形で逃げることになってしまった。
後から聞いた話だが、どうやら僕のいじめに関しては、副学園長が絡んでいたらしい。
なんでも、僕にいい成績を取ってもらうために、いじめをしてもらって、反骨精神から努力してくれることを願っていたらしい。
うーん、言いたいことは何となくわかるけど、普通に逆効果じゃないかなと思った。
まあ、それに関してはいつの間にか解決していて、副学園長は降格、いじめに関しても、指示していた副学園長が立場を失ったことと、ハクちゃんがやった、学会発表のインパクトが強すぎて、僕のことなんて気にする人はいなくなってしまった。
だから、もう大丈夫だろうと、つい先日学園に復帰し、今は順調に授業の遅れを取り戻しているところである。
ずっと副学園長のために頑張らなきゃと思っていたけど、まさかこんなことになるなんてね。
この町に置いてくれたことは感謝しているけど、やっぱりいじめをしてくるのはつらかったから、なくなってくれてよかった。
「ロイ、今日は暇?」
そう言って話しかけてくるのは、フランちゃんである。
あの後、フランちゃんはいじめをしていたことを謝罪してくれた。
別に、フランちゃん自身はいじめはしていないと思うんだけど、指示していたのは間違いないし、自分の影響で釣られていじめをしていた人もいるとのことで、この責任は自分にあると割と深く受け止めているようだった。
僕としては、フランちゃんは今でも味方だと思っているけどね。
だって、いじめをしたくていじめをしているようにはとても思えなかったし、何か理由があるんじゃないかと思っていたから。
その理由もはっきりしたし、今更フランちゃんを遠ざける理由はない。
むしろ、また友達として接してくれて、嬉しいくらいである。
「うん、帰ったら魔法の練習をしようと思っていたけど」
「熱心なことね。あなたを貶めていた副学園長はもういないんだし、そこまで頑張らなくてもいいんじゃない?」
確かに、この学園に入ったのは、副学園長が勧めてきたからだ。
その思惑としては、僕が優秀な成績を取ることで、始まりの貴族に媚びを売ろうって話だったみたいだけど、副学園長が降格したことによって、僕の利用価値はなくなった。
だから、そこまで頑張って成績優秀者にならなくても問題はないし、何なら学園をやめても文句は言われないだろう。
でも、それでも僕は頑張って見たかった。
せっかく、ハクちゃんに色々魔法を教えてもらったし、元から魔法は好きである。
こうやって、学園と言う場を与えてもらったんだから、少しでも恩返ししなくちゃと思うのだ。
今はまだ授業に追いつけていないけれど、追いつけたなら、この魔法を生かしていきたいね。
「好きでやってることだから。それに、フランちゃんも一緒でしょ?」
「まあ、ね。ハクの魔法は、どれも強力だし、物にできなきゃ始まりの貴族の名が廃るわ」
そういえば、フランちゃんも始まりの貴族の家柄なんだっけ。
確かに、始まりの貴族と言うからには、それに恥じない成績は必要なのかもしれない。
僕なんかじゃ釣り合いは取れない気もするけど、一緒に練習できるのなら、その方が楽しそうだよね。
「今日も一緒に練習する?」
「そうするわ。あ、それと、お父様が話したいって言ってたわよ」
「そうなの? じゃあ、お父さんに日程を聞いておくね」
「まあ、うん、そうしておいて」
フランちゃんのお父さんであるハムールドさんだけど、最近やたらを話をしたがる。
なんでも、ハクちゃんが教えてくれた魔法はかなり珍しいものらしくて、その詳細を聞きたいということらしい。
以前、ハクちゃんに貰った魔法陣の写しを見せてみたけど、そうしたらぜひ買い取りたいと言ってとんでもない額を提示してきたことがあった。
なんでそんなに欲しがるのかはわからないけど、これはハクちゃんから貰った大切なものだし、譲るわけにはいかないと思って断ったんだけど、結構食い下がってきたから大変だった。
後でお父さんに話したら、卒倒しそうになってしまったけど、断らない方がよかったんだろうか?
それ以来、ハムールドさんはお父さんと話す機会を設けてほしいと言ってきて、ちょくちょく話している。
何を話しているかは知らないけど、たまに魔法陣について聞いてくるから、そのことなのかもしれない。
確かに、もう覚えているから渡しちゃっても問題はないだろうけど、やっぱり大切なものだし、渡したくはないかなぁ。
「絶対価値をわかっていないわよね……」
「なにが?」
「何でもない。それより、次にハクが来たら、真っ先に教えなさいよ? 私も会いたいんだから」
「それはもちろん」
ハクちゃんのおかげで、上級魔法も難なく使えるようになったし、ぜひともお礼を言いたいところである。
確か、発表会をしていたらしいけど、どんなことを話したんだろうか。
ちょっと気になるし、次に会ったら聞いてみたいところだよね。
「それじゃ、一緒に帰ろうか」
「わかったわ。行きましょ」
すでに帰りの準備は済んでいるので、フランちゃんと一緒に帰路につく。
さて、今日はどれくらいできるかな。
感想ありがとうございます。




