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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第五章:学会発表編
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第百五十八話:宿題を置いて

 魔法陣は、色と文字、そして模様によって魔法を表している。

 だから、そこをいじることで、あらゆる魔法を再現することができるわけだ。

 つまり、中級魔法で、上級魔法と同じような文言を描き加えてやれば、疑似的に上級魔法を再現できることになる。

 魔法陣を上級魔法仕様にするなら、結局文字数は変わらないだろうと思うかもしれないが、中級魔法と上級魔法では、文字数に雲泥の差がある。

 その差は二倍どころではなく、十倍とかそれくらいの規模だ。

 もちろん、上級魔法に似せるにあたって、それなりに難解な文字を書くことはあるかもしれないけど、元々が中級魔法であるなら、上級魔法を改造するよりはよっぽど低コストで済ませることができる。

 まあ、普通は中級魔法の魔法陣に上級魔法の文言を加えるなんて不可能なんだろうけど、削除と圧縮を駆使すればどうとでもなる。

 むしろ、魔法陣のスペースをフルに活用でき、魔法陣の安定性の不安も払しょくすることができるだろう。

 我ながら、よく思いついた。日頃から、効率化を進めていた甲斐がある。


「後は、ここをこうすれば……」


 しばらくして、魔法陣の改良は終わった。

 これならば、中級魔法のコストで、上級魔法を放つことができるだろう。

 ひとまず、作ったのは、先ほどの魔法に似せたものだけだけど、そのうちロイさんが使えるものや、今後学園で習うであろう魔法も作っておけば、苦手も克服できそうだ。

 まあ、いくら簡単にしたとは言っても、覚えられるかどうかは別だけど、せめて一つくらいは物にして欲しいものである。


「さて、ロイさん、そろそろ回復しましたか?」


「えっと、うん、ある程度は。でも、もう上級魔法は撃てないよ? と言うか、庭を直しておかないと怒られちゃうかも」


「庭に関しては後で私が直しておきます。今日のところは、疲れているでしょうから、本格的な練習は明日にしましょうか」


 魔力ポーションは持っているが、流石に無理にやらせるのはかわいそうだし、まだ一応時間はある。

 いや、時間はあると言っても、せいぜい五日とかだけど。

 せっかくだから、この魔法陣は置いて行こうか。覚えるだけなら、魔力がなくてもできるだろうし。


「ロイさん、この魔法陣を覚えておいてくれませんか?」


「魔法陣? なんで?」


「必要なことなので。できますか?」


「まあ、うん、多分大丈夫。明日までに覚えておくね」


「お願いします」


 さて、これで今日できることはもうないだろう。

 いつの間にか、日も結構暮れているし、さっきも言ったように、本格的な練習は明日からだ。


「では、庭を直して、と」


 私は魔法で庭を元の状態に戻す。

 いや、戻すと言っても、ただ単に土を均しただけだけどね。

 ちょっと土が柔らかくなっちゃったかもしれないけど、まあ、特に問題はないだろう。


「ハク、あなたってもしかしてお父様より凄かったりする?」


「どうしてそう思うんですか?」


「いや、今の見せつけられたら誰だってそう思うでしょ」


 今のって、ただ土を均しただけなんだけど……。

 確かに、魔法の考え方として、基本的には攻撃に使用するって感じだから、ただ単に土を均すって言うのは少し珍しいかもしれないけど、見た目は地味だし、そこまで凄いようには見えないと思うんだけどな。


「ハムールドさんがどれほどかはわかりませんが、魔法は少しだけ得意ですよ」


「私に余裕で勝っておいてよく言うわね」


「その節はすいませんでした」


「もういいわよ。……ねぇ、明日、私も来ていい?」


「私は構いませんけど、家は大丈夫なんですか?」


「多分。一応、ハクの監視も兼ねているし」


 ああ、監視と言う意味合いもあるのか。

 多分、フランさんとしては、ロイさんのことが気になっているんだと思うけど、まあ、それは言うまい。


「では、ここに集合と言うことで」


「わかったわ。ロイのこと、頼んだわよ」


「やれるだけのことはやりますよ」


 そう言ったやり取りをした後、私達は帰宅した。

 途中でフランさんと別れ、宿舎の部屋へと戻る。

 部屋に入ると、すでにエルが待機していた。


「お帰りなさいませ、ハクお嬢様。そちらは大丈夫でしたか?」


「本格的な練習は明日になったけど、特に問題はなかったよ」


「それなら何よりです」


 エルには、副学園長のことを頼んでいた。

 どうにも、副学園長のやり方は気に食わない。あれでは、ロイさんが可哀そうだからね。

 ロイさんが成績を上げることができれば、副学園長からのいじめの命令もなくなるかもしれないけど、それでは副学園長の思うツボだし、ロイさんが将来苦労することになる。

 別に、私にとっては関係のない人だから、どうでもいいっちゃいいけど、ロイさんと関わった以上は、何とかしてあげたいところだ。


「そっちは何とかなりそう?」


「どうとでもなるかと。軽く調べただけでも、わかりやすく不正、と言うか、汚いことしてるようですしね。この町では裁けるかどうか怪しいですが、少なくともロイに対する嫌がらせくらいは止められるでしょう」


 どうやら、副学園長は、外から人を引き抜いてくる際に、色々と問題行動を起こしているようだ。

 要職についている人を、周りを脅して無理矢理追い出させたり、金を積んで引き抜いたり、色々やっているようである。

 まあ、その行動理念は、自分が成り上りたいからと言うのもあるだろうが、一応は魔法の発展を願ってのことである。

 この町では、そういう考えの人は珍しくないようなので、この町で裁けるかどうかはかなり怪しい。

 でも、いじめに関しては、かなり微妙なラインだし、始まりの貴族も知らないだけで、そこまでよくは思っていなさそうなので、やめさせることくらいはできるかもしれない。

 最悪、副学園長を叩けば何とかなるかもしれないけど、できれば穏便に済ませたいよね。


「わかった。そっちに関しては、引き続き情報収集と裏工作をお願いできる?」


「お任せください」


 私はあんまり腹芸は得意ではないけれど、エルならそこらへんは何とかしてくれるだろう。

 学会発表に差しさわりがあるのは問題だけど、それまでに何とか出来れば一番かな。


「さて、ついでだから他の魔法陣の開発もしておこうか」


 ロイさんがどんな魔法を使えるのかはわからないけど、上級魔法でも基本と呼ばれるものはいくつか存在する。

 だから、とりあえずそれらすべてに対応する魔法を作っておこうと思う。

 こういうことしてると、暗記魔法みたいなものがあったらよさそうだよね。

 一度見たものを忘れないようにする魔法。果たして、そんなことができるのかは知らないけど、あったら便利そうである。

 時間があったら考えてみるのもいいかもしれない。

 そんなことを考えながら、魔法陣の効率化を進めるのだった。

 感想ありがとうございます。

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[一言] 暗記魔法……スパイ活動にも有用そう
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