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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第五章:学会発表編
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第百五十七話:魔法陣の効率化

 魔法の効率化自体は、そこまで難しいことじゃない。

 ロイさんを休ませている間、片手間に作業していたけど、とりあえずはこれでいいだろうというものはすぐに完成した。

 ただ、これだとやはり覚えることが多すぎる。

 魔法の効率化って言うのは、魔法陣の文字を描き換えることによって行うものだけど、その際にやるのは、余分な文言の削除と圧縮である。

 例えば、全方位に攻撃する魔法であるなら、多少範囲を狭める代わりに、文言を少なくすることができる。

 魔法を構成しているのは、属性と精度、そして形なので、何も考えずに魔法を発動すると、余分な文言が多いのだ。

 それを、必要最低限のものにすることによって、文字数を減らし、効率化を図るのである。

 もう一つ、圧縮は、その名の通り、文言の圧縮だ。

 例えば、まっすぐ飛んで、当たったら弾ける、みたいな魔法の場合、まっすぐ飛ぶ、と、当たったら弾ける、の二つの文言が必要になる。

 それを、意味が矛盾しないように組み合わせて、まっすぐ飛んで、当たったら弾ける、と言う一つの文言に圧縮するのだ。

 こうすることで、魔法陣のスペースを確保し、空いたスペースにまた別の文言を描き込むことによって、威力を上げたり、コストを下げたりすることができるわけである。

 で、ただ単純に魔力の必要量を下げるだけだったら、削除したり圧縮したりするだけでも事足りるんだけど、より効率的にコストを下げようとなると、そのような文言を加える必要がある。

 ただ、そうすると、結局文字数自体が変わらないから、逆に覚えることが多くなって、記憶するのが難しいのだ。

 これが初級魔法とかだったら、そこまでコストダウンしなくても問題ないからいいけれど、上級魔法となると、元々の文字数の多さもあって、覚えるのが難しくなっていく。

 私は、なぜか記憶力が優れているから覚えられるけど、普通の人はこれを一瞬で思い浮かべろと言われても無理だろう。

 そこら辺を、どうやって解決するかが鍵である。


「ね、ねぇ、何してるの?」


「何って、魔法の効率化ですよ」


「効率化って……それって魔法陣よね? さっきロイが使った魔法の魔法陣っぽいけど、だいぶ崩れているし、それじゃあ発動しないんじゃない?」


「あ、魔法陣だけで何の魔法かわかるんですね」


 確か、この世界では、魔法陣はそこまで重要視されていなかったはず。

 魔法陣とは、魔法を発動する際に発生する、兆候みたいなものであり、魔法を発動する者にとっては、不意を突くことができなくて隙になるということで、不必要なものだとされていた。

 たとえ詠唱破棄をしても、魔法陣自体は現れるので、確かに不意打ちをするのは難しいと思う。

 でも、実際は魔法陣に描かれているのは、魔法の内容であり、取扱説明書のようなものである。

 だから、魔法陣を見れば、どんな魔法かわかるのは当然ではあるんだけど、それを理解できる人は少ない。

 フランさんは、魔法陣に関する知識があるんだろうか?


「一応、この町にも魔法陣に関する研究をする人はいるわ。魔法とは切っても切り離せないものだしね。儀式魔法にも使うことがあるし、大きな魔法は魔法陣が重要と考えられるって人もいるし」


「そうなんですね。フランさんも、その研究に携わっているんですか?」


「私はただ、いつもロイが使っているのを見てたからわかっただけ。そもそも、今わかっている魔法陣は、刻印魔法とか儀式魔法とかに用いるごくわずかだけだし、それも古代の魔法の研究結果とかから導き出されているものが多いから、それをいじくろうなんて思う人いないわよ」


「なるほど」


 転移魔法陣のような、大規模な魔法の魔法陣は研究されているけど、普段から使うような、と言っても上級魔法を普段から使うことはあまりないかもしれないけど、そう言った一般的な魔法の魔法陣は、わざわざ魔法陣を描いて儀式魔法化することもないってことなんだろう。

 魔法陣が重要だとはわかっていても、その意味までは理解していないのかもしれない。わかってたら、多少なりともいじくってそうだし。


「あんまりいじると暴発するわよ?」


「大丈夫です。意味は大体理解しているので、間違っても暴発はさせませんよ」


「……魔法陣の模様の意味を理解してるの?」


「はい。大体は」


「軽く言ってるけど、それって世紀の大発見だからね? 学会で発表したら、下手したら歴史に残るわよ?」


 フランさんが冷や汗をかきながらそう言ってくる。

 慣れれば簡単にいじれるんだけどね。慣れるまでが大変だけど。


「まあ、それは今は置いておきましょう。今は、ロイさんの魔法の効率化が大事です」


「置いておくようなことじゃないと思うけど……」


 単純に、魔法陣の効率化をするだけでは、覚えることが多すぎる。

 だから、できればもう少し簡単にしたい。一体どうすればいいだろうか?

 一番簡単なのは、効率化の文言を使わないことだ。

 削除と圧縮を繰り返して、空いたスペースにコストダウンの文言を描く加えるわけだけど、それを行わない。

 もちろん、効率化をしないわけだから、そこまでコストダウンには繋がらないが、ただ単に文言を削除や圧縮しているだけでも効果はある。

 現状、ロイさんの魔力は、上級魔法を一発撃てるか撃てないかってところみたいだし、少しでもコストを下げられれば、安定して撃つことは可能だろう。

 ただ、問題があるとすれば、魔法陣自体が安定しないことである。

 文言を削ったりするだけでは、空きスペースが大量に生まれることになるわけだけど、そうなると魔法陣自体が崩壊する可能性がある。

 バランスが悪いと言えばいいだろうか。変に偏った魔法陣にすると、出力の調整が難しく、うまく思い浮かべたとしても安定しない可能性がある。

 もちろん、削った上で、きちんとバランスよく配分すれば、多少は安定するだろうけど、それでは大した効率化は期待できない。

 やっぱり、この方法だと難しいかなぁ。


「……いや、待てよ」


 確かに、上級魔法を効率化しても、普通の人には覚えるのが難しすぎる。

 ルシエルさんだって、覚えるのに結構苦労していたし、ロイさんの記憶力が飛びぬけているとかでもない限り、短期間で覚えてもらうのは難しい。

 しかし、だったら別の方法を試せばいい。

 その方法とは、中級魔法の上級化である。

 つまり、中級魔法の威力を、上級魔法並みに高めてしまえば、それは上級魔法を覚えたということになるのではないだろうか、と言うことだ。

 もちろん、中級魔法と上級魔法では、そもそもの形態が異なるから、威力はともかく、種別としては中級魔法になるかもしれないけど、上級魔法並みの威力の中級魔法を放てるなら、わざわざ上級魔法を使える必要はない。

 それに、上級魔法に見せかける方法もなくはないしね。

 そうと決まれば、さっそく実践である。

 私は、再びメモを開き、魔法陣の効率化を開始した。

 感想ありがとうございます。

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