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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第五章:学会発表編
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第百五十五話:魔法の評価

 しばらくして、ロイさんの家へと到着した。

 どうやら、ロイさんの家族は、副学園長を通じて、家を貸し与えられている状態らしい。

 家賃はあるが、比較的安く、しばらくこの町に住んで、気に入ったなら正式に売り渡すと、そのような契約を結んでいるらしい。

 それを考えると、副学園長の顔色一つで、本当に追い出される可能性もあるわけか。ちょっと怖いね。


「ロイ、いる? いるなら出て来なさい」


 フランさんが玄関をノックしながらそう叫ぶ。

 その声を聞きつけたのか、しばらくして扉が開き、ロイさんが姿を現した。


「あれ、フランちゃん? どうしたの? わざわざ家までくるなんて」


「どうしたもこうしたも……いえ、あなたは悪くないわ。とりあえず、こっちのハクの話を聞いてくれる?」


「どうも。あの時以来ですね」


「わっ、たくさんいる。え、えっと、中に入る?」


「まあ、事情も説明したいですし、入れてくれるとありがたいですね」


「そ、それじゃあ、どうぞ」


 なんだか押し掛けたようで申し訳ないけど、ロイさんは特に拒絶することもなく中に入れてくれた。

 家の中は、割と整った印象を受けた。

 貴族の家とまではいかないが、それでも調度品もある程度揃っているし、裕福な平民の家って感じがする。

 副学園長も、割といい家を渡したものだ。まあ、そうしないと居付いてくれないと思ったからかもしれないけど。


「それで、何の御用で?」


 お茶をふるまってもらい、それぞれ落ち着いたところで話し出す。

 フランさんはこちらを見たっきり話してこないので、ここからは私が何とかしろってことなんだろう。

 まあ、手を出すなって言うのがどこまで引っかかるのかわからないし、そもそもロイさんからしてみればいじめっ子なわけだしね。下手なことは言えないか。


「実は、こんなことがありまして」


 私はグラム家であったことを簡単に説明する。

 ロイさんがフランさんから受けていたことを教育だと本気で思っているわけではないと思うけど、フランさんの親はそういう風に解釈しており、もしかしたら、優秀な芽を潰してしまったのではないかと危惧した。

 そこで、決闘で勝ち、実質的にこの件に関する主導権を握っている私が、直接ロイさんを教育することによって、帳尻を合わせようとした。

 ロイさんの意見などまったく考慮されていない、傲慢な作戦ではあるけど、魔法の発展に対する考え方はそこまで悪くないのが気にかかる。

 ちゃんと、人としても優秀だったら、文句はないんだけどなぁ。


「つまり、ハクちゃんが僕に魔法を教えてくれるってこと?」


「そうなりますね」


「うーん、確かに学園で成果を出さないといけないのは確かだし、教えてくれるのはありがたいけど、いいの? ハクちゃんって、この町の人じゃなくて、たまたまこの町に来ているだけなんでしょ?」


「一応、まだ時間はあります。短時間で教え切れるかどうかはわかりませんが、精一杯教えるつもりではありますよ」


「そっかぁ。そういうことなら、お願いしようかな」


 ロイさんは、案外あっさりと受け入れてくれた。

 ロイさんとしては、学園に通えていない現状を早く打破したいと考えていたらしい。

 自分の親や、自分達を見出してくれた副学園長のためにも、このまま退学なんてことになったら申し訳が立たないし、どうにか成果を出そうと頑張ろうにも、学園ではいじめのせいで碌に勉強もできない。

 だからどうしようかと悩んでいたんだけど、そしたら今回の誘いが来た。

 ロイさんにとっては、渡りに船と言ったところだったのかもしれない。

 副学園長に利用されていることを話すべきか迷ったけど、そこら辺に関しては、裏で手を回しておこうかな。

 私はエルに目配せをする。それに対し、エルは承知したと言わんばかりに頷き、その場を後にした。


「あれ、エルさんはどこに?」


「ちょっと用事ができたみたいです。それより、そういうことなら、すぐにでも教えたいと思うのですが、時間はありますか?」


「え? う、うん、お父さんは今お茶会? に出てるみたいだから、魔法の練習をしようと思っていたところだし」


「なら、さっそく見てみましょうか」


 了承も取れたので、さっそくみんなで庭へと出る。

 この家、きちんと庭までついているあたり、かなりの良物件ではないだろうか。

 それだけ本気だったってことなんだろうか? だからこそ、失敗するわけにはいかないと思ってしまったのかもしれない。


「まずお聞きしたいのですが、ロイさんの属性は何ですか?」


「土属性だよ。一応、中級までは粗方できるけど、上級になるとちょっと怪しい感じ。まあ、学園のみんなは、当然のように上級を使うから、僕は落ちこぼれになるのかもしれないけどね」


「いえ、それで十分です。魔力量は?」


「普通の人よりは多いみたい? まあ、上級一発撃ったらもうへとへとだから、そんなに多い気はしてないんだけど」


「ふむふむ……」


 聞き取り調査と、ついでに実際に魔法を放ってもらって、現在の実力がどの程度なのかを簡単に測って見た。

 私が見る限り、ロイさんは凄く優秀な魔術師だと思う。

 上級魔法を一発撃っただけでへとへとになると言っていたけど、逆に言えば、中級魔法を何発も撃ってもへこたれないだけの持久力があるということでもある。

 魔法戦に置いて、上級魔法を使う場面なんて相当稀だ。

 冒険者とかが使う魔法は、常に自分の魔力と相談になるので、不用意に上級魔法なんて使えない。使うとしたら、想定外の大物が出ただとか、絶体絶命のピンチに陥っただとか、そういうここぞというタイミングでのみ使うものである。

 牽制程度なら初級魔法で十分だし、直接的な火力も中級魔法で大体事足りる。

 実戦を考えるなら、それだけできれば十分だ。

 ロイさんの魔法を見てみたけど、普通に詠唱破棄をできていたし、魔法も安定していて、暴発の心配もなさそうだった。コントロールに関しても、きちんと狙った場所に撃ち込めている。

 土魔法特有の、地面を陥没させるようなことも容易にできていたし、これで普通なのかとちょっとびっくりした。


「フランさん、これくらいは学園の皆さんはみんなできるんですか?」


「できるわ。入学したてでも、最低でも詠唱破棄はできるし、中級魔法は大体網羅してる。多少威力とか精度にばらつきがあるくらいね」


「やっぱりレベル高いですね」


 本当にこれが普通だと考えると、優秀者と言うのはどれくらい凄いんだろうか。

 フランさんの話では、上級魔法も数個安定して使えるくらいでないといけないとは言っていたけど、上級魔法を放つには年齢的な縛りがきつすぎる。

 一応、ロイさんは成人しているようだけど、成人したばかりで扱える魔力量には限界がある。

 日頃から、魔力を増やす訓練をしているならともかく、そうでないなら使える量は決まっているわけだし、それで上級魔法を数個使うのは無理があるだろう。

 種類を覚えるだけでいいなら、教えればできそうではあるけど、それでもいいんだろうか?

 私が居た学園と同じなら、卒業は来年になるだろうけど、それまでに魔力量を増やして使える回数を増やせってことなんだろうか。

 うーん、現実的ではないよね……。

 私はどういう方向で教えて行こうかと、頭を悩ませた。

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