災難な悪役令嬢は攻略対象に違約金を支払う(仮)
【プロローグ】
遂にこの時が来た。
この悪夢から解放される瞬間を何度夢に見たことか。ついに、ついに…。
喜びに震え、レディルアは婚約者を待っていた。
「…ディアン?」
ゆるいウェーブのかかった茶髪の青年は、この声に振り向いたが、その声の主に気付くと途端に嫌な顔をして、そのまま行こうとした。
「ディアン。あのね、これは本当に大事な話なの」
「お前の大事な話は急用なのか?」
皮肉めいた口の聞き方。
ですが私、これまで一度もあなたに『大事な話』なんて言ったことはないのよ?なのにそれまで聞くまいと、決めつけてかかるなんて…。
すぅ、っと息を吸った。怒りの治る7秒の3分の一。
こんな怒りなんてこの学園に来てからしょっちゅうだから、ものの2秒で治る。残りの0.4秒は安定した微笑み作り。
「ええ。お父様方も関わるわ」
私は知っている。ディアンは『お父様』という言葉に弱い。現に彼は、ヒロインの取り巻き達にいくつか台詞を発して私の正面に立った。
その間、俯いた0.4秒で真顔を作る。
さてと、本領発揮だ。
レディルアは色気のある甲高い声で、婚約者に言い放った。
「無駄な努力はしたくないのです。お願いですから二度と!私と!関わらないでください」
【冒頭】
悪夢の学園ライフが始まった。
これは今日、丁度、最初の断罪イベント3年前のお話。
私、悪役令嬢なんですの。
なんて言ってられるほど私は穏やかな人間じゃない。
今朝、入学当日のチュートリアルから光っていたヒロイン───文字通りエフェクトがすごくて、光に集う虫のように男たちは群がっていった────には申し訳ないが。
自分に悪役、そしてどのルートでも100%死が待っていることには、学園の正門をくぐった時に気がついた。
ふっと、舞い降りてくるように。それはそんな軽いものだった。
どうやっても私は攻略対象である、侯爵家長男と別れることがない。だから私はディアンの画策によって濡れ衣を着せられて、死ぬ。
この国での罪人の死と言ったら生き埋めと決まっている。魔力のあるこの国で魔力を封じ込める、呪いなんだそうだ。
昔小説で、生き埋めの気持ち悪いほどリアルな描写があった。私はあれ以来言葉すらすっかり忘れていたが、自分の身ともなると気持ちが悪くて仕方ない。
ではどうするか。
そんなのは決まっている。
私のような伯爵家が侯爵家のような低い身分に嫁ぐ理由は、金銭的な問題だ。
私が由緒正しい伯爵家長女で、なおかつ金があり、他には大事な後継ぎの兄しかいない。そしてディアンの侯爵家が借金だらけの一人息子。
まあ言ってしまえば、簡単な利害関係。
なので私は、彼、ディアンにお金を渡せば簡単に別れられるはずなのだ。
「家の方は……」
残念ながら話せることがない。
こうして入学式が始まっても、まだ決まっていないまま、こんな計画を考えている。
でも兄が後継ぎとしているのだから、家柄を欲さなければ済むのでは?
というのはいささか甘いだろうか。もちろん、せっかく考えてくれている両親に申し訳ない。だが肩書に命は変えられないのではないだろうか。
なので私は今、お父様からのお小遣いを増産させる計画に没頭している。
[ここまでがメインストーリーです。ここからはプロットになります。また今回は各キャラクター像が決まっていないので、割愛します]
【プロット】
婚約破棄をしたい。
学校がてらお金を貯める。
ビジネスで当てる。
持参金の1.5倍で婚約破棄する。
父に勘当される。
ビジネスを切らずに、お金を運用していく。
兄の手引きで家に戻る。