始まりの『さよなら』
春が来た寒気が少しずつ消えていく春が、そしてこの想いを伝えるべき春が、後悔はしない。そのための告白だから、この三年間とても良い思い出になったから感謝の意も込めて涙を堪えて伝える。
校庭で記念撮影をしている同期のみんなも別々の道に進むため悲哀の涙を流している。中学校、三年間人生においてとても短い期間、でも人生を決める大きな分岐点の一つであり思春期真っ只中の私たちには涙を流す程、思い出深い友人や部活動の後輩たちと別れは悲しみのあまり涙が溢れてしまう。そして、それは私も同じでみんなとは違う意味で涙がこぼれそうだった。校内にもどり教室の扉を開けると彼が、真壁 洸祐がいた。
「やっと来た。なんだよ話って、谷野さんが呼び出しするなんて珍しいから来たけど。俺高校の課題やらないといけないから。悪いけど早めにしてくれると助かる」
「大丈夫だよ、…すぐに終わるから」
後悔はしない。でもうまく言えそうにない。この三年間殆どそのために頑張ってきたといっても過言じゃない。だからこそなのか口元が自然と震えてしまう。
神様、どうかこの私にこの一瞬だけ勇気を与えてください。
大きく息を吐き深呼吸をして、閉じていた目を開き彼のことを見る。
「真壁くん。ずっと前から好きでした。あなたが私と話すようになる前から、中学三年間あなたに片想いをしていました。高校別になっちゃうけどまた会うことがあればその時はよろしくね、この3年間後悔のない良い思い出になりました。本当にありがとう。さよなら」
私は目を見開いき言葉を探している彼のことを見て踵を返した、引ってしまう私のことを彼はきっと何時か忘れてしまうだろうから、私もこれ以上にかける言葉がなかった。でもそう思うと堪えていた涙が次々と溢れ出てきた。