冒険者ギルド
あれから俺とルナは街を歩きながら冒険者ギルドに向かっていた。
『主様、全然私と話してくれませんね…何故ですか?』
「だって街中だぞ!1人で話してたら馬鹿みたいじゃないか」
ルナの声は俺にだけしか聞こえていないのである。
『あー、その事ですか!それなら主様が頭の中で話しかけてくれれば万事解決ですよ!』
「それを早く言えよ!」
街中で大声で叫ぶという奇行に周りの人の目が怖かったので、そそくさと冒険者ギルドに向かった。
あれからの会話は全て脳内でのみにしている。
「着いた。ここが冒険者ギルドだな…」
『そうですよ。ではさっそく行きましょう!』
そして俺は冒険者ギルドに足を踏み入れた。
ギルドの中はまるでゲームのような感じだった。
掲示板で依頼を探す短剣を装備した冒険者に、酒場で酒を飲んでいるガタイのいい男の集団、そして、美人の受付のお姉さん!
『主様…今変なこと考えませんでした?』
(き、気のせいだ。ほら行くぞ)
ルナの発言に少しギクリとしながら受付まで歩いていった。
「すみません、冒険者登録がしたいんですけど」
「冒険者登録ですね、 ではこの書類に名前と職業を書いてください。代筆は必要ですか?」
「あ、はい。代筆お願いします。名前は赤月明人です。」
『職業は剣士です』
「職業は剣士です。(ありがとうルナ)」
アドバイスをくれたルナに心で感謝の言葉を言うと、ルナも『はい!』と答えてくれた。
「アカツキ・アキトさんですか…珍しい名前ですね。」
「あ、アキトが名前です。アカツキがファミリーネーム」
「そうですか、ではラクストの方から来たのですね。ようこそルビーネ冒険者ギルドへ」
「え、あ、はい。よろしくお願いします」
「では、ギルドカード発行しますので少々お待ちを、その間にギルドの説明をします」
「あ、はい!」
流石はリアルだとわかるが、本当にテキパキとしていた。
「それではまず、冒険者にランク付けはありません。誰でも何でも受けることができます。ですが、命を落としたとしても、ギルドは責任を負いません。」
「なるほど、確かにランクなんてあったら問題が起こりそうだもんな…」
「はい。ですが、依頼人からの指名依頼はありますし、大規模な事態になった場合はギルドから冒険者全員に依頼を出したりもします。
指名されるのは、それなりに実績を残した冒険者や、称号持ちぐらいです。」
「称号持ち?」
「はい。偉業を成し遂げた者たちには敬意と畏怖の念を込めてギルドから称号が送られるのです。この街にも一人だけいますよ。【姫神】のメルフィ・シルバスタさんと言う方が。」
「へぇ、彼女は何をしたんですか?」
「この街の近くにある氷河の迷宮ダンジョンの全階層攻略、その最奥部にあった神器の回収です。」
「…それはすごいですね、会ってみたいものです。」
「今はいませんが、そのうち会えるかもしれませんね。はい!ギルドカード発行し終わりましたがまだ聞きたいことは?」
「あ、宿泊する場所ってどこですか?まだ宿もとってないもので」
「それでしたら、熊野屋というところがオススメですね。ここから近いですし」
「わかりました。いろいろとありがとうございました。」
「はい。それではまた。」
こうして俺たちはギルドを出た。今日は依頼を受けずに身体を休める事にした。神様がどれくらいの金額かは知らないがある程度の金を用意してくれたので、宿代と新しい服を買いに行くのだ。
いつまでもこんなゲーム初期装備みたいな格好は嫌だったからな(ギルドで注目されてたし…)
(なぁ、ルナよ)
『なんですか主様?』
(俺、この世界の読み書き覚えることにするわ)
『……それもそうですね。』