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002:魔力鑑定

俺が「食っていく」のに困る、と零すと、支社長が説明してくれた。


冒協というのは、仕事を斡旋する協会らしい。

その仕事というのは、落し物探しや草むしりなどの雑事から、商団や貴族の護衛に至るまで様々だ。

で、身分の定かでない者や、実力の定かでない者に護衛などの重要な仕事を任せるわけにいかないので、これまでの成果・成績から資格ランク付けをし、資格ランクに応じた仕事を斡旋するのだという。


今、その再登録の手続きをしているところだ。

何故再登録かというと、俺の記憶が無い為、適性資格の判断が付かないのと、俺本人の身分証明書ステイタス・プレイトかどうかも怪しい為だ。

そして、身分証明書ステイタス・プレイトというのは、武器を携帯して良い、といういわば免許証であった。

つまり、武器商人であっても免許証無しにして腰に剣を携えることは許されておらず、免許証無しに武器を腰に下げていれば、何かあったときに衛兵に捕まってしまうのだ。

衛兵や騎士でもこの免許を取るのが必須となっており、身分証明としての価値が如何に高いかがわかるというものだ。


資格ランクは一級~六級まであり、数字が小さい程『高ランク』となる。

各級に上がる為には、試験を受ける必要があるのだそうだ。

簡単に説明すると、六級が駆け出し(ルーキー)、五級が慣れてきた低成績者なので、このあたりは簡単な依頼しか受けられないという。

四級~三級が中堅。まともな討伐依頼を受けたいのなら最低限、四級ぐらいは取っておかないと、というのが常識らしい。

で、腕に覚えがあると示したければ三級を取る、と。三級まで取れば、だいたいの依頼は受けられるのだとか。

二級がベテランで、ここから試験の難易度がぐっと上がる。その代わり、優先的に高難易度の依頼を受けられるので、稼げる冒険者となる。

一級はほんの一握り。ベテランの中でも特に依頼を問わず高成功率を叩き出す冒険者が、冒協から「1級取りませんか?」という通達を受けて、初めて試験が受けられる。

つまり、信頼が高く、高難易度や機密度の高い……要はめちゃくちゃ稼げる依頼が受けられるというわけだ。

まぁ、そんな依頼はほとんど発生しないので、一握りの冒険者でも充分需要は満たされているらしいが。


で、俺の免許証(ステイタス・プレイト)資格ランクは……。


「特級、ってありますけど……?」


俺の質問の意味がわかったのだろう。

これまでの会話で俺の無知っぷりを知ったらしい支部長が説明をしてくれる。


「この6つの級以外に、例外があります。それが初級と特級です。

初級というのは、実績も信頼も0、つまり一度も依頼を成功させたことの無い冒険者に与えられる級ですね。

まぁ仮の免許証(かりめん)、と言ったところかな。」


なるほど。確かに、免許証ステイタス・プレイトに『冒険者協会は、この者の身分を保証します。』とある以上、登録したばかりの冒険者の身分をいきなり一人前として補償しかねるのだろう。

では特級というと……?


「特級は、特一級と同等……とでも言えばいいでしょうか…。

そうですね、まずはそこに至るまでの仕組みから説明しますね。

一級に至った冒険者の中でも、常識じょうし……いや並外れた能力を持つ物に、特一級を与えられます。

以前は、これを一級(特)としていました。」


特一級と同等?つまり俺は超ベテラン枠って事???

やべー俺、超ベテランだったのかよ、何も覚えてないけど!

と、ここで説明するのが面倒なのか、頭を使うのが苦手なのか、それとも難しい説明をするつもりなのか、再び支部長の眉間に皺が刻まれた。


「普通、資格というのは積極的に取るものです。

資格ランクが上がるほど稼げるのだから、当然……と言いたいわけですが、中には、試験を受けたがらない冒険者もいるんです。

そんな冒険者には再三に渡って「試験を受けるように」という通達がされるのですが、あまりにしつこいと、冒協と冒険者の間に溝が出来てしまう。

そこで、実力からして充分一級・二級相当であろうという冒険者に対して準一級、準二級という資格を当て嵌める事になりました。

とはいえ、普通はマトモに級を取るから、『準』級は非常に少なく、変わり者みたいな扱いを受けるほど、めったにいないですね。」


うーん……?

その『準』ってやつは特級に関係あるって事なのか?

なんか、関係の無い話をしているようにしか思えず、疑問を持ちながらも話を聞く。


「ですが、どれほど前だったか……。それまで事例が無かったのですが、『一級(特)相当』とされる冒険者が現れました。

それまでは、『一級(特)相当』の実力を持っていても、資格をきちんと取らない限りは準一級というスタンスを維持していた冒協でしたが、その人物は、あまりに『準一級』という資格ランクを逸脱していました。」


ふむ、それまで特級は無かった、と。そういう事なのか。

で、話の流れから察するに、その冒険者の活躍で、特級という級が追加された、という事なのだろう。


「名だたる凶悪な魔物モンスター達を討伐し、素材を持ち込む事数回。彼はパーティーを組んでいなかった事から、単独ソロでの討伐と考えられました。

内容は、人面獅子レゴア、大海蛇ノードン、大毒蛇ギルギトス、大土竜(もぐら)グレーズ、飛龍スレギンなど。」


飛龍?!他のはよく分からないけど、なんか強そうだよ?

今、挙げられた魔物モンスターを思い浮かべようとしたが、俺の記憶に浮かぶ物は何もなく、俺の想像力ではさほど強そうな魔物モンスターを思い浮かべる事ができなかった。


「魔族との戦争においては、人間とは比べ物にならない身体能力と魔力を持つ、と言われる魔族の部隊に単騎ソロで乗り込み、殲滅する事9回。他の特一級冒険者にも同じ事をした者はいましたが、9回という常軌と逸した数字を叩き出したのはこの人物だけですね。

結果、称号と共に称えられ、恐れられたその人物に、準一級という枠では収まりきらないという判断が為されました。」


何その怪物バケモノ……怖い。

記憶が無い以上、俺の常識がどこまで通じるのか分からないが、支部長の話しぶりからしても、俺の感覚は間違っていないのだろう。

あれ?となると、この特級ってその人物と同じ資格って事……?

いや、そんなのと同列に扱われても困るよ、俺。


「その人物こそが、『剛剣』カース=レジオン……唯一・・の特級冒険者です。」


……。


…………。


は?


聞き間違った…とは思えない。言い間違いか?


思わず支部長の顔を見返したが、真面目な顔でこちらの反応を伺っている。

言い間違えでも冗談の類でもなさそうだ。


と、いう事は、だ。


「いや~、とんでもない人物の免許証ステイタス・プレイトを拾ってしまったもんですね。」


なんだ、俺の記憶の手がかりはここに無かったか。


残念なような、ホッとしたような、不思議な気分である。

話を聞く感じ、冒険者家業は割と血なまぐさそうで、俺の性には合わない気がする。


そんな人物の物だとは露知らず、懐に入れてた……って結構やばい状況じゃない?

話が通じる人だといいんだけど。

俺が頭を掻いたのと、ノック音がしたのは、ほぼ同時だった。


「失礼します。そちらの男性の魔力鑑定の結果、間違いなくカース=レジオン様本人との確認が取れました。」




なん……だと……?

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