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009:採取を習う

正直、ダズェル(きんにく)は採取について全く役に立たなかった。

“真実の目”とやらのおかげで雑草と薬草の区別こそできるものの、雑多に溢れる草の砂漠では見つける事ができないようだ。

やっと見つけたかと思えば草をむしる様にテキトーにひっこ抜き、使い物にならないと冒協の職員に怒られていた。

護衛なので、周辺を警備していてくれればいいのだが、ダズェルが俺にしつこく絡んできてうっとおしかった。


しかも、誰彼構わず名前で呼ぶダズェルが、俺の時だけ「おい」とか「兄弟」とか、時には懐から紙を取り出し、そこに書いてある文字を確認してから「イレギオ」と呼ぶのだ。

偽名を呼べと支部長が指示を出したんだろうけど、俺の名前が偽名である事が全く隠せていない。

非常に迷惑な存在であった。


このオッサン、実力わんりょくだけなら高ランクなのだが、頭が悪い為に二級止まりなのだと自慢げに語っていた。

正確には二級(特)という扱いのようだ。

胸を張れる事ではないのだが…まぁ、納得の馬鹿さではある。


何しろ、記憶喪失で別人だと言ってるにも関わらず、俺をカース=レジオンとして扱っている。

偽名で呼ぶようになった事が奇跡だと思えるのだが、支部長エレンはどんなマジックを使ったのだろうか。


俺を含む全員が採取する薬草を見分けられるようになり、品質の合格も得たところで、俺たちのグループは森の奥へと進んだ。

ここで、魔物との戦闘と、魔物の領域での野営について教わるのである。


さほど危険な森では無いとはいえ、魔物は出る。見通しも悪く、ダズェル以外は緊張の面持ちである。


「で、俺は奴に言ってやったんだ。『隠蔽のスキルでも屁は隠せないだろう』ってな。」


お前は少し黙れ。


そして、子鬼と呼ばれる魔物が現れるなり、駆け出して駆逐してしまった。

俺たちの訓練なんだが…。

案の定、職員さんに怒られていた。


このオッサン、これで何度も引率してるらしいぜ……。


でだ。


作戦なのか何も考えてないのか、再び子鬼が勢い良く現れた。2匹。

この人数差で……うん、何も考えてないんだろうな。


子鬼というのは、大きくても身長1Mメーターくらいで緑色の肌を持つ二足歩行型モンスターだ。

知能は個体差があるが、タズェルくらいには良いという。……つまり悪いとも言うわけだが。

大きなイボがいたるところに付いていて、顔さえも覆わんばかりだ。おかげで目がつぶらに見える。

大きな口が凶悪に見えないのは、何故かそこだけ優しいピンク色の、その太ましい唇のせいだろうか。

そして、その横に申し訳程度に付いている尖った耳。

人によっては醜悪なんて言われている外見だが、なかなか愛嬌のある顔をしている。


そして、この魔物、冒険者に相当嫌われている。


革は取れない。取ったとしてもイボだらけで丈夫さもしなやかさもないから何にも使えない。その上臭い。

肉も取れない。取ったとしても毒々しい色で凄まじく不味いらしい。そして臭い。調理するだけで異臭が立ち込めるとか。

討伐対象としてもうまみが無い。

基本的に森や草原を住処にしている為、町や村を出なければ遭遇せず、依頼を出す人が少ない。

かといって無害かというと、そうでもない。

子鬼の縄張りに入った物は誰彼構わず襲うし、備えが無ければ殺されてしまう。

雑食だが、肉も食べる。人間も例外では無い。

女性や子供ををさらって家畜やペットとして飼ったという事例もあったらしい。

妙な知恵を働かせて罠を張ったりもするし、粗末な飛び道具を使う事もある。

ある程度の腕力があれば追い払えてしまう程度には弱いのだが、一度遭遇するとずっと付きまとって狙ってくる。

嫌がらせの為に存在すると言っても過言では無い魔物なのだ。

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