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目覚め

第一話 目覚め


 ディスプレイに古いテレビゲームのUI、メッセージ枠の様な画面が写しだされている。チカチカとカーソルが点滅し文字が浮かぶ。


『目の前はブルー。

水中に漂う幼い海月。』



『光さす源、その水面へ

少年は手を伸ばす。』


 聴覚に心地よい揺れを感じた、女性の声が遥か彼方から聞こえてくる。


 「さあつかめ! ヒーロー。君の新たな希望を!」


挿絵(By みてみん)



 青年はゆっくりと目を開けた。

 おもむろに上半身を起こそうとするが、どうも体が重い。「ふぅ~」と深いため息をひとつつき、仕方なくまた、ふんわり包まれるようにベッドに身をゆだねた。

 見えるのは藍色のレース、美しい蔓草模様。天蓋付ベッドで目覚めた。


 「ここ……は…どこ?」


 靄がかかって、体以上に重たく感じる脳がやっとギクギクと回り出した。血液とシナプスの歯車だ。


 「ここどこだ? いったい……」


 もう一度体を起こし、腹部まで掛かっているスベスベした肌触りのシルクのシーツを剥ぎ、体の動かし方を思い出すかのように、ぎこちない動作でベッドサイドから足を下ろした。


 (おいおい、いつも寝ている安アパートは?)


 (こすれて所々ざらざら、それでも足裏に暖かい――馴染みの畳はどこへ行った)


 石の冷たさを感じながら高く薄暗い天井に目をやる。

 木目柄がプリントされた見なれた合板や、汚れた薄い漆喰壁は無く、様々な草花を模した彫刻だろうか?タイルなのだろうか? 映画や写真でしか見たことがない建築物の内装ディテールの数々。

 レースのカーテン越しに見えるのは、まさに貴族の寝室といった広すぎる一室だった。


 一時、あ然呆然としたまま動かない青年。体内の脈動、かすかな風の音、ごぉーーというこもった耳鳴り。神経を研ぎ澄ませ心の底で理解する。信じがたいがこれは『現実』なのだ、夢ではない。


 前に進むために最後の記憶、目覚める前の自分の行動を思い出そうとする。

 混乱ゆえか頭の中の思考がつぶやきに出てしまう。


「そうだ、いつものように早朝の新聞配達……確かに行った…そうだ、行った……その後は、うん、うん、当然学校へ。学校?高校??いや違う大学生だよ。最寄り駅まで自転車こいで……」


 一人うなずきながら、いつもの変わらぬ当たり前だった日常の記憶を反芻する。



 「ああぁっ?!」


 青年は思わず声を上げてしまう。かすかな不安が眼のドームを覆い、痛むほどではない締め付けが胸を刺す。

 未来を映す天秤、絶望の皿に不確かな恐怖、磐石だと思っていたものが揺らぐ恐怖が重りを足した。



 「自分の名前が……思い…出せない」

一話を読んでくださってありがとう!!

少年漫画のような次回がワクワクする作品にしたい思います。

スローペースで話が進むことになりそうです。


イメージが分かりにくい所、ぜひ教えてください。

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