第六話
ぱっと見、見開き1ページくらいかと思ったフローチャートは、
なんと次のページも次の次のページにも続いた。
軽いノリのタイトルに騙されたが、
質問内容は非常に重い。重すぎる。
それでも適当にやればすぐ終わっただろうが、
根が真面目なグランは、一つ一つ真剣になってしまった。
この質問はどういう意図だろう…
ある意味こうだけど…こうとも言えるし…等と考え、
チャートを戻ったりしているうちに気が付けば二時間も経過していた。
何となく息切れしながらも最後の質問に答えた時、
グランの目に飛び込んできた結果は
『4.自分は大丈夫なんて思ってない?
隠れ暴君タイプ★暴君度80%』
破り捨ててやろうかと思った。
『破り捨てちゃいや!隠れ暴君タイプのアナタには
寝耳に水の結果かも!?』
というどこからか見てるのか、と思えるような
次の文章がなければ、破り捨てていたと思う。
(落ち着け。
たかだか本の言うことを真に受けてどうする…)
と深呼吸を繰り返しながら何とか平静を保とうとする。
『隠れ暴君タイプのアナタ。
自分に都合のいい情報だけを拾って、お山の大将になってない?
誰かにいいように操られている可能性もあるワ☆
国民はちゃんと見てるものよ。
人を頼るのもいいけど結果は自分で確かめて!!
結果詳細は24ページへ』
(やはり破り捨ててやろうか…)
グランがそう思いつつもできなかったのは
フローチャートを進めるうちに,
自分の中にも不安が湧き上がってきていたからである。
何せ「知っているか」「把握しているか」系の質問は
ほとんどがNoだったのである。
ただ、それでも結果を見るまでは、
「ちゃんと側近が把握している。王が全てを知る必要はない」と
強がっていたが、結果の中にあった「自分で確かめて」の一文に
ぎくりとさせられたのである。
グランはもともと自由な第三王子だった。
そのころはよくお忍びで城下に下りて行ったし、
留学していたころは外国の様子も見て回った。
その経験で知ったことの中には、
城の教育係では絶対教えてくれないようなこともあった。
しかし即位してからというもの、
執務に追われ、報告は大臣や側近から上がった情報を
鵜呑みにしていたのは間違いない。
(そういえば、父王や兄上たちもよくお忍びで城下におりては
側近に叱られていたな…)
ふと懐かしい記憶を思い出し自然と笑顔になる。
(よし、明日は久しぶりに城下におりてみるか…。
別にこの本の影響ではないが…確かに一理ある。)
父王や兄達を思い出したこともあり、素直にそう思うことができた。
思わぬ書物の出現のせいで心身ともに疲労してしまったが、
どこか明るい気持ちでグランは眠りについた。




