第四話
自室で軽く仕事を終え、寝室に入ったグランは、
枕元に見覚えのない書物があることに気付いた。
グランは普段、本を読むことがあまりない。
幼いころ外で走りまわっていたせいか、
読書の習慣が根付いていないのである。
王として「読まねばならない」書物は小難しいことが羅列しており、
タイトルからして「政要全書-施政者とは」なんて難しいことをいわれたら
ページを開く前から眠くなってしまって仕方がないのである。
そんなわけで、グランの寝室に本があることは非常に稀である。
まず自分では持ち込まない。
怪訝に思いながらもその本を手に取ると
【暴君★フローチャート】
と書いてある。
やたらとポップでキャッチーな字体で、
★マークは今にも飛び出しそうな勢いである。
ただ、書物そのものはやたらと古く、
何度も読み返された形跡がある。
少なくとも「政要全書-施政者とは」よりは読みやすそうだな、
と思いながらページをめくると
『まずはあなたの暴君度をチェック!
簡単な質問に答えるだけで、
あなたの暴君タイプが分かるヨ☆』
という見出しの下に、Yes,Noなどと矢印のついた図のようなものがある。
(…軽い。とりあえずノリが軽い。
ってかこんなの王宮のどこにあったんだ)
いくらか怪訝に思いつつ、ちょうど昼間、
20歳の誕生日を前になかなか満足の高い治世だったと
この10年を振り返っていたところである。
(大方あの陰険執事あたりが置いたんだろうが、残念ながら私は暴君ではない。
このフローチャートとやらでいうところの…
2番目のタイプだな)
フローチャートはYes,Noでたどった先に、
結果がいくつかのタイプ分けがされている。
大まかに分けて以下の5つのタイプに分類されるようだ。
1.アナタに一生ついて行きたい!!
よっ名君主!暴君度0%
2.ちょっと疲れてるのかな?
癒しが必要タイプ暴君度30%
3.虚勢を張ってもバレバレだぞ☆
ツンデレタイプ!暴君度50%
4.自分は大丈夫なんて思ってない?
隠れ暴君タイプ★暴君度80%
5.そこまで来たらもはやアッパレ!暴君度100%
グレンは結果だけ見て、
2の「癒しが必要タイプ暴君度30%」を自分だと判断したようだ。
本来自分的には暴君度は0%だと思ったが、
「癒しが必要」で先ほどまであっていた寵姫を思い出したが故の30%だった。
そして「癒しが必要」を言い当てた(と勝手に判断した)フローチャートに少し興味をもった。
(ふむ…どうせ寝るには早いし、偶には読書でも嗜むか。小難しいようでもないし。)
と、本音をにじませながら、
フローチャートを進めることにしたのである。
(どれどれ、最初の質問はっと…)
「あなたはお忍びで王宮の外に出ることがある」




