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今は亡き、モルフェウス

光の、なかの、完成、光、音、目に見える、無限。朦朧の扉を開けて、降臨する夢と、その、神に仕えるのか。いや、もはや、人間は、それほど、弱くない。だがこの煙、魅了する、紫の神秘。この香り、耐えがたい衝動は、まだ、我らの地中深く、根を張っている。百年以上、養分を吸い取ってきたのだ。人の心(それがみかけ、衰退しているとしても)、イメージ、そして、退廃に続く、病から。


墓掘りが、なぜ、あんなにも、痩せていたのか。説明できるか。冬枯れの刻、食べ物はなく、見よ、テーブルの上、未完の料理、半焼けのポテトを。まるで土をしゃぶるように、固い芋をかじる。薄暗い木造の小屋、それが、彼の家。彼は、猛烈な刺激の煙から逃れてきた。

「異常な昂揚と、都会の黙殺、俺はまるで、生き長らえた、犬(ワンワン!)、あわれな冤罪者!」

白い手が、すっと伸びてくる、そんな夢に、彼は怯える。毎夜、毎夜、腕の付け根には、モルフェウス!

「お前は、俺が、殺したのだ!」

だが、こんなにも、純粋な、白い肌、もしかして、いや、そうだ、モルフェウス! お前の曖昧な魂の境界は、まだ、人々、その、一人、一人の、純真な魂の部分を捕まえ、痺れさせている。

ああ、消えていくのか、煙のなかに。輪郭を失くし、溶け合い、個人に還り、もはや、流動せぬ、がらくた達の寄せ集め。意味達よ、言葉が持つべきもの、その所有のありかを巡って、まだ、答えを出せないのか。

おい、詩人達、言葉の故郷を思え。ただ思え。お前の所有となるべき言葉が、ただのひとつ、ひとつ、そう、ひとつでも、あるか? ではお前は誰だ(名を名乗れ!)?

ヴェルギリウス、ホメロス、アイスキュロス、

違うのか。

ブレイク、イェーツ、エリオット、

いや、違う。

ノヴァーリス、ゲーテ、リルケ、

でもない。

マラルメ、ボードレール、ヴェルレーヌ、

近い! お前の精神の川上に、ひっそりと顔を見せ、苦い表情で去っていく者達。退廃のゲートの先、だが、今は亡き、モルフェウス、その住処。

ああ、墓掘りよ、無知な、いや、無意識な必然、お前は、煙を避け、そして煙の主の墓を、生業に選んだのだ。その、痩せた細胞の、ひとつ、ひとつ、そこには、今、新たな免疫がある。心を狂わせ、崩壊の業で、言葉を飼いならす、そんな道徳に、抵抗する、ひとつの、滑らかさ、が、ある。

怖れることなく、手に取れ、鍵を。もうひとつのゲート、超越の、ゲート、その、鍵を。


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