三日月
そして次の日、
目が覚めた香澄は、身動きできない事を悟って、司の寝顔を、ぼんやり見つめていた。
―――――パチ――――
片目を開けた司と目が合った……
『起きてたの?』
『んーおはようのチュウしてくれんの、待ってたんだけど?』
…………ボッ…………
『昨日はあんなに『キャーやめて……』クククッ』
『……キャッ……んんっ……っん………』
『はよ。』
『おはよ……』
司の深いキスで真っ赤になった香澄は、恥ずかしくて顔を背けた。
『起きれるか?』
司に抱きかかえてもらって、起き上がったけれど、
………イタイ…………
顔をしかめた香澄。
『キャッ………ゎ……降ろして……恥ずかしい…………怖い………………ねぇ…』
司は、ニコニコ笑いながら、全裸の香澄をお姫様抱っこをして、バスルームに連れて行った。
そして………
『かすみちゃん?………か~すみちゃん……ごめんって……ね?…』
『もう知らない!今日学校あるのに………司のバカ……』
お怒りモードの香澄に、くっ付いて回る司。
バスルームで体を洗いっこしたまでは良かったが、
調子に乗って司はヤっちゃったわけで、
『ごめんって…』
―――――チュッ―――
……こうなったらなし崩しだ……
司は香澄の顎を持ち上げた。
『知らない……んん…っん………』
唇をキツく吸われて、ぼーっとした香澄に、
『いったん帰ろ、まだ時間あるだろ?』
司は優しく囁いた。
『ん、二限目からだから、間に合う……』
ムスッとしながらも、司から離れようとしない香澄に、司は幸せを感じていた。
………かわいい…………
『可愛い……香澄…………お前可愛いからつい……』
『いいよ……司だから許す……』
――――チュッ―――
昨日、香澄は実家での事を司に話した。
誰にも言えなかった胸の内を、さらけ出して泣いた。
司は優しく抱きしめてくれた。泣き止むまでずっと。
司の家の事も聞いた。
でも、司は怖くない。むしろ安心出来て、ずっとこの人の温もりに包まれていたいと思った。
『俺、いつか"下條"に頼らず会社を維持させてみせるから。』
『うん』
『お前がいれば、がんばれる』
『……司、耳赤いよ?』
『うっせー』
いろいろ聞いていると、1ヶ月前から香澄を知っていたと司が言い出して、香澄は驚いた。
『司を信じる。』
『ありがとうな。これ、お前に』
『司…………』
左手の薬指にはめられたダイヤモンドが、キラリと光った。
『月の光みたいに欠けることのない愛を、お前にやる。』
一生結婚なんて出来ないかと思っていた、司。
目の前にいる香澄が、何処にも行かないように、月に願った。
『司……嬉しい……』
抱き付いた香澄を受け止めながら、司は呟いた………
『愛してる』
……俺にこんな言葉吐かせた女、たいした女だぜ……
『今日は三日月だね』
窓から見える月の光に、香澄が言った。
『月、好きなのか?』
『うん、新月から三日月までは、肉眼では見えないの……でも、昨日、うっすら見たんだ……二番目の月……』
嬉しそうに微笑む香澄に、司は頬ずりしていた。
司も、幼い頃に両親と見た月を、思い出していた。
『月は光っていなくても、そこにあるのよ?』
と母が言うと、
『愛と同じだな』
父はそう言ったんだ。
見えないけれどそこにある光を、二人は信じていた。
『出会って2日で籍を入れてしまったけど、後悔してないよ?私、司について行く。』
司の腕の中で、香澄は呟いた。
『結婚って"Second Moon"みたいじゃない?目には見えないけれど、そこに光はある……。』
これから墓場までの長い道のりを、二人で歩いていく約束をした。
"Second Moon"に誓って……。
――カランカラン―カランカラン―――
11月になり、二人だけでこっそり、結婚式を挙げた。
きっとこれから、悩むことも、苦しむこともあるだろうけど…
『お前、俺から逃げようなんて考えんなよ!絶対逃がさねーからな。』
……ハイ…逃げられそうにないです……
『………キャッ……っ…………何?……ゃん…………』
『早く帰って続きヤるぞ。』
『………な………っ………』
『明日休みだろ?…寝かせねーからな。
最近エロくなったもんな~失神するまで感じさせてやるよ』
…………ボッ……………
『司のせいだからね!もぅ!私、こんなんじゃなかったのに………』
むくれる香澄を愛おしそうに見つめる司。
『責任とってやる』
――――チュッ――――
Second Moon――――完
読んで下さりありがとうございます。
端折った部分は“Second Moon Ⅰ”からのシリーズ版に加筆致しました。まだまだ続く司と香澄のその後も、お付き合い戴けると幸いです。