魔無しで追放された俺、ザマァするつもりがなぜか最強。チヤホヤまでは望んでないんだが
「出て行け!」
そう冷たく宣言したのは、俺の魔法の師匠であり俺の父でもある人だ。
俺は慌ててその場に跪いて頭を下げた。
「お許しください。更に精進しますから、どうかお許しください」
俺は、額を床にこする様にして土下座して許しを請った。
「ふん。目障りだ、出ていけ」
しかし師匠はまるで汚い物でも見るかのように顔を顰めながら言い放った。
「お父上様。どうかお許しください」
更に俺が懇願すると
「目障りだ!」
父の怒声が響き意識が吹っ飛んでいた。
☆
再び意識を取り戻した俺が最初に感じたのは酷い匂いだった。
いきなり大きく吸い込んだ刺激臭に激しく咳き込んだ後、自分の置かれている状況を見るために半身を起こして回りを見た。
ここは?
見渡す限りゴミの山だった。
俺は自分の置かれている状況に絶望して力無くもう一度横たわると曇った天蓋を眺めていた。その時、、、
「ほっほっほっ」
横から笑い声が聞こえた。
あまりにも声が近いことに俺は驚いて一瞬、全身を緊張させようとして、自分の置かれている状況に意識が戻り、馬鹿らしくなって全身の緊張を解くとその声の方を見た。
全く気配をさせずに近付いて俺を驚かせたその人は意外かほどに老人だった。
「ようこそ。罪人の島に」
その一言で、ここがどこか分かった。どうやら俺は『最果ての島』と呼ばれる、罪人の島にいるようだ、、、、
俺には、師匠に投げ飛ばされた時までの記憶しかないが、あれからどれくらい時間が流れたのか。
追放するどころか、罪人の島に飛ばすとは、血の繋がった親父とは思えない仕打ちだ。
「最果ての島か?」
俺は、一応確かめてみるために尋ねた。
「まだ若いのに、何をやらかしたのだ?」
「俺は何もしてないよ。取り立てて言うなら、魔法の世界に生まれた癖に、“魔無し”と診断されたのが俺の罪さ」
「ほう、魔法の世界? お前、魔伯の門下生か?」
やはりこの人は只者はないようだ。この俺から気配を悟らせずにこれほど近付けるだけでなく事情通らしい。
「どうしてそう思う?」
「その身成だと貴族様だと直ぐに分かるし、ミツワ王国の貴族で魔法の世界などと仰々しい発言。魔伯爵の門下生だろって誰でも察する。少しはできるようだがお前はどこまで修行したんだ?」
男の説明を聞いて納得した。普通なら自分の強さを吹聴しても何の益もないので誤魔化すところだが、もうそんなことも気する必要も感じられない。
「そうか。俺は奥伝だよ」
俺は少し面倒くさそうに答えた。
「奥伝? そんな達人が破門になるのかね?」
奥伝と伝えただけで俺が達人と分かるとは、それに気配の断ち方と言いこの人も魔法の世界にいる人なのだろう。
俺は初めて男に興味を持ったので、半身を起こして話し相手をよく観察しようとした。
しかしよくよく見ると、目の前の男は何でもない線の細そうな年寄りにしか見えなかった。流罪にされてしまうような極悪人には見えない。
「爺さん。奥伝って知ってるの?」
「誰が爺さんだ。奥伝って言やぁ、直弟子の中でも認められた特別な弟子の事だろ?」
「へー。あんたみたいな人が大層な博識なんだな」
「若けぇのにひねくれた物言いをする奴だな。それよりも、魔伯んとこには、魔聖と魔鬼の二人の直弟子がいたろ? お前は魔鬼の方なのか?」
男の質問に、思わず苦笑が出た。この人は驚く程の事情通のようだが、俺が魔鬼の訳がない。
「ははは。期待に応えられないのが俺の才能みたいだね。残念だが俺は魔聖様の方だよ。魔鬼じゃなくって悪かったな」
何しろあいつは化け物だ。俺がどうあがこうか決して魔鬼の域に達することはあり得ない。
魔法の神の化身のような美しい佇まいと凄まじいばかりの威圧感がふと思い出された。
直後自らの不甲斐なさに強い負の感情が五臓六腑を焼きつくすほどの苦悩を漏らした。
「ふーん。何でお前みたいな優秀そうな人材を追放するんだ? これほどの人材を簡単に捨てちまうとは当代の魔伯は、筋が良いって噂だったが、魔法が少しばかり上達して増長したのか? 人材がいかに貴重なのか分からないほどの間抜けなのか?」
その呟きを聞いて、目の前の老人の見識に驚きを感じた。
この人は、少し事情通の老人って程度の人となりではなさそうだ。
魔法の伯爵、それが俺の師匠だ。人呼んで魔伯、ミツワ王国の重鎮の一人であり大貴族であり魔法の世界の頂点に立つ偉人だ。
そんな師匠に対して、そこまで言えるのは普通じゃない。
俺は初めて、相手の真価を確かめるために老人を鑑定する事にした。
──────何ッ!! 鑑定できないだと!
この瞬間俺は悟った。この人はとんでもなく強い。ミツワ王国最強の魔法使いである父すら軽々と鑑定してのける伝説級の鑑定能力のはずなのに、、、
そして俺は、とある伝説を思い出していた。
俺も詳しくは知らない。人里を離れたとある場所に、想像もできない高位の魔法の仙人がひっそりと暮らしているとの言い伝えだ。
魔法の世界において密かに囁やかれている伝説である。
その仙人は見てくれは普通の人。魔法の才能がある者だけに話しかけると言う、、、
それが、俺の目の前の人。
俺の直感がそう言っていた。
「もしや貴方様は、魔法を統べる大神様ですか?」
「あー。俺は、大神と呼ばれるほどの者じゃねぇよ。神の端くれではあるがな。それよりも、お主ほどの器は珍しい。望むなら鍛えてやってもよいぞ」
こうして俺は神の弟子となった。
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