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最強希少な氷魔法でかき氷作って何が悪いっ! ~二度と熱中症で死にたくない俺のひんやりな日々~  作者: 朝森朔来


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第2話 ミルクティー色はシトラスの香り

 ルシオのあまりにしょげた姿を見て、慌てて駆け寄る。


 その間、するすると小さくなっていくルシオ。いつもの大きさ、俺の腰あたりに頭がくるくらいまで大きさを変えた。


「お前、体の大きさ変えられたんだな」


 いつもの大きさに戻ったルシオに安心し、優しく頭をなでて、モフを堪能する。


「大きいお前も、背に乗れそうでいいけどな。飛べるし」


「なぁぉん、なぁぉん」


 と、「隠しててごめん」とでも言っているのか、それとも甘えているのか、そんな鳴き声。


「そんなに大きくなれたのか!? って驚いただけだ。どちらでもこのもふもふは変わらないし、可愛いからな!」


 ほら、レッドボアの血抜きをしてやるから。そんなに落ち込むなよ。明日のごちそうの準備もしておこうな!


 そして猫の毛とはまた違った、翼のほわほわした感触をモフり、堪能する。


 あぁ、癒されるこの手触り。今さらルシオを手放せるわけない。大事な家族なんだから。




▲▲▲




 去年の討伐の後、季節を一つ過ぎた冬の始まり頃、カミルが俺の家を訪ねてきた。


 カミルはこの世界で初めて会った人物であり、その頃から今まで何かと世話になっている。


「トージ。約束通りこの島では手に入らない果物を持ってきたよ」


「……?」


 約束ってなんだっけ? 首を傾げ考えているとカミルが袋を差し出してきた。中を見ると茶色に近い橙色の果物。香りは、柑橘系。


「オレの故郷の果物だ。実は苦みが強く、パサついて美味しくない。主に観賞用や、その香りを楽しむために植えている。薬草として使われているので、食べても問題はない」


 これを、トージなら美味しく食べられるようにできるんじゃないかと思って取り寄せたって?


 約束は、リヴァイアサン討伐の時したもので、珍しい果物を持ってくるとかなんとか。

普通に食べられるものがいいと思いつつ、律儀に約束を覚えていて、守ってくれたことは嬉しい。


 袋から一つ取り出して、皮をむき、実を確認してみる。


「ありがとう。ただ、この実は俺でもどうにもできそうにない」


 「そうか。トージでも無理なら仕方ないね。それで、このビターオーレンは秋の終わりくらいから収穫が始まり、ちょうど今が旬だ。トージのために、採れたてを取り寄せたんだ」


 オレンジの原種みたいなものかと、勝手に思う。


 オレンジもどきは、香りだけなら日本にあったオレンジのいい香り。皮は砂糖で甘さを補えばオレンジもどきピールにはなりそうだ。




▲▲▲




 今日は、そのとき作ったオレンジもどきピールを使ったかき氷を食べる。


 ミルクティーかき氷だ!



 氷は、温めたミルクにアールグレイに似た香りの茶葉を加え、この世界では少量しか流通していない高価な砂糖を入れて作ったミルクティーを瞬間凍結。氷魔法最高!


 俺と氷魔法の相性は抜群だ。なんてったって、俺の日本での名前は氷上凍司ひかみとうじだからな。これが火魔法だったら笑う。本当に名前が関係してるのかはわからない。


 この瞬間凍結がなければ、さらさら氷はできない。さらに、削る直前まで冷え冷えでなければならない。


 ほんのりクリームブラウン色の氷を削り、さらさらで細やかな氷を器に盛っていく。


 日本のかき氷専門店で食べていたふわふわ氷もいいのだが、俺の好みは断然、このさらさらした氷だ。もちろん、種類によっては、シャリシャリ氷やふわふわ氷も食べる。


 夏の好物だからな。涼しくなれるし最高だ。



 合わせるソースは特製! 濃厚紅茶ソース。


 ソースに使う茶葉に、オレンジもどきピールとレモンピール、そして矢車菊の花びらをブレンドした。


 俺が日本で好きだった、某世界的に有名な紅茶メーカーの『レディ◯◯◯』というブレンドの真似だ。


 まさに紅茶ずくし。紅茶を存分に味わうためのかき氷! 余分なトッピングはなし。気分で茶葉を変えれば、また違った味わいになる。色々試して自分の好みを探し出すのも、また楽しい。


 それをエスプレッソのように濃く、濃ーく入れる。冷まして練乳と合わせれば濃厚紅茶ソースの完成!


 じわじわと、ソースをかけた周りの氷を溶かしながら、ミルクティ氷に染み込んでいく様を見ていると


「ごくり」


 と待ちきれず、喉がなる。スプーンでひとすくい口に入れる。氷はふわっと消え、ひんやり冷たさだけを残して溶けていく。


 濃く入れた紅茶ソースの渋みが、甘さをおさえ引き締めている。どこまで食べても紅茶が深く味わえる。


 最後に溶けた氷を一気飲みしても、薄まっていない濃密なアイスミルクティー。


「はふぅ……」


 大満足したため息が漏れた。



 寝椅子に横たわりのんびり涼んでいると、寝椅子にひょいと昇ってきたルシオ。もちろんなでてモフる。気持ちいい海風に眠気を誘われ、そのまま少し昼寝。至福の時である。



 息苦しい。何かに胸をぐっと押さえつけられている。夢か?


「ううん……」とうめきながら、意識がだんだん浮上してくる。ザリザリした舌で頬を舐められる。うん、これはルシオの舌だ。そして夢じゃなく現実だ。


 ルシオが俺の上に前足をのせている。息苦しかった原因だ。しかし、かわいい愛猫に起こされるのはとてもいいものだ。


 ルシオをなでて、目覚めのモフり。



 一眠りしてスッキリしたので、明日の予定を考え始める。


 「今日、ギルドに素材を売りに行ったとき、南の大陸から大型商船が入港した話をしていたな」


 素材の状態が良く高く買い取ってもらえたし、明日は依頼を受けなくてもいいか。ならば、港の朝市へ行こう!


 南国の食材やこの島で手に入らないものがあるかもしれない。どんなものがあるのか、宝探しの気分でテンション上がる。今から楽しみすぎる!

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