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最強希少な氷魔法でかき氷作って何が悪いっ! ~二度と熱中症で死にたくない俺のひんやりな日々~  作者: 朝森朔来


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第1話 白とピンクのさらさら娘

 目の前の海には氷漬けにされ、首を刎ねられたリヴァイアサン。


「うぉぉぉ、倒したぞっ!」

「やった!流石ですトージさん!」

「すごい威力の氷魔法だった」

「一瞬で凍らせたからな。あのリヴァイアサンを!!」


 船の上で、次々湧き上がる歓声と称賛の声。


「あのリヴァイアサンを氷漬けにするなんて、トージ以外には無理だな」


 そう言いながら俺の肩を軽く叩いて、ねぎらいの言葉をかけるのはこの船の船長。


「もうそろそろ終わるとはいえ、まだ季節は夏。残暑も厳しいなか、こうやってトージが討伐に参加して働いてくれるなんて、望外の喜びさ!」


 この討伐をリーダーとして指揮した冒険者のカミルに、俺は言った。


「夏は気温が上がる前に仕事を終え、暑くなったら休む。それが当然だ」


 なぜなら俺は前世、酷暑の中、外回りの仕事中に熱中症で倒れ、そのまま命を落としたからな。そして、十六、七歳くらいに若返りこの異世界に転移した。


 だから、この異世界に来てから夏は働かない。シエスタバンザイ! の精神でやっている。幸い、この氷魔法が使えるおかげで金には余裕があるからな。


「いやー、本当に倒してしまった。ありがとうございますトージさん。これでやっと本国に戻ることができます」


 商人がカミルの隣にやって来た。


「いやいいんだ。今回は特別だ。これでやっとあんたの故郷にしかない、あれが手に入るからな。緑の宝石と言っても過言ではないアレをな!」


 商人に「ぜひよろしく頼むよ」と、念押しの固い握手をする。それは、このリヴァイアサンがいた海の先の群島地域にある『緑色の粉』のために、今回この討伐に参加したのだ。


「結局そのためか。そのためなら本当に何でもするんだな君は。そして最強で希少な氷魔法をそれに惜しみなく使うとはっ! なんたる無駄遣い」


 大げさな身振りで額に手をやり、頭を横に振って、残念な子を見るような視線を俺に送るカミル。


「お前も美味そうに食ってたじゃないか、カミル。無駄と言うならもうやらんぞ」


「そ、それはダメだ。トージの作るあれは他のと違って絶品だからな。そうだ、珍しい果物を手に入れるから、それで勘弁してくれないかい?」


 うむ、それは悩むな。少し考えて、現物を確認してからという結論を出そう。


 スルリと割り込んで、俺の腰の辺りに顔をスリスリしてくるのは、リヴァイアサンの首を光魔法で見事に刎ねた相棒兼ペット、ウイングキャットのルシオ。


 その種族名そのまま、翼のある大きな猫型の……動物? でいいのか。異世界不思議生物だ。前世、忙しすぎて飼えなかった猫。念願かなって、今、最強で最高の相棒としてモフり倒している。体毛と翼のモフが違ってまたそれもいいのだ!



 よし! 今から、この海を越えた先にある群島地域へ行き、緑の至宝、アレを手に入れるのだ。




◆◆◆




 そんなこともあったなぁと、去年の夏の終わりのできごとを思い出しながら、仕上げのトッピングを盛り付ける。


 完成したのは苺ミルクかき氷。



 季節は初夏。


 島にある港を中心とした街から少し離れた高台に、俺の家がある。海が一望できる立地で、一階リビングからは外のウッドデッキへ自然につながっている。そばに植えたクワの木が昼寝にぴったりの柔らかな木陰を作っている。


 その下で今日のかき氷を食べる。


 氷はミルクに自家製練乳を少し加えたものを、俺の氷魔法で瞬間凍結させたものだ。そして削る直前までマイナス二十度で保存しておく。役立つ氷魔法、最高!


 それをドワーフ特製マシンで削る。これは刃の鋭さにこだわり、熱を抑え冷却する機能付き。魔法と魔法石、魔法陣を使い作成された魔道具だ。


 さらさらしたキメの細かい真っ白な氷が、こんもり皿に盛られている。そのてっぺんから大きめに切られた苺が入った真っ赤なソースがたっぷりかけられている。


 氷の周りは半分にカットした苺がぐるりと囲む。



 スプーンでひとすくい、口に入れる。さらさら食感の氷。そのひんやりとしたミルク氷がすっと溶ける。ほんのり甘いミルク氷に、苺の甘く、ほのかに酸味があるソースがよく合う。


 二口目は苺も一緒に食べる。ミルクと甘い苺ソース、フレッシュな苺の酸味と香り。ソースに入っている苺とは違う、新鮮な苺の果肉の食感が合わさり、口の中いっぱいに広がる。


 「はぁー。冷たくて美味しい」


 何よりの幸せを感じる、至福の時間。


 このためならば、日の出前に起きて狩りや訓練、依頼をこなしたりなど些事。


 むしろ暑い午後に、冷たいかき氷を食べるための前準備としては、いいことだとすら思う。


 涼しいうちにやることを終え、暑い時には無理せず休んで涼む。



 そうして、かき氷を平らげ一休み。


 ふとかき氷を作っているときには隣にいた、相棒兼ペット、時々従魔なルシオがいない。いつもなら食べたあとは昼寝をするのだが……。辺りを見回してみる。


 裏庭の方から、何か音が聞こえる。


 ずるずると引きずり、最後に「どしん」と音を立てて何かを落とした。気になって気配と足音を消して裏庭へ周りこっそりのぞく。


 横たわる捕らえた獲物だろうレッドボアの横に、獲物を仕留めたルシオらしきそいつがいた。初めて見る、俺を超えるそいつの大きさに、俺は言葉を失った。


 「お前……いったい……?」


 思わず、ぽつりと小さくつぶやいた声を拾ったそれは、耳と翼をぺしょりと伏せ、尻尾もだらりと下げていた。






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