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遅刻の反省文と死生観

テーマ:雑談


【場面】県立夢見高等学校~ダンス部の部室内


みみが部室内の机に向かって作文を書いているところに、扉を開けてももが部室に入ってくる


もも:おっすー

みみ:ちーっす

もも:あれ?今日は作文?

みみ:ん、そう。反省文。遅刻10回目だから

   もうホントゲキヤバなんだけどー

   反省文なんて絶対書けないよー

   25文字以上文章なんて書いたことないもんー

もも:ぎりぎり国語の問題とか解けなさそうな文字数…

   でもみみ、ほんとよく遅刻するよね。家近いんでしょ?

みみ:徒歩5分

もも:いいなー私は電車で40分はかかる

みみ:でも近い方が逆に難しいんだよね

   今日なんて起きたら8時20分でさ

   遅刻10回目は反省文だって知ってたから普通に死んだと思ったもん

もも:遅刻10回は反省してほしいが、死にはしないだろう


みみ:いや、でもマジで世界がスローモーションになったもん

もも:それ間に合う時のやつでは?

みみ:ああこのままあたし死ぬのかなって本気で思ったわけ

   川の向こうのめちゃかわ花畑とか見えたし

もも:スローモーションなら普通は走馬灯じゃね?

みみ:そんで、知らないおばあちゃんが向こう岸であたしに手を振ってきてたの

もも:知らないおばあちゃんなんだ

みみ:うん、うちのばあばはまだ生きてっし

   この前一緒にカラオケ行って、二人でお嬢の歌いっぱい歌ってっし

もも:お嬢って誰?

みみ:え?知らない?ばあばがお嬢お嬢呼びするから名前はあたしも知らないけど

   なんか川の流れがどうとか歌うめっちゃ歌上手い芸能人だよ

   よく考えたらその人が川の向こうで手を振ってくれてたかも

もも:だいぶ大物キャスティングしたな

みみ:まぁ結局死ななかったけどね

   急ぎすぎて走って転んだから膝ちょっとすりむいちったけどね

もも:それで死ななくてよかったよ


みみ:でもその時にバカなあたしはついに思っちゃったのよ

   あたしって今生きてるのかなって


【話頭転換】

テーマ:存在論~みみは本当に生きているのか


もも:え?幽霊の可能性あんの?足見せて足

みみ:いや普通に足は生えてるってしょ

   よく見てよ

   あ、やっぱいまのなし

   あんまり見ないで。少し太ったかも

もも:筋トレしよう

みみ:いやあたし筋トレとかしたことないし

もも:みみダンス部だよな?


みみ:そーだけど、そんなんどーでもよくて!

   あたし気付いちゃったわけよ

   生物の授業で単細胞ってやつらって生きてるって小山T言ってたっしょ?

   ミドリちゃんとかゾウリちゃんとか

もも:ミドリムシとゾウリムシかな

みみ:そそ、それ

   そいつらがたくさん集まってあたしになってるんだよね?

もも:まぁみみがそれでいいなら


みみ:でもそれだとあたしを作ってるミドリちゃんとゾウリちゃんって生きてるってことだよね?

もも:まぁ確かにみみの細胞一つ一つは生きてるとも言えるね

みみ:つまりあたしを作ってるミドリちゃんたちは生きてて、

   ご飯食べたり、寝たり、インスタしたりしてるわけでしょ?

もも:インスタはないと思うけどな

みみ:つまり本当に生きてるのはそのミドリちゃんで

   あたし自身は生きてるんじゃなくて

   ミドリちゃんが集まった街なだけじゃね?

もも:詩人だね

みみ:これってスイミー的な発想だよね

   あたしは人間のように見えるように沢山のミドリちゃんによって象られている集まりでしかなくて

   その中であたしが思ってるあたしってば実はそのミドリちゃんをコントロールできるように作られた

   ただの司令塔なんじゃないかなって

   ナカタみたいな

もも:そこはスイミーであれよ

みみ:でもだとしたらあたしってばナカタ以上に偉くない?

   こんな沢山のミドリちゃんをまとめ上げてさ

   人の中にミドリちゃんって無限個くらいあるんでしょ?

   いまだかつて無限の人を従えた司令塔なんかいたことないでしょ?

もも:サッカーは11人しかいないからな

みみ:つまりあたしが歴史上サイキョーだと言える

   ももくん敬ってくれたまえ

もも:いや、その理論だと私も同じレベルの司令塔だが?

みみ:な、ライバルか?

もも:なんならナカタはそれをさらに11人分指示してたわけだが?

みみ:負けたー

   ナカタもっと強かったー

もも:だからすごいし、有名なんだろ。私はあんまり知らないけど


みみ:とにかく、あたしが言いたかったのは

   あたしは生きてるわけじゃなくて、あたしのミドリちゃんが生きているのに

   みんなはあたしの心臓ぽよが止まったら

   あたしが死んだと思うわけじゃん?

もも:そりゃな

みみ:でもそれって本当にあたしの死なのかな?って


【話頭転換】

テーマ:死生観~みみはいつ死ぬのかについて


もも:どういうこと?


みみ:だってあたしの中のミドリちゃんたちは多分まだ生きてるんでしょ?

   司令塔いなくなっただけで、あたしって街が残っていたらまだインスタしてるわけじゃん?

もも:だからインスタはしてない

みみ:それって本当の意味ではあたしはまだ生きてるくない?

   あたしが思うあたしはいないけど

   あたしと呼ばれる身体はまだ生きてる

   つまりあたしは永久に不滅じゃね?

もも:そこはサッカーネタで統一しろよ


みみ:でもあたしの意識はその身体にはないってことだよね?

もも:まぁそうだろうね

みみ:それは困る!

   意識なかったら絶対あたしの身体ダイエットとか化粧水とかサボると思うんだよね

   あたし基本サボり魔だから

   毎日9時になる呪いの目覚ましでなんとか乗り切ってるのに

もも:この前お泊まりした時はマジであれびびったよ

みみ:あれあたしも毎回びびってる

   でもだから本当に呪われないようにサボらないで済んでる

もも:待て、あれ聞いて化粧水サボったら呪われんの?

みみ:うん、そだよ

もも:私呪われてんじゃん

みみ:えー?でもももは可愛いから大丈夫だよー

もも:そういう問題じゃないだろ…

みみ:でもどうしよう、あたしの身体がメイクしないで学校とか行くとかなったら

   あたし普通に生きていけないんだけど

もも:もうそのあたしの意識は生きてないって前提だけどな

みみ:そっか。生きるってむずかしいねー

もも:まぁ簡単ではないが、ダブルミーニングすぎる


みみ:でも意識も生きてないって言い切れないよね?

   身体を離れただけかも!幽体離脱ってやつ!


【話頭転換】

テーマ:幽霊の解釈~幽霊の実態とは何なのか


もも:幽体離脱なんてさすがにないだろ

みみ:え?でももしあたしの意識が無限のミドリちゃんでできてるこの身体に宿って指令を与えられるのなら

   その意識が空気中に舞ってるインフル菌に宿ることだってありえるんじゃね?

もも:ここまで来てから突っ込むのもなんだが、

   そもそもあんたの意識は元々ミドリムシには宿ってない

みみ:でもだってミドリちゃんでできることがインフル菌でできないことなくない?

   インフル菌のが強いっしょ?

もも:うーん多分弱いんだと思う

みみ:じゃあ花粉とかでもいいよ

もも:花粉も実は弱いんだなぁ


みみ:でもそういうものに意識が宿っちゃえばいいわけじゃん?

   そうすればその花粉とかの司令塔になって

   行動できるようになるんだよ!

   そうしたらももを襲ったりしちゃってね

   幽霊みたく

もも:いや、それは幽霊より断然怖いものだ。花粉だよ。私は花粉症なんだ


みみ:知ってた

   でも、その花粉とかに宿る司令塔ってのがみんなが言う幽霊ってやつなんじゃね?

もも:まぁもし花粉に宿ってそれを操れたら幽霊っぽくはなるな

みみ:つまり幽霊って花粉なんだよ!

   見えないから今までびびっちゃってたけど

   正体を知ったらなんだ、花粉なら全然楽勝じゃね?

もも:私にとってはむしろより強大な敵になったがな

みみ:マスクすればいいんじゃね?

もも:花粉症なめんなよ?

   99%カットは症状が99%カットになるわけじゃないんだぞ?

みみ:あーでもそっかーなんだびっくりしたー

   つまりあたしが死んでもミドリちゃんは生きるし

   あたしも花粉幽霊になるだけなんだ!

   なら遅刻したって怖くなくね?


もも:いや、そもそも遅刻では死なない

   だが、遅刻はもうするな

   遅刻者が多いとダンス部が活動停止とかになりかねん

みみ:おっと

   そりゃ部長に息の根を止められちゃうわ

もも:その時は今度は本当に走馬灯も見てもいいぞ?




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