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第16話

 愛花は拳銃を構えると洞窟の先にある小道を登っていく。そこは森に通じており既に吉川の姿はなかった。


 古川の今後の行動予測としてできることは森に隠れるかホテルに隠れるか。それでターゲットが私なのであれば十中八九ホテル、さらに言うと私の部屋に来る。いやこうしている間にもう来ているかも知れない。切り札の拳銃を忍ばせながら彼女はホテルの自分の部屋へと向かった。


 数刻ぶりに訪れる部屋はそのままのように思えたのだが、どこに毒物が仕込まれているか分からない。

 古川は私が拳銃を持っていることを知っている? 逃げたフリをして洞窟内に潜んでいたのなら私が拳銃を手にしたことを知ることができる。そこから走ってホテルに戻って部屋に毒を仕込む……ない話ではなさそうね。

 毒物を警戒した愛花は思い切った行動に出ることにした。

 太郎の部屋、あそこならば扉が壊れているとはいえ……いや壊れているからこそ誰かが利用するとは考えられない、故に毒を仕込まれている可能性はなくいざ近寄られ強硬策に出た時は銃を持っているこちらが有利だ。

 愛花はさも部屋に入ったように扉を閉め鍵をかけるとその足で三階の太郎の部屋へと向かった。


 〜〜

 太郎の部屋は昨日と同じように壊された扉が辺りに散らばっており以前のままのようになっていた。

 読み通りこの部屋には古川の手が及んでなさそうだ。

 愛花は安堵のため息を漏らし室内に入る。ところが室内に入ってあるものが目に入る。

 それは、ベッドと正反対に置かれた椅子とその前に垂れ下がっているロープだった。


「何よ……これ……」


 これじゃそして誰もいなくなったまんまじゃない。バカにしないで、そんな思い通りに自殺なんかしなくても迎えが来れば……

 ……迎え?

 愛花の心がざわつく。迎えが来た際に警察に協力を仰ぐ形になるだろう。そして警察は……血塗れで拳銃を持っている愛花を見て何を思うだろうか? 血液は介抱の際に付着したもので拳銃は犯人から奪ったものを譲り受けたという話を信じてくれるだろうか?

 古川が見つからない今、状況が指す犯人は私だ。他の凶器は恐らく海に捨てられ見つからない中、自分の指紋がついた拳銃を持っているのだから……。

 かといってこの拳銃をどこかへ捨て無罪放免としようとすると古川がこれ幸いと息の根を止めに来るかもしれない。古川に怯えながら耐えても待っているのは犯人と疑われている状態での尋問、事務所もどうなるか分からない。そんなことになるのならば……ここで終わらせて楽になってしまうと言うのも今では魅力的に感じてきた。


 これは古川の策略ではなく慈悲なのだ。


 そう思い込んで愛花は椅子へと足を運び乗ると垂れ下がったロープに手を伸ばした時だった。


 ミシッ


 入口の方で音がした。恐らく古川が扉の破片を踏んだのだろう。咄嗟に愛花は拳銃を構える。


「古川なんでしょ! 早く出てきなさい! 」


 迫力を上げ叫ぶと更にミシミシ破片を踏みこちらへ来る音がする。


「残念だけど、その推理は外れだよ」


 そう口にしながら現れたのは最初に殺されたはずの太郎だった。

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