第9話 融合鍵を奪え!謎のひげのおっさん登場!!
森の奥深く、巨体を揺らして現れたのは、全高5メートルを超えるパラソルゴーレムだった。
全身は謎の金属で覆われ、肩にはバズーカのような砲台、背中のビーチパラソルには――輝く青い結晶。まさに探していた「融合鍵」だ。
「やっぱ、あのキラキラが目的のアレだよな……?」
「間違いありませんわ。けれど、あれをどうやって奪うかが問題ですわね……」
ゴーレムが唸り声のような音を上げ、肩の大砲をこちらに向ける。
「って、まずは生き残るのが先だよセシル!!」
「きゃっ!?」
ドォォンッ!!
爆風と共に、地面が爆ぜた。土煙を上げて避けた俺たちは、すぐさま木陰に飛び込む。
「おいおい、これもう中ボスってレベルじゃねーぞ!?」
「しかも、魔法障壁で直接魔法が効きませんわ! どうしましょう、レオンさん!」
こうなりゃやるしかねぇ!
「出てこい、《ランダム・アームズ》!!」
キュイン、キュイン、バシュッ! いつもと違い、虹色の光が炸裂し、俺の前に現れたのは――
巨大なマグロ。否、マグロを担いだひげのオッサンだった。
「ウオォォォォォオ!!サウナはここかーーー!!」
誰!?って言う前に、オッサンは全力ダッシュでパラソルゴーレムへ突撃!両手でマグロを振りかぶり――
「マグロ・スラァァァシュ!!」
ドカァァン!!!
信じられない一撃だった。衝撃波が広がり、周囲の木々がしなる。パラソルゴーレムが、よろめいた。
「な、なに!?物理攻撃が通ってる!?」
「いえ、あれは……ただの魚ですのよ!?なんで金属装甲に効いてるんですの!??」
「常識をぶん投げてんなぁ!このオッサン!!」
オッサンはお構いなしにマグロを振り回す。右から、左から、上段から――
「マグロ・バースト連撃!!!」
ドゴォン!バコォン!ドガガガガッ!!
無慈悲なマグロラッシュに、パラソルゴーレムがたじろぎ、オーバーヒートし、煙を噴き出した。
その一瞬、オッサンはパラソルの青い結晶に狙いを定めた。
「ここがコアだな……ならば、トドメは――!」
オッサンの周りにオーラが浮かび上がり、何処からともなく音楽が、鳴り響く!
え、魔法!?いや、あれは……!
「まさか、サウナ・オーバーヒート!!!!!?」
「な、何ですかその魔法!?え、音楽!?こんなの聞いたことありませんわよ!!」
オッサンはマグロを構え、腰を落とした。全身からほとばしる気合。地面がビリビリと震える。
「これが、本気だァァァアア!!
『サウナ・オーバーロウュ!!!!!!』」
マグロが水を噴いた。いや、実際にはエネルギー弾となって飛翔し、パラソルゴーレムを直撃――!
ドッゴオォォォォォォン!!!
眩い閃光と爆音。結晶が砕け、ゴーレムがバランスを崩し、そのまま後ろへ――
ドシャァァン!!
大木をなぎ倒して倒れ込んだ。
……静寂。
「…………」
「…………」
「…………マジで、伝説のサウナーは存在したんだ……」
「変態……ですわよね……?」
砂煙の中から、オッサンが立ち上がる。肩にマグロを乗せて、にやりと笑った。
「ふぅ、久々に燃えたぜ……じゃあな、若ぇの。あとは任せた」
そう言い残して、オッサンは木々の影へと姿を消した。
「……え、あの人誰?味方?敵?漁師?」
「もはや概念だ。……サウナの神様」
何故か感動している、レオンを尻目にゴーレムの残骸に近づく。背中に輝く破片――融合鍵の一部が、まだ光を保っていた。
「良かった……残ってましたわ!」
「これで動かせるな!」
浜辺に戻ると、宇宙船――《エアリアル》の起動台座に融合鍵をセット。
『融合鍵、認証完了。空の方舟、起動準備に入ります』
ゴウン……と低い音を立てて、船全体が淡い光に包まれた。
「これで……この島から出られる?」
「少なくとも、空は飛べるはず……!」
その瞬間、俺の胸が高鳴った。
この島の謎、空の旅、そして異世界の真実――
まだまだ、ワクワクすることが待ってるに違いない!
ひげのおっさんの正体は、『ひげ vs おっさん 〜灼熱の中、互いに握る鮮魚で壮絶な戦いを繰り広げる~(フィッシュファイト開幕ッ!!)』をご覧ください。https://ncode.syosetu.com/n5064ke/