第8話 目覚めよ、空の方舟(エアリアル)!
巨大な扉の先、操縦席のような部屋に足を踏み入れた俺とセシルは、しばらく呆然と立ち尽くしていた。
「これ、絶対にやばいやつだよな……」
目の前には円形の椅子と無数の操作パネル、天井には星空のように輝くモニター群が並んでいる。
明らかに、ここだけ時代が違う。いや、世界が違う。
「レオンさん……この船、本当に空を飛べると思いますの?」
「飛ぶどころか、宇宙まで行けそうな勢いだな……って、冗談抜きでこれ、ヤバい発見なんじゃ……?」
しかも、中央の台座には一つの名前が表示されていた。
『空の方舟:システム起動準備中』
「空の方舟……名前ついてるとか、ますます厨二心が疼くわぁ」
俺がニヤニヤしながら台座に手を置くと――
ピピッ、と短い電子音が鳴り、周囲のモニターが一斉に点灯した。
『搭乗者確認。エネルギーコア:不完全。起動には“融合鍵”が必要です』
「やっぱり、すんなり動かせるわけないよなー!」
どこか期待してた自分を殴りたい。
セシルがモニターを覗き込んで言う。
「この“融合鍵”というのが必要ですのね。でも、どこにあるのかしら……?」
その時――船内の一角から、小さな震動が走った。
コココ……と音を立て、壁がせり上がり、立方体の箱が出現する。
『ミッション:融合鍵の回収。座標データ、転送中』
「おぉ、なんか急にゲームみたいになってきたぞ……!」
「つまり、“鍵”がこの島のどこかにあるってことですわね?」
「だろうな。ってことで、セシル副隊長、探検再開といこうか!」
「了解ですわ、隊長!」
俺たちは再び島の探検に向かうことを決め、方舟の扉を後にした。
目指すは――融合鍵が眠るという、島の中心部。
が、その道中。
「ん……?」
森の中を歩く俺たちの前に、突然空が暗くなった。
ぶぉぉぉん……という低い音が辺りに響く。
「な、なんだこの音……!?」
空を見上げると、そこには黒い影――飛行する機械の群れがあった。
「ドローン……!? いや、魔法生物か!?」
どちらにせよ、こっちを敵と認識したらしい。
「おいおい、こっちはまだ準備できてないってのに!」
俺は慌てて《ランダム・アームズ》を発動!
バシュッと光が弾け、召喚されたのは――
「……ビーチボール!?」
「またハズレですの!? どんな確率してるんですか!」
「いや、これはこれで使える! くらえ! 必殺!ぷよぷよレシーブ!!」
思い切り投げたビーチボールが、敵ドローンに当たりポンっと落とす!
「落ちた!? わぁ!? あたりましたわ!!」
「だろ!バカみたいでも、使い方次第ってやつよ!」
戦いの中レオンは絶好調。セシルの魔法と連携しながら、敵ドローンたちを次々と撃墜していく。
だが、最後の一機が墜ちると同時に、森の奥から聞こえた――
ズズン……ズズン……
「……セシル、今の音、聞こえた?」
「ええ。明らかに……でかい、ですわね」
木々を押しのけ、姿を現したのは――
巨大なゴーレムだった。背中にはビーチパラソルが付いていて、持ち手の所に光る結晶が埋め込まれている。
「ボス級、来ちゃったな……!」
武器は――まだわからない。でも、手は抜かない。
「いくぞセシル! フライパンでもビーチボールでも、俺の手にかかれば最強なんだよ!」
「はいですわ、レオンさん! 今日こそ、伝説級の当たりを引きましょう!」
俺たちの次なる戦いが、始まった――