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01 異端者

 


 (あぁ、きれい..だな....)


 彼女は窓側の席で周りの様子など気にせず、退屈な様子で一人黄昏れていた。

 (あぁ、もう高校生か....んー..中学....一瞬で溶けたな......中学......何したっけ....?...............何もして....ないなぁ.......)

 彼女の名前は片月 星蘭(かたづき せら)。運動神経抜群で、勉強もできる。更にはリーダーシップ・コミュニケーション能力にまで優れており、「模範生」と言っても差し支えなく、周りからの評価は素晴らしいものであった。

 だが彼女には、将来の夢も目標もなく、特にそれと言ってやりたいこともなかった。興味があることがないわけではないのだが、今の生活でも十分時間の余裕などなく、わざわざ時間を空けてまでして、なにかしたいとは思わなかった。

 そうして、星蘭がぼんやりと外を眺めていると、突然「ガララッ」という音がして、教室の教卓側の戸が開き、一人の不格好な男子生徒が入ってきた。

 「遅れましたー。藍でーす。」

 入ってきた男子生徒がそういった瞬間、教室中が静まり返った。皆は唖然としており、担任教員も戸惑っていたがすぐに我に返り、不格好な男子生徒に指を指して席を教え、それまで話していた内容に戻った。皆もしばらくは何が起きたか理解できてなかったのか静寂に包まれていた教室であったが、少しすると教室は再び生徒たちの声で賑わい始めた。

 その後は特に何もなく下校時間となったが、星蘭は首席生徒であったこともあり、担当教員に止められお礼などを言われた後、少し遅く学校を出た。そしてそのまま学校の敷地を出ようとしたところ、何か嫌な気配がして本能的に体育館裏へと向かい、恐る恐る覗こうとすると......。

 「「ムカつくんだよ!!!!」」

 がたいの良い三人の男子生徒が朝の不格好な生徒を取り囲んでいた。何やら入学初日から、不良が他生徒にからんでいるようだった。だが不格好な生徒は焦っている様子も怖がっている様子は無く、そんな様子を見た不良三人組は更に機嫌を損ね、激昂し始めた。

 星蘭は不思議に思い、あの男子生徒が絡まれる理由を探し始めたが、(あれ?今私がしてることっていじめの傍観者じゃね!?)とやっと気づき、止めに入ろうとすると、絡まれていた不格好な男子生徒がニヒルな笑みを浮かべ、話しだした。

 「え〜っとー....つまり..なにが言いたいの......?もう少し端的に言ってくれない....かな?」

 松本たちは気圧され、うろたえており、星蘭も想定外な不気味な笑みに、恐怖を感じ逃げだしたくなったが、本能的なものなのか、それとも興味からなのかはわからないが、目を離すことができなかった。

 やがてやっと勇気が出たのか、不良の一人が震えながらも精一杯声を張り上げる。

 「「お..俺は!!醜い面して入学初日から遅刻してくるお前が!!..........気に入らねェんだよ!!!!」」

 その瞬間その場の空気は一気に重くなり、不格好な男子生徒が重いため息を吐いて軽く舌打ちをしたあと、不機嫌な様子で荷物を背負いって松本たちを無視してその場から去ろうとした帰り際、一言呟いた。

 「....話になんねェよ。」

 そう不格好な男子生徒が言い放った瞬間、不良たちの首が飛んだと思ったら、不良たちのたちの体はもうなく、あったのは帰ろうと星蘭の方に向かってきている不格好な男子生徒のみであった。

 星蘭は自分の立場が危ういとわかっていたが、今見たことの衝撃と恐怖により、体を動かすことができなかった。星蘭は今までにないほどに焦ったが、冷静に一生懸命この状況の打開策を考えた。だが、間に合うわけもなく不格好な男子生徒は目の前に......っと思ったら通り過ぎていき、星蘭は安堵のため息を吐こうとした。だが、後ろから「トン」と触れられ、一気に鳥肌が立ち、冷や汗が止まらないほど恐怖し、死までも覚悟した。

 それから十数分は恐怖で動くことができなかった。だが特に体に異変はなく、星蘭は生まれて初めて「生」を実感した。それから数十秒後、ようやく我に返り、慌てて後ろを振り返ったが、あたりまえのように後ろには誰もいなかった。

 星蘭はその後今日の出来事を振り返り、震えながらも家に帰った。玄関で靴を脱ぎ、「ただいま

」といった後に手を洗い、階段を駆け上がり自分の部屋へと向かう、至って平凡。いつも通りだ。そしてあぐらをかいて床に座って飼い猫の頭を撫でる........。

 (....猫?........家では猫なんて飼っていないはず......)

 すると黒猫が突然星蘭を落ち着かせるように鳴いた。その鳴き声で星蘭は我に返り、勢いよく立ち上がるとその場から一歩下がっり、不気味がりながら小声で言う。

 「....ね、猫....?............は?」

 部屋は夕日に包まれ、黒猫も夕日に照らされ怪しく光り輝いている。星蘭にはその黒猫がどこか笑っているようにしか見えなかった。

 

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