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公爵家

オスヴァルトが馬車に戻る。馬車が動きだす。ユールリアは、馬車の窓から外を見た。住人が居なくなった屋敷の明かりは消えて、静かになっている。


「ティルたちはこれから、どこに行くの?」


「公爵家だ。どちらにせよ、私も1度家に帰らなければならないからな」


「それから、旅に出るのね。最初はどの方向に行くの?」


「そうだな。まずは、世界樹の森を目指してみようと思っている」


ティルターシャとオスヴァルトの会話が聞こえてくる。ユールリアが首を傾げた。


「世界樹って、世界の中心に生えている大きな木のことでしょ? それが森になってるの?」


「ええとね……なんて言ったらいいのかな。ティルも大陸のことを全部知ってるわけじゃないんだけど、世界樹はいっぱいあるんだよ。ティルのお父さんは……木の精霊はみんな、世界樹から生まれてくるの。お父さんが生まれた樹はね、ルーミシアの川の南側に生えてたんだって。ルーミシアの川は、世界江(せかいこう)から別れた支流だったらしいの。だからね、お父さんは昔、水の精霊と遊んでたんだって」


ティルターシャは、過去を思い返すような目をして言った。オスヴァルトが目を細める。


「ユールリアといったか。お前は、何も知らないのか?」


「……仕方ないのよ。お父さんが選んだ教育係が、お母さんの手でクビにされちゃったんだから。私が教わったのは、神様の名前とその教えだけなの」


ユールリアは口を尖らせた。


「ミカメウラーシェ様でしょ? 昔々に卵から生まれた神様が、大陸となって今も生き続けてるっていう話。それくらいは知ってるわ」


ティルターシャはユールリアの言葉を聞いて、目を逸らした。


「あ、あの……ユー、それね、言いにくいんだけど……」


「真偽不明の御伽噺(おとぎばなし)だな。この世界を作った神の姿や形は、誰にもわかっていない。過去に作られた神殿も全て、壊れている。王は神の血を継いでいるとされていて、その王が人間の姿をしているのだから神も人間のような姿をしていると思われているだけだ」


オスヴァルトが断言する。ティルターシャが申し訳なさそうに、ユールリアに話しかけた。


「ごめんね。ティルには、世界の形が分からないの。お父さんは世界樹から生まれた精霊だから、世界がどんな風になってるのか知ってたと思うけど……。ティルはお母さんから生まれたから、世界との接続が切れちゃったんだ」


ユールリアは慌てた。


「ティルが謝ることじゃないよ。私がちゃんと教わってないのが、悪いんだから」


オスヴァルトはそんな2人を見て、少しだけ柔らかい表情になった。


「そうだな。……私も、少し言い過ぎた。()びとして、私が教わった世界の話をしよう。推測であることには変わりないが、御伽噺よりは正確なはずだ」

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