信頼
「葛くんは、なんで私にこだわるの?」
「それはもちろん、君のことを愛しているからだけど……」
「馬鹿なこと言わないで。全部、葛くんの計画通りなんでしょ。私を手に入れようとするのも、計画の1つ。……昔の葛くんは、私を手に入れるために他の人を利用するようなことはしなかった。あなたはもう、私が好きだった葛くんじゃない。私への愛情だって、あるかどうか分からないわ」
「……君も知っているよね。この世界は、僕たちが生きていた世界よりもずっと厳しくて恐ろしい。君と一緒に生きるためには、手段を選んでいる余裕はないんだ。君の身柄に大金をかけたのも、君がどこかで殺されないようにするためだった。君や君の友人に少しでも傷がついていれば金は払わないと言っておけば、どこかで君が捕まっても傷つけられる心配は無いと思ってね。……でも、人間の行動を完全に予測することなんてできない。もし君が何かの事故で傷を負ってしまえば、その傷を見た者は金が手に入れられないと思う可能性がある。だからトリフォとキルシュに頼んだんだ。密かに君を探して、守ってほしいと。もっとも彼らは僕の命令を曲解して、君を捕らえて僕の前に連れてこようとしていたみたいだけど」
カズラは真剣な目で話している。その横顔を見つめて、ユールリアは目を細めた。
「そんなの信じられると思う?」
「信じるも何も、それが真実だ。……君と違って、僕は捨てられた子供だった。もっとも、この力があったからね。自分1人で生きることは簡単だった。でも、そこまでするほどの目的がなかったんだ。生きる目的となるほどのものが、何も。だから僕は思い出に縋った。君と生きた日々の思い出に。君と会って、もう1度話がしたかった。最初は本当にそれだけで良かったんだ。だけど、会ってしまったら欲が出た。僕は本当に、君を愛しているんだよ」
その言葉が真実かどうかは、ユールリアには分からなかった。けれど彼の目には、隠しきれない熱があった。
「……私、葛くんの気持ちには答えられないかもしれないよ。それでもいいの?」
「いいよ。僕が君を愛しているのは変わらない。君が誰を選んでも、それが君の意思であるのなら尊重するさ」
ユールリアがため息をつく。変わってしまったと思っていた。けれど彼の想いだけは、昔と何も変わっていない。
(それが嬉しいと思っちゃったんだから、私の負けかな)
ユールリアは苦笑を浮かべた。
「……もう寝るわ。葛くんも、早めに寝てね」
「うん。おやすみ、ユールリア」
「おやすみ、葛くん」
2人はその言葉を残して、それぞれの部屋に戻っていった。




