披露宴
同時刻。披露宴に出席したユールリアとティルターシャは、周囲から好奇の視線を向けられていた。
(ティルが披露宴に出てみたいって言うから一緒に来たけど、やっぱり私たちは歓迎されてないみたいね)
ティルターシャがユールリアの手を握る。彼女は怯えた顔で周囲を見ていた。
「ねえ、私たちはもう帰ってもいい? ティルが怖がってるんだけど」
ユールリアがカズラに声をかける。穏やかな笑みを浮かべていた彼は、ユールリアの言葉を聞いて目を細めた。
「帰りたいならいつでも帰れるけど、君たちの楽しみをこんなことで奪われるのは嫌だな。ちょっと待ってて」
彼がユールリアたちから離れて、アレクシアのところに向かっていく。ユールリアたちは首を傾げてそれを見ていた。彼がアレクシアの耳元で何かを囁く。アレクシアは柔らかな微笑みを浮かべて頷いた。彼女が手を打ち合わせる。使用人が入り口の扉を開けた。客人たちが部屋から出て、隣のホールに移動する。カズラがユールリアたちのところに戻ってきて、笑いながら告げた。
「これで少しはマシになるんじゃないかな?」
「どういうこと?」
ユールリアが不審そうな顔をする。カズラは楽しそうにしながら言った。
「この披露宴のメインは、食事じゃなくてダンスなんだ。目をつけた異性をダンスに誘って、それをきっかけに婚約者を見つけたり家と家の繋がりを強固にしたりする。ユールリアとティルターシャにはボクとオスヴァルトがついていたから、声をかけられることは無かったけどね。それで王女様に頼んで、早めにダンス会を始めてもらったんだ。ダンスが始まれば、食事会の方は人が少なくなると思ってね」
「相変わらず抜け目ないのね……」
ユールリアがため息をつく。ティルターシャは安心したように息を吐いた。
「でも、カズラくんのおかげでかなり楽になったね。ありがとう」
「いやいや、僕は君たちの楽しみを奪いたくなかっただけだから気にしないで」
カズラが笑顔でティルターシャの頭を撫でる。ティルターシャは嬉しそうに撫でられていた。
(本当、隙が無いわね)
カズラはティルターシャの願いを聞いて、2人をこの披露宴に連れてきた。ダンス会のことも把握していたから、最初からこうなることは分かっていたのだろう。
(ティルと自然に仲良くなりたかったんでしょうね。……まあ、ティルが楽しそうだからここでは追求しないけど、家に帰ったらちゃんと注意しなきゃ。2度とこんなことしないでって)
笑い合うティルターシャとカズラを見ながら、ユールリアは心の中でそう思った。




