そういう男
その後も、カズラはアレクシアとノアの関係を応援し続けた。彼は王女がノアに絆されているのを確認して、王家とエアルドレッド家の縁談話を持ち込んだ。全てカズラの狙い通りだ。縁談が順調に進み、王女がカズラのことを忘れるまで、カズラは王宮で日々を過ごした。そして、ノアとアレクシアの結婚式が行われる日。王宮の広間では、盛大な披露宴が行われることになった。
「うまくいったね」
「カズラの作戦だ。成功しないわけがない」
その日、キルシュとトリフォは王宮の小部屋で、向かい合って話していた。
「でも、本当に良かったのかな。お姫様まで、この披露宴に呼んじゃって」
「カズラがエスコートしているんだ。問題はないだろう」
2人はノアと王女を襲った刺客だ。顔は見られていないが、体型や動き方でバレてしまえばそれで終わり。2人とカズラの関係が知られてしまえば、縁談も破断になりかねない。だから2人はカズラの側にいることもできず、こうして王宮の部屋に隠れているしかない。そんなことは、カズラの作戦を聞いた時から分かっていた。それに元々、彼らは表舞台に立てない人間だった。カズラと出会った時。それは彼らが初めて任務を遂行できなかった日だ。カズラは自決しようとした2人を止めて、笑みを浮かべて言い放った。
『僕には君たちの力が、どうしても必要なんだ。大丈夫。後のことはこちらで片付けるよ』
2人の雇い主だった貴族の男が全てを失って没落したと聞いたのは、それからすぐのことだった。
「ねえ、本当にあのままで良いのかな」
「カズラが良いと言っているんだ。俺はカズラを信じている。お前は違うのか?」
「そんなわけないよ。ボクだって、カズラさんのことは大好きだし、あの人の計画は絶対に上手くいくって知ってる。だけど、それでも分からないんだ。どうしてカズラさんは、すぐにお姫様と結婚しようとしないのかな」
「待っているんだろう。彼女の方から、結婚したいと申し出があるまで」
「何も無かったら?」
「それならそれで、共に暮らすだけだ。……きっとカズラは、それだけでいいと思っているのだろうな。知っているか? あの男はユールリアに気づかれないように、あの家に彼女の父が遺した物を1つずつ増やしている。そういう男なんだ。愛した女の気持ちが追いついていないのなら、追いつくまで何年でも待つ。愛した女が他の男を愛するなら、その男ごと自分の身内として取り込む。それがカズラの目的だ。だから今の状況は全て、あいつの望み通りなんだよ」
トリフォは真剣な目をしていた。キルシュは目を細めて呟く。
「そっか。それならいいや。カズラさんの計画が順調なら、ボクはそれだけで十分だ」
助けられた日に、2人で誓った。カズラが何をしようとしても、迷わずに付いていくと。それは今も変わっていない。カズラの目的を達成することが、2人の願いだった。




