表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/77

世間話

3人の話が終わった頃に、馬車の外が騒がしくなる。オスヴァルトが馬車から下りて、外の兵士たちに話しかけた。


「終わったか?」


「そうですね。後は捕まえた奴を締め上げて、子供たちの行き先を特定できればいいんですけど……」


「それは難しいだろうな。売られた子供は名前を失う。人間として生きられるかどうかも、怪しいところだ」


「ですよね。今回は2人の子供を保護できましたし、それで良しとしますか。あの子たちは、隊長の家で育てられるんですよね?」


「そのつもりだったが、子供たちが私に懐いてしまってな。旅についてきたいと言うんだ」


「あー、そりゃそうですよ。隊長が助けたんですから、最後まで面倒見なきゃ。なあ、お前らもそう思うよな?」


「当たり前だろ。1度は人買いに売られた子供だぜ。オレはあの子たちに幸せになってほしいよ」


「うんうん。隊長が引き取ったからには、そのまま育てなきゃ嘘だよな。てか、もうその子たちでいいじゃないですか。だって隊長が出ていく理由って、アレでしょ? その子たちを代わりに育てれば、公爵様も納得してくださいますって」


兵士たちが笑いあう。オスヴァルトは渋い顔をした。


「お前たちは気楽だな。あの子供たちを引き取っても、彼女たちにローゼンフェルトの血が流れていないのは確かだ。そのことは、あの子たちも分かっていた。養子として大事に育てられたとしても、実の子供には敵わないと」


「いやあ……そうかもしれませんけど、ねえ?」


「ローゼンフェルト公爵のことだから、隊長が気に入って引き取ったって聞いたら、その子を養子に迎えろって言いますよ。あのことが判明して、公爵がどれだけ落ち込んだか。隊長だって、覚えてるでしょ」


「勿論だ。だが、それ故に父上の期待の大きさも知っている。私の子供として引き取り、私が育てるとなれば、あの子たちには自由などなくなるだろう。あの子たちは賢い子だ。それが嫌だから、私と一緒に旅をすると。金髪の子供は、そう言っていた」


笑いながら話していた兵士たちが、彼の言葉を聞いて固まる。


「あー……そう、ですねえ……」


「あの子かあ。そういや、服も庶民にしては仕立てが良かったもんな。どっかの貴族の不義(ふぎ)の子なんかね」


「いやあ……俺はいいと思うけどな。だって隊長が育てるんだろ? きっと世界一の淑女になるよ。他国の王族の正妻だって、夢じゃないぜ」


「そんなこと言って、お前は隊長と別れたくないだけだろ。……オレだって本当は止めたいよ。でもオレじゃ無理だ。だって隊長に勝てねえもん」


「てか、誰もいねえだろ勝てるやつ。ティレア将軍でも勝てなかったんだから。大丈夫、隊長は遠くで生きててくれるよ」


兵士たちはそんな話をしながら遠ざかっていった。オスヴァルトは無表情で、彼らを見送った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ