作戦会議
その日の夜。王宮にて。カズラはトリフォとキルシュを小部屋に呼び出した。
「どうしたのさ急に。お姫様と幸せに暮らしてたんじゃないの?」
キルシュが笑いながら口を開く。カズラは穏やかな笑みを浮かべて頷いた。
「そのつもりだったんだけど、王女様が僕らの家に訪ねてきちゃってね。ティルターシャにも釘を刺されてしまったから、対処しておこうと思って君たちを呼んだんだ」
「対処って……王女様がカズラさんのことを好きなのは、今に始まったことじゃないよね? どうやって対処するの?」
キルシュが首を傾げる。トリフォが淡々とした口調で告げた。
「俺とお前を呼んだということは、王女の婚約話を進めるために裏工作をするということだろう。問題はその婚約相手が見つからないということだ。王女はカズラのことを気に入っているし、1人きりの娘であることもあって国王は王女の気持ちを優先している。カズラ以外で、王女が気に入りそうな男を探して連れてくる必要があるだろうな」
「それならもう見つけているよ。エアルドレッド侯爵家の次男である、ノア・エアルドレッドだ。家柄も性格も問題ないから、良い出会い方ができれば王女様も幸せになれると思うよ」
カズラが柔らかな表情で言いきる。キルシュは苦笑を浮かべた。
「王女様を呼び出して、カズラさんから離して……というか、その前にノア・エアルドレッドを呼び出すのが難しいな。夜会とかだと、ボクらが潜り込むのも大変だし……」
「そこは僕が何とかするよ。ちょうど数日後に大規模な夜会があるから、その夜会に裏から手を回して君たちの席を用意する。そこで王女様とエアルドレッド侯爵家の息子を2人きりにするところまでは僕が手伝うから、君たちには2人を接近させるために襲撃する役をやって欲しいんだ。頼めるよね?」
「もちろん!」
声も表情も明るいカズラの問いかけに、満面の笑みで返すキルシュ。そんな2人の様子を見て、楽しそうにするトリフォ。彼らはそのまま机の上に王宮の見取り図を広げて、具体的な案を詰め始めた。
「エアルドレッド家の次男と王女様を招き入れるのは、北東の小さな部屋でいいかな。途中まではカズラさんに手伝ってもらって、廊下でトリフォがカズラさんと戦ってるように見せかければ、彼らの方からこの部屋に逃げ込んできてくれると思うし」
「そうだね。キルシュがこの部屋で待機していて、逃げ込んだ2人を程よく追い詰めてくれればそれでいいよ。ノア・エアルドレッドは強い男だから、多少本気を出したとしても対応してくれるんじゃないかな。怪我はさせないようにして欲しいけど」
「分かってるよ。任せておいて」
深夜。明かりが点いていない部屋で、3人は綿密に作戦を立てた。




