そうして
日が傾いて、庭でのお茶会が終わる頃。少女たちが部屋の扉を開けた。
「私とティルは、そろそろ寝る準備をしようと思うんだけど……オズと葛くんはどうするの?」
ユールリアの問いを受けてオスヴァルトが顔を上げる。
「私も休むつもりだ。カズラは……」
「僕は少し野暮用を済ませてきますよ」
カズラは微笑みを浮かべて、ユールリアの横を通り抜けた。オスヴァルトが心配そうな顔で彼を見送る。ユールリアとティルターシャは不思議そうな様子で、互いに顔を見合わせた。
「用って何だろうね。ユーは分かる?」
「さあね。葛くんのことだから、何か考えがあるんだろうけど……」
ユールリアは部屋から出ていく瞬間のカズラに、油断のない眼差しを向けた。カズラは彼女から向けられている視線を感じ取って、気づかれないように笑みを浮かべた。
(どんな感情でも、彼女から向けられているというだけで嬉しいな)
彼は上機嫌で家から出て、そのまま庭に向かって歩いていった。庭では使用人たちがお茶会の片付けをしていた。彼らはカズラを見つけると驚いた様子で近寄ってきた。
「どうされたんです?」
「もうお客様は皆様帰られましたよ。奥様もお部屋にお戻りになられました」
「奥様にお会いするおつもりなら、明日にした方が良いかと。今日はお疲れになったと仰られていて、お客様をお見送りになってすぐにお部屋に戻られましたから」
あっという間に周囲を囲まれて、カズラは穏やかな笑みで口を開いた。
「僕は王宮に用があるから、馬車の用意をしてくれればそれだけでいいよ。お願いできるかな?」
カズラの言葉を聞いた使用人が頷いて、門の方に向かって走っていく。残った使用人たちは片付けをしながら話を続けた。
「ええ……? これから王宮に行かれるんです?」
「1年分の仕事終わらせて帰ってきたって聞きましたけど、急な用件が出てきたんですか?」
「どちらかというと私用だね。王女様があの家にいらっしゃって、ユールリアと少し揉めていたんだ。だから王宮に行って、ちゃんと話をしようと思っているんだよ」
「あー、そういや今日ずっと寂しそうでしたね」
「カズラ様のことが好きなのは見てて分かりますけど、家まで押しかけるとは相当ですね。それだけ愛されてるってのは、羨ましいことですけど……」
カズラは彼らの会話を笑顔で聞いていた。門の方に行っていた使用人が戻ってくる。
「馬車の用意ができましたよ。いってらっしゃいませ」
使用人たちがカズラに向かって頭を下げる。カズラは笑みを深めて言葉を発した。
「ありがとう。行ってくるよ」




