愛という感情
「……オズがこういうことに疎いのは分かるけど、葛くんは確信犯でしょ」
ユールリアがため息をつく。ティルターシャは困り顔で言葉を発した。
「オズは楽観的すぎるよ。お姫様にとっては初恋でしょ? 初恋って女の子にとっては特別なことなんだからね」
「そういうものか。それならユールリアにとってのカズラも、特別な存在なのだろうな」
オスヴァルトは無邪気な笑顔でそう言った。ユールリアが顔を真っ赤にして叫ぶ。
「な、何言ってるの?! 別に葛くんとはそういう関係じゃないから!」
「そうなのか? ユールリアはいつも彼のことを高く評価しているから、言葉は多少きついところがあっても本当は彼のことが好きなのだろうと思っていたんだが」
「もう黙ってて!」
ユールリアは慌てて、笑いながら話しているオスヴァルトの口を塞ぎにいった。カズラが嬉しそうに笑いながら口を開く。
「なんだ、照れているだけで両思いだったんだね。それならそうと言ってくれればいいのに」
「そんなんじゃないから! ホント勘違いしないで!!」
オスヴァルトの口に手を当てたままユールリアが大声をだす。ティルターシャが不思議そうな表情で言葉を発した。
「ユーは彼のことが好きなの?」
「だから、そういうんじゃなくて……葛くんには色々と助けてもらったことがあるから、基本的には信頼してるのよ。彼の前で言うと調子に乗るから、普段は言いたくないだけで」
ユールリアが顔を赤らめて小声で呟く。ティルターシャはそれを見て首を傾げた。
(でも、今は結構静かだよね? ユーがこんな顔してるのに何も言わないし……)
ティルターシャはそんなことを考えながら、横目でカズラの表情を確認した。そして頬を赤くして目を伏せている彼を見て、目を丸くした。
(顔、すっごく赤い。……この子はユーのこと、本気で好きなんだ)
ティルターシャはカズラとあまり関わりがない。ユールリアが普段から邪険にしていて、関わってはならない相手なのだと察して意図的に距離を取るようにしていたから。けれど年相応にしている彼の姿を見て、ほんの少し距離が近づいたような気がした。
(ユーが無理しがちなのはティルも知ってるし、カズラくんがユーのことを守ろうとしてるのは正しいと思うけど……それでも、王女様に誤解されるような態度を取るのは良くないよね)
お互い赤くなって黙り込んでいる2人を見ながら、ティルターシャは心の中でそう結論づけた。そしてカズラに近づいて、彼の耳元で囁きかけた。
「ねえ、ユーのことが好きなのは分かるけど、だったら王女様とのことにはちゃんと区切りをつけなきゃダメだよ。そうしないと許さないから」




